かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:シェーンベルクとフォーレの「ペレアスとメリザンド」

東京の図書館から、府中市立図書館のライブラリをご紹介します。今回はシェーンベルクフォーレの「ペレアスとメリザンド」を取り上げた作品を収録したアルバムをご紹介します。

ペレアスとメリザンドと言えば、圧倒的に有名なのはむしろドビュッシーのオペラではないかと思いますが、その中でも管弦楽作品としては唯一例外が、フォーレ組曲の1曲なのではないでしょうか。それがこのアルバムでも収録されている「シシリエンヌ」です。

けれども、そもそもペレアスとメリザンドは悲劇です。その悲劇をどのように表現するのか。これは作曲者においても魅力的なことだったようです。そのため3人の作曲家がそれぞれの個性を発揮した作品を残しました。

そのうち、シェーンベルクフォーレに焦点を当てたのがこのアルバムです。シェーンベルクは無調に至る前の時代に交響詩を、そしてフォーレは自身の作風が確立した後の時代に劇付随音楽とその組曲を書いたのでした。

ja.wikipedia.org

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まあ、どうしてもドビュッシーフォーレの関係がクローズアップされてしまうわけなんですが、いやいや、シェーンベルクだって書いてるし、そもそも、ドビュッシーのオペラではなく、管弦楽でどう表現するかを追求した二人の作品を素直に聞いてみようよという指揮者などのメッセージを、まず曲目から感じるわけなんですね。

いま、日本にはウィーン・フィルが来日し、これからベルリン・フィルも来るというタイミングですが、なかなかこういったプログラムを組まないんですよねえ。本来、印象派から20世紀音楽は、まさにウィーン・フィルベルリン・フィルのような卓越したオーケストラの演奏によってこそ、生命が宿ると私は思います。最近のシンフォニア・ヴァルソヴィアの演奏などを聴いていると、本当にそう思います。

けれども我が国の聴衆は、後期ロマン派しか好まないんです。だからプログラムもそれ相応のものしか出ない。それならまあ、問題はないでしょうから次も来日はあるでしょうが・・・・・本来、この二つのオケの真価が発揮されるのは今回ご紹介するアルバムのような作品の演奏でこそ、なんです。もちろん、後期ロマン派などは手あかがついたような作品なので、彼らの表現力であれば素晴らしい演奏をするはずではあるんですが・・・・・

高額なうえに、当たり障りの曲しかやらないんだったら、私は聴きにいかないですね。それだけの経済力はないうえに、別に感動する演奏はいくらでもアマオケでも経験しているので、特段プロオケを聴きに行こうというインセンティヴにならないからです。

それよりも、今の私なら、こういったアグレッシヴな作品を取り上げるか、もしくは第九をやるんだったら行きますけれど。その点で、やはり現地の人たちはうらやましいなあって思いますし、現地にいる日本人駐在員などは本当に幸せだと思います。こういった日本のオケ、あるいは来日する海外オケでは絶対にプログラムに乗せない作品が聴けるんですから。

これ、オケはチェコ・フィルです。チェコ・フィルもいろいろ批判を浴びるオケですが、弦と管のバランスはとてもいいオケだと私は思っています。そんなオケがです、とても豊潤なサウンドで二つの作品を表現しているのは本当に素晴らしい!

シェーンベルクのは無調以前とは言え、ところどころに無調が紛れ込み、それが二人の心理を表現しているのですが、その無調の部分でのアンサンブルはさすがなので、しっかり生命が宿り、その二人の心理が迫ってくるんです。一方のフォーレシェーンベルクよりはその心理という点では低いかなって思いますが、それは多分、そもそもが劇付随音楽であるということで、セリフを大切にしたからではないかと私は想像します。音楽だけではやはりシェーンベルクは圧倒的です。ですが、その素朴さというか、淡々とした私たちが「劣る」と判断してしまうような音楽に実は意味があるとすれば、一体評価はどうなるでしょうか?

あまりにも、日本は音楽は音楽、舞台は舞台みたいに分けてしまうことが多いくせに、オペラは礼賛してしまうという主体性がない評論が多いのがとても気になるところです。それならなぜ、フォーレの音楽は一見すると透徹したような透明感ある音楽なのかを評論する人は少ないんです。これ、私はほぼセリフ重視だと確信しています。そうでなければフォーレでももっと生命力ある音楽を書くはずなのです。それは歌曲を聴けば一発でわかります。日本はなぜか歌も低く見ますしねえ。たとえドビュッシーであっても歌曲は低く見ますしね。音楽にヒエラルヒーはないんですが・・・・・しいて言えば、アカペラかそうじゃないか、です。そもそもクラシック音楽キリスト教音楽から出発しているので。

そんな私とおなじ意思を持つのかどうかまではわかりませんが、演奏にとても共感する部分が多いのも事実です。振るはボド。このコンビも本当に卓越した演奏を数多く残しているなあと思います。ボドの解釈力がいいのかもしれませんね。楽譜からその「行間」を掬い取るのは得意な気がします。この演奏でもそんな「行間」がたっぷりと表現されているように感じるんですね。二人の想いだとか、その悲劇性だとか・・・・・ただただ淡々と音楽を鳴らしているだけなのに、なぜかじんわりとこころに染みてくる・・・・・このコンビならではの演奏です。

 


聴いている音源
アーノルト・シェーンベルク作曲
交響詩ペレアスとメリザンド」作品5
ガブリエル・フォーレ作曲
組曲ペレアスとメリザンド」作品80
セルジュ・ボド指揮
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。