かんちゃん 音楽のある日常

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コンサート雑感:宮前フィルハーモニー交響楽団第52回定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和6(2024)年6月2日に聴きに行きました、宮前フィルハーモニー交響楽団の第52回定期演奏会のレビューです。

宮前フィルハーモニー交響楽団はこのブログでも何度も取り上げている、川崎市宮前区にあるアマチュアオーケストラです。

miyamae-phil.jimdofree.com

この前日、現在私が住んでいる小金井市のアマチュアオーケストラである小金井市民オーケストラの第41回ファミリーコンサートを聴きに行っていますが、宮前フィルハーモニー交響楽団小金井市民オーケストラはアマチュアオーケストラの中でも市民オーケストラとカテゴライズされる団体です。それゆえか、どの演奏会でもホールがほぼ満員になるという共通点があります(これは府中市交響楽団さんでも同じです)。市民向けの地道な演奏活動をし、その裾野を広げている活動が、広く支持されていると考えていいでしょう。単に家族だけや親戚だけにチケットを配ったとしても、ホールは満員になりません。やはり、知名度や、信頼というものが積み上がってないとホールが満員になるということは難しいと思います。

しかも、今回宮前フィルハーモニー交響楽団定期演奏会で選んだホールは、同じ川崎市内の隣の区とも言うべき、多摩区にある多摩市民館。多摩区役所庁舎にあるホールであり、小田急向ヶ丘遊園駅から歩いて数分、東急田園都市線あざみ野駅からのバスも止まる場所です。そのため、実は田園都市線沿線である宮前フィルハーモニー交響楽団からは、若干行きにくい場所です。というのも、鉄道で行くとなると、コの字のようなルート(東急田園都市線・JR南武線小田急線)を行かざるを得ず、どうしてもあざみ野駅からバスを選択することも多いからです。ただ、この系統、途中聖マリアンナ医科大学病院を経由するので、1時間はあざみ野駅からホールまでかかります。その点では、先日聴きに行った府中市交響楽団さんが府中の森芸術劇場が使えず調布市グリーンホールを選択したのとは条件が違いすぎます。府中市交響楽団さんが小金井宮地楽器ホールでやるようなものなのです。それよりも条件的には悪いでしょう。府中から小金井宮地楽器ホールまでは京王バスが直通し30分ほどで結んでいますので・・・

それでも、宮前フィルハーモニー交響楽団だとほぼ満員になるという・・・これは、33年間、地道に定期演奏会やポピュラーコンサート、練習場の幼稚園での演奏活動、かわさき市民第九の担当オケなどを積み重ねてきた結果だと思います。その意味では、今年の10月の府中市交響楽団さんの定期演奏会がひの煉瓦ホールなのは注目点です。

さて、宮前フィルハーモニー交響楽団さんの演奏会に話を戻しましょう。今回の定期演奏会の曲目は以下の通りです。

チャイコフスキー バレエ音楽白鳥の湖」抜粋
プロコフィエフ 交響曲第5番

え?たったのこれだけ?って思うじゃないですか。しかし、この2つで2時間です。前日の小金井市民オーケストラのファミリーコンサートとは大違いです。これがファミリーコンサートと定期演奏会の違いかなと思います。しかも、「白鳥の湖」は通常であれば組曲が存在しますが、そうではなく宮前フィルハーモニー交響楽団が全曲版から抜粋したもの。それだけに、むしろダイナミックさも合わさった演奏でした。特に、管楽器のパワフルさと言ったら!しかも安定しており、曲に対する気持ちがはいっていたように思います。今回は第2ヴァイオリンとヴィオラクラリネットが半分以上エキストラ。エキストラをあまり使わない宮前フィルハーモニー交響楽団にしては珍しいと思いましたが、ヴィオラはかなり数がそもそも足らないようです。我こそは!という方は是非ともご連絡を。

全曲版から抜粋していますので、組曲とは多少異なり、つながりが重要視されている印象があり、バレエ音楽とはやはりドラマなのだと印象づけられました。有名な第2幕(あるいは第1幕第2場)の旋律や、4羽の白鳥が躍る場面なども、連続性の中で演奏されるため、そこに白鳥に変えられたオデットの悲しみや憧憬を感じることが出来ますし、その境遇にオーケストラが共感しているかのよう。最後のクライマックスは今回ハッピーエンドが選択されていますが、そのハッピーエンドは生き残ったことによるものなのか、それとも死を選んだ後に結ばれることなのかは、プログラムからははっきりしません。しかしいずれにしても、オーケストラが作品に共感している姿勢が演奏に強く出ていたように思います。パグダシオンのヴァイオリンとチェロのソロは、アマチュアらしいやせた音になってしまってはいますが、しかし甘く切ない情景がしっかりと表現されていたのはさすが。若い世代が確実にバトンを受け継いでいます。

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今回、指揮者は岸本祐有乃(ゆりの)さん。宮前フィルハーモニー交響楽団としては私の知る限り初の女性指揮者ではないかと思います。近年、実力のある女性指揮者が日本でも複数出てきており、素晴らしい演奏を披露してくれています。岸本さんもその一人ではないかと思います。明快なタクトは、作品の生命をしっかりととらえ、オーケストラに指示しているように見えました。岸本さんはそもそもは科学者を目指していたそうで、その点ではチャイコフスキーと重なる部分もあるのかなと思いました。その分、タクトに余計気持ちがこもっていたのかもしれません。以下は埼玉のアマチュアオーケストラ、埼玉中央フィルハーモニーオーケストラの頁で紹介されているプロフィールです。埼玉中央フィルの常任指揮者を務めているそうです。

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さて、後半はプロコフィエフ交響曲第5番。不協和音も多用されている難しい曲だと思いますが、しかし見事に弾きこなす弦楽器群。吠える金管と、豊潤なクラリネットは後半も歌いまくります。完成時期は第2次大戦末期。戦争の暗い影もありつつも、最後は明るく希望に満ちたフィナーレですが、プロコフィエフの言葉の通り、表面的な明るさではなく、どこか内面から来る幸せを感じます。一度はアメリカへと移ったプロコフィエフですから、どこかで強制的なものは嫌だったのだろうなあと思いますし、その深いところでの共感をオーケストラが感じているのが演奏から伝わって来るようでした。アンコールで第4楽章最終部をくり返したのも、作品への深い共感からのように感じました。

ja.wikipedia.org

宮前フィルハーモニー交響楽団の演奏会は時として小金井市民オーケストラのファミリーコンサートのようなプログラムを組みますが、今回も白鳥の湖はそれに近いプログラムだったと思います。しかしそこで組曲を採用せず全曲版から抜粋を選択しドラマを描き、そのうえでプロコフィエフ交響曲第5番を持ってくることで、聴きに来た子供たちが将来自分で調べたり親子の会話の中で、いろんなことを学んでほしいという願いが込められたプログラムのように思われました。今回も白鳥の湖では前半曲が終わるごとに拍手が起こりましたが、それだけコンサートに慣れていない人もいらしていたように思われます。だからこそ、全曲版から抜粋から抜粋したり、同じロシアやソ連の作曲家ということで比較対象としてチャイコフスキープロコフィエフを並べて考えてもらったりしたのかもしれません。まいど宮前フィルハーモニー交響楽団の選曲には唸らされます。

次回は12月22日に今度は宮前市民館。その時期は第九も多く演奏される時期ですしMAXフィルさんの第九も重なりそうですが、できるだけ予定は開けておきたいなあと思っています。これも小金井市民オーケストラさん同様、神様に祈っておきます・・・

ただ、6月30日に宮前フィルハーモニー交響楽団のメンバーも参加する、ミューザ川崎市民交響楽祭は、チケットを取っておりますので、足を運ばせていただきます。宮前フィルハーモニー交響楽団としては初めてのスメタナ「わが祖国」を、他のオーケストラのメンバー達とどのように紡ぐのか、楽しみです!

 


聴いて来たコンサート
宮前フィルハーモニー交響楽団第52回定期演奏会
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲
バレエ音楽白鳥の湖」抜粋
セルゲイ・プロコフィエフ作曲
交響曲第5番変ロ長調作品100
岸本祐有乃指揮
宮前フィルハーモニー交響楽団

令和6(2024)年6月2日、神奈川川崎多摩、多摩市民館大ホール

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