かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:サリエリ 作品集

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はサリエリの作品集を収録したアルバムをご紹介します。

サリエリと言えば、映画「アマデウス」で注目された作曲家ですが、音楽史で言えば、その「アマデウス」たるモーツァルトの才能を誰よりも評価し、ベートーヴェンを育てた教師としての才能が高く評価されている人です。

が、その作品も決して駄作などではなく、むしろ才能豊かな人だったことを証明しているのがこのアルバムだと思います。しかも、兄フランチェスコの作品も収録されている点も注目です。

というのは、サリエリは実は音楽一家の生まれなんですね。

ja.wikipedia.org

しかも、兄フランチェスコの影響も受けています。ある意味で、とても恵まれた家の出なんですね。そのサリエリが、条件的には悪くないかが、恵まれているとも言い難い、特にベートーヴェンを評価して育てたその視点は本当に素晴らしいと思います。

二つの協奏曲は本当にのびやかで、特にフォルテピアノのための協奏曲は、意外と工夫も見えて、ベートーヴェンはこういった「先生」がやっていることをさらに自分で磨き上げたのだな、と納得もする曲でもあります。

兄のシンフォニアは若干古風ですが、それでも古典派の作品にふさわしいのびやかさを持っており、これも聴いていて飽きない曲。それゆえにむしろ「刺激」がなかったんでしょう、ロマン派から20世紀半ばあたりまでは忘れ去られることとなります。その復興運動のきっかけになったのが、サリエリを悪者と仕立て上げた「アマデウス」だった、というのは皮肉です。

悪者としても、実は視点はサリエリなんですね、あの映画。となると、サリエリを悪者に仕立てたのは「あえて」という可能性も否定できません。実はサリエリの作品も素晴らしいものだけれども、モーツァルトには時代を先取りする先進性があり、それが現代の民主主義へとつながっている・・・・・その歴史的過程において、サリエリの評価を下げたのではないのか?という問いかけが実は隠されたテーマだったのではと、今となっては思います。

当時、ヨーロッパの音楽界が評価していたのはサリエリで、決してモーツァルトではありません。特に支配層ではその傾向が顕著でした。ですから、サリエリが人気に不満をもってモーツァルトを毒殺するなんて理由は見当たらないんです。むしろその逆のほうが自然だと思いませんか?なのに、なぜかあの映画ではサリエリモーツァルトを毒殺したかのように扱っています。そんなことありえないのに。それは、なぜ今モーツァルトのほうが評価されサリエリのほうが評価されないのかに直結しているように思います。

ソリストにスコダだど名だたる名前があり、指揮はシモーネなので、リズム感がとてもよく、のびやかで楽し気。それこそサリエリの作品の芸術だと思いますが、ベートーヴェン以降、音楽は重々しくないとという傾向がないでしょうか?そんなことはないはずです。音楽は人の魂を動かし、癒すもの。そのためには重々しいものも軽めのものも両方なければいけないはずです。しかし、ベートーヴェンを「楽聖」として神と祀り上げることから、音楽の楽しみ方が変容してしまったように私には思えるのです。

もちろん、ベートーヴェンの苦しみからいずるその音楽は素晴らしく崇高で、私の魂を癒してくれます。一方でモーツァルト、あるいはそれ以前のハイドンやこのサリエリと言った作曲家たちの作品も、仕事に追われ疲れて帰ってきた私にとって、清涼剤になり得る作品達ばかりです。ベートーヴェンばかりでは疲れます。確かに彼の音楽は心の、そして魂の友ですが。

そんな意識が、たとえばソリストであればスコダ、指揮者であればシモーネにあったとすれば、徹底的に喜びに満ち溢れている演奏は納得なのです。この演奏は軽めの仮面をかぶった、実はロケンローなのではないのか、という気がします。

 


聴いている音源
アントニオ・サリエリ作曲
ピアノフォルテ協奏曲変ロ長調
フルートとオーボエのための協奏曲ハ長調
フランチェスコサリエリ作曲
シンフォニア変ロ長調「海の嵐」
パウル・バドゥーラ=スコダ(ピアノフォルテ
クレメンティーネ・ホーゲンドルン(フルート)
ピエトロ・ボルゴノヴォ(オーボエ
クラウディオ・シモーネ指揮
イ・ソリスティ・ヴェネティ

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。