今月のお買いもの、令和元年11月に購入したものをご紹介します。今回はナクソスのリストピアノ曲全集の第46集を取り上げます。
これまた、第44集から飛んでるんですよねえ。いやあ、ハイレゾで出してよって思います。CDを望む人がまだまだ多いのか、それとも日本だけの現象なのか・・・・・
とにかく、第45集はCDだけになっているようで、とても残念ですね。現場ではハイレゾで収録しているはずなので。
さて、その第46集ですが、リストが愛した作曲家、ベルリオーズの管弦楽作品のトランスクリプションとなっています。主に幻想交響曲が主体に収録されています。
幻想なら、トランスクリプションは結構簡単なんじゃないの?と言われる読者の方もいらっしゃるかと思いますが、おそらくリストにとってはそうだったろうとおもいます。実際に、幻想交響曲に関しては、ベルリオーズの原曲よりも、リストのトランスクリプションの方が先に出版されるほど見事で、人気もあったそうですから。
このトランスクリプションで最も特徴的なものは、なんと言ってもベルリオーズで最も有名な作品だともいえる、幻想交響曲の「断頭台への行進」です。管弦楽ではトレモロなどに鳴っている部分を、まるでオペラの序曲のように後出の旋律を使い、トレモロ感を出しているのが魅力的です。こういった部分にリストのその後の作曲家としての非凡さを見出すことができます。
リストはこのようなトランスクリプションを繰り返すことにより、オーケストレーションを磨いていったのでしょうし、その一つの到達点として、交響詩の創出ということへとつながっていったのは間違いないでしょう。
演奏するフェン・ビアンも実に堅実かつカンタービレしており、壮大な世界がピアノ1台で現出されているのも素晴らしい!この二つの要因が一つにアウフヘーベンされるのも本当に難しいと思いますが、それを見事に一つに統合しているのはもう才能でしょうね。ピアノ曲として成立しているんだけれども、どこかオケ的な部分も聴こえる・・・・・それはリストのトランスクリプションのせいかもしれませんが、一方でその行間を最大限引き出しているフェンの才能もあると思います。
というのは、聴いていると一生懸命弾いているというよりは、自然体でついこんな演奏になってしまったという印象しか受けないからです。もう見事としか言いようがないですし、実に壮麗壮大な世界が、一人の人間の表現として結実しており、もうため息しか出ません。いいわあ。
中国人となると偏見で見る私たち日本人ですが、では、日本人でここまでダイナミックな演奏ができる人いますかねと言うと、それほどいないかもねって話だと思います。もちろん皆無ではないですが、リストのトランスクリプションを積極的に取り上げ、自らの表現を自在にできる人となると、限られてくるような気がしてならないのですが・・・・・でも不思議なことに、中国は世界に出る人はみな素晴らしい表現をする人たちばかりなのです。かの国は社会主義なのに・・・・・これをどう考えるかは、今後日本という国家百年の計に直結するのではないかと思います。
聴いているハイレゾ
フランツ・リスト作曲
ベルリオーズ - 「ファウストの劫罰」の妖精の踊り S475/R142
ベルリオーズ - 「ベンヴェヌート・チェッリーニ」 祝福と誓約 S396/R1412
ベルリオーズ - 序曲「リア王」 S474/R140
ベルリオーズ - 幻想交響曲-イデ・フィクス 「アンダンテ・アモローソ」 S395/R135
ベルリオーズ - 幻想交響曲-第4楽章 断頭台への行進 S470a/R136 (最終稿)
ベルリオーズ - イタリアのハロルド-第2楽章 夕べの祈りを歌う巡礼の行進 S473/2/R139 (第2稿)
ベルリオーズ - 序曲「宗教裁判官」 S471/R137
フェン・ビアン(ピアノ)
(Naxos 8.573710)
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