かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:アバドが振ったシェーンベルクとウェーベルンの芸術

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はシェーンベルクウェーベルンの作品を収録したアルバムをご紹介します。

一部すでに借りているものもこれはあるのですが、それでも借りたのは、「ワルシャワの生き残り」が収録されていること、そして指揮がアバドであること、でした。

ワルシャワの生き残り」はシェーンベルクの作品としてはあまりも有名で、教科書にも載っている作品なのですが、しかし音楽鑑賞で聴くことはまれだと思います。ですので、一度聴いてみたくて、借りたのでした。

実は「ワルシャワの生き残り」は合唱曲です。ゆえに歌詞もついています。

www7b.biglobe.ne.jp

曲の説明は、ウィキよりもこのブログのエントリのほうが適切だと思います。

bokunoongaku.com

なぜ「ワルシャワ」での生き残りなのか、その背景には何があるのかが、このエントリのほうが適切だから、です。なぜシェーンベルクはこの歴史的事件を芸術として残そうとしたのか、もです。

歌詞のサイトのほうでは、アウシュビッツとありますが、実際にはそれに相当する事件がすでにワルシャワで起こっており、むしろその生き残りという視点なのですね。それを援用して、絶滅収容所も、というテクストなのです。

ja.wikipedia.org

私たちはどうしても、絶滅収容所しか知らずに、この作品がなぜワルシャワなのかと首をかしげてしまう人も多いかと思います。まさにその状況こそ、funapee氏がエントリで言及する「残さねばならぬ音楽」であるゆえんだと思います。アウシュビッツもひどいことですが、同じような状況がワルシャワで起こっていた、ということなのです。

そしてそれがまた、歌詞サイトで触れられている「今も世界中で発生している」ということなのです。他国が他国を支配するとはどういうことなのか・・・・・人間が人間を人間扱いしないようになるということとは?など、考えさせられることは多々あります。この作品が持つ狂気は、私たちが避けねばならぬ狂気であり、直視するためにあえて作品がくるっている、と言えるでしょう。ゆえに、私自身も残さねばならぬ作品だと感じます。

しかも、管弦楽だけではなく合唱がついている、ということもまた意味があるのだと思います。その狂気を即座に想起できる・・・・・これほどのメッセージ性を持った芸術はないでしょう。

シェーンベルクのもう一つの収録作品であるバッハのリチェルカーレの編曲。シェーンベルクの12音階というのが、実に表現技法のひとつであることを明確にしています。ウェーベルンの作品は、同じく戦争の犠牲者として採用されているように思いますが、特に「オーケストラのためのパッサカリア」は以前私もこのブログで取り上げていますが、この演奏のほうが鬼気迫る感じで素晴らしい!オケがウィーン・フィルということもありますが、本当に素晴らしい!

アバドベルリン・フィル音楽監督時代にも、ヘルダーリンの芸術をとりあげたりと、日の当たらない芸術に目を向ける姿勢が顕著でしたが、このウィーン・フィルとのものも素晴らしい水準だと思います。ウィーン・フィルとは事務方と確執があって疎遠でしたが、さすが共に組めば素晴らしい芸術になります。ウェーベルンでの生命力、内面性、そしてシェーンベルクでの精神性。どれをとっても一級水準。だからこそ「ワルシャワの生き残り」や「オーケストラのためのパッサカリア」では鬼気迫る演奏になっているように思います。

ユダヤ人を冷静に見たときに、長所短所が見えてはきますが、それはどの民族でもあることではないでしょうか。しかしながら、私たち日本人は、それを忘れて、やれ嫌韓だ、やれ中国の脅威だとか言って、韓国人や中国人を叩いてはいないでしょうか。実際、731部隊は中国で何をしていたでしょうか。私たち日本人も、「ワルシャワの生き残り」のドイツ軍曹に、多くの人がなってはいまいかと、自省する必要があるように思うのはわたしだけなのでしょうか?

いいえ、多民族に対してだけではありません。おなじ大和民族でありながら、新型コロナウイルスに罹患し、苦しんでいる人を、怠った悪人として罰してはいないでしょうか?だからこそ、「ワルシャワの生き残り」は後世に残すべき芸術だと、私も思うのです。

 


聴いている音源
アーノルト・シェーンベルク作曲
ワルシャワの生き残り」作品46
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
アントン・ウェーベルン
音楽の捧げもの」から 6声のフーガ(リチェルカーレ)
アントン・ウェーベルン作曲
オーケストラのためのパッサカリア作品1
オーケストラのための6つの小品 作品6(1909年オリジナル版)
オーケストラのための5つの小品 作品10
オーケストラのための変奏曲 作品30
ゴットフリート・ホーニク(語り手)
ウィーン国立歌劇場男声合唱
クラウディオ・アバド指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。