かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:宮前フィルハーモニー交響楽団第48回定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和3(2021)年5月23日に聴きに行きました、宮前フィルハーモニー交響楽団の第48回定期演奏会を取り上げます。

このブログでも何度か取り上げているアマチュアオケである、宮前フィルハーモニー交響楽団。姉妹団体にいた私が自分のところの第1回定期演奏会で一緒に第九を演奏したところからの関係ですが、今ではその時に一緒だった人は役員へと引き、現場である演奏は新しい人たちばかり(クラリネットの重松さんのみ)になりました。最も、地域に根差すオーケストラであるわけですから、これでいいだと思います。ただ、一抹のさみしさはありますけれど。

そんな宮前フィルも、今年で30年。早いなあと思います。それと当時に、20数年前とは比べ物にならないくらい、アマオケとしては上手になったなあと思います。特に金管は今回エキストラなし!いやあ、これは素晴らしいと思います。弦パートにはエキストラも入っていますが。

それにしてもです、エキストラが入っていても、その音色がしっかり宮前フィルとしてある、のが素晴らしいんです。これは、オケ自体の演奏技量が上がっていないと、難しいんですよね。そうじゃないと、あれはエキストラが入っているからだよねといとも簡単にわかってしまうものなんです。それが宮前フィルには一切ないんです。これが素晴らしい!

それゆえなのか、今回はこんなアマチュアオケではあまりないプログラムが組まれたので、これは行かなければ!とはせ参じた、というわけです。

ラフマニノフ
ピアノ協奏曲第3番
ブラームスシェーンベルク編曲)
ピアノ四重奏曲第1番

ラフマニノフは以前交響曲第2番を聴いていますので、それほど心配はしていませんでしたけど、お!っと思ったのがブラームスのピアノ四重奏曲第1番。この編曲はシェーンベルクが行っていますので、そのオーケストレーションは20世紀のものであって、ブラームスが書いた19世紀ではないんですね。

ある意味、宮前フィルらしくないなあと思ったのですが、団員が徹底して議論して決める宮前フィルが選択したのだから、何か理由があるはずだと思ったのです。それは当日プログラムを開いてみてわかりました。これは指揮者である河内先生の提案だったのだな、と。しかも河内氏は団員達に、「これはシェーンベルクの作品だと思って弾いてください」と何度も指導したとあります。それはそれで納得です。リストのベートーヴェン交響曲のトランスクリプションを、完全にベートーヴェンの作品だとしないとの一緒であるわけです。

おそらく、河内先生の頭の中では、このオケはもうシェーンベルクだって弾けるはずだけど、まずはトランスクリプションから入った方がいいかな、という思惑があったのだと思います。実際、演奏を聴きますと1プロであるラフマニノフよりもずっとのびのびと弾いているんです!

では、ラフマニノフが下手だったのかと言えば、むしろ逆。アマチュアオケで、これほど素晴らしい演奏を聴けることはほとんどないのではないでしょうか。例えば、東京のオケである、セラフィックさんとか、あるいはナデージダさん、あるいはダスビと比べて、宮前フィルの完成度の高さは抜きんでています。そのうえで、これら3つのオケ同様、アマチュアの熱い思いが反映もされています。

今、原稿を書くために保有する図書館で借りてきてリッピングしてある、ルガンスキーのピアノ、オラモ指揮バーミンガム響の演奏に比べてもそん色ないどころか、情熱はその演奏以上であることに気づきます。なんと素晴らしい演奏に出会えたんだろう!と驚きを隠せません。本来は欧州を拠点とするピアニスト、福間氏のピアニズムもまさに歌であり素晴らしい!確かにテンポ感という意味ではこのルガンスキーバーミンガム響のほうがいいですが、全体としては宮前フィルのほうが上であると断言してもいいと思います。

それはロケーションも一役買っているんだと思います。今回は同じ川崎で特別な時しか使わない、ミューザ川崎。何度か宮前フィルも経験しているホールです。ホールを楽器にするということがよく言われますが、まさしくその言葉の通りの演奏であったと思います。ブラームスシェーンベルクの世界へと生まれ変わった作品を存分に味わっており、格別!

特に聴いていて、これはシェーンベルクブラームスを評価していたからではないかと思ったのですが、プログラムにその点が書いてあるんですね。なるほど、いろんな視点から今回選ばれたんだなと思います。今後、宮前フィルがどんな曲を演奏するか、本当に楽しみです。次回の第49回は、ほかのアマオケでは取り上げても宮前フィルはなかなか取り上げてこなかったブルックナーですし、そして協奏曲はなんと!チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲!こいつは聴きどころですよ、ええ。これは万難を排して聴きに行かなければ!

で、欲を言えばです、宮前フィルなら、もうショスタコーヴィチも行けると思います。ぜひともダスビに続くレパートリーにしてほしいところです。

いや、ぜひともです、CDを出してほしいです、ええ・・・・・何ならハイレゾでもいいですよ。宮前フィルに集いし人たちの中には、そんな独自配信ができるエンジニアがきっといる、と信じています。

 


聴いて来たコンサート
宮前フィルハーモニー交響楽団創立30周年記念第48回定期演奏会
セルゲイ・ラフマニノフ作曲
ピアノ協奏曲第3番ニ短調作品30
ヨハネス・ブラームス作曲(アルノルト・シェーンベルク編曲)
ピアノ四重奏曲第1番ホ短調作品25(管弦楽版)
福間洸太朗(ピアノ)
河内良智指揮
宮前フィルハーモニー交響楽団

令和3(2021)年5月23日、神奈川川崎幸、ミューザ川崎シンフォニーホール

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