今月のお買いもの、平成28年5月に購入した、ヴィオッティのヴァイオリン協奏曲全集をシリーズで取り上げていますが、今回はその第7集を取り上げます。
第7集には第17番、第15番、第9番の3曲が収録されていますが、順をおって演奏時間が短いのです。これはヴィオッティも当時の音楽の変遷に対応していた証左だと言えるでしょう。
演奏は第3集から第6集までと同じく、メッツェーナのヴァイオリンと指揮、シンフォニア・ペルシナの演奏ですが、端正であるのはこの第7集でも同じなので、特にテンポが速いとは言いにくく、それだけヴィオッティが時代にそって作風を変えていることが明確です。
旋律的にはどうしても古さがありますが、かといって全く古くさいわけではないんです。むしろモーツァルトを生真面目にしたような音楽ですから、ベートーヴェンも一目置いたのでしょう。
むしろ、私としてはモーツァルトと同等かそれ以上の作品が、ヴィオッティにはあると考えています。この第17番がその一つだと言えます。古典的な独奏の出方といい立派なうえ、ヴァイオリンは次のロマン派を想わせるようなヴィルトォーソぶり。オケが静かな分、古く聴こえるだけだと思います。素晴らしい作品です。
一方、バロックを思わせるのが第9番です。実は第9番は一度このブログでも採り上げているんです。協奏交響曲として。
今月のお買いもの:ヴィオッティ ヴァイオリン協奏曲・協奏交響曲集
http://yaplog.jp/yk6974/archive/737
ヴィオッティは協奏交響曲を2曲書いていますが、上記エントリで照会しているのは俗に第2番と言われるもので、それがヴァイオリン協奏曲第9番を編曲したものです。同じ旋律が何度もそうされるのですが、それを聴きますと、恐らくヴィオッティは初めから協奏交響曲への編曲を考えていたのではないかと思います。その意味では誠にバロック的である訳で、やはり古い様式に立脚していると言えます。
この全集ではなくナクソスの解説からしますと、第9番の作曲は1786年。そりゃあ古い様式だよねえと思います。ハイドン円熟期で、モーツァルトが一番脂がのっている時期。ベートーヴェンはまだデビュー前。そんな時代の作品なのですから。
この第9番を聴いて思うのは、モーツァルトとの差、です。モーツァルトもヴァイオリンでも可能であるように作曲はしているでしょうが、ヴァイオリンとヴィオラの音程を考えた時、モーツァルトは明らかに二つの楽器のヴィルトォーソのために書いているのに対して、ヴィオッティは二つでも一つでも可能であるように書いているのです。それだけ、やはりモーツァルトは先進的であったのです。
ですが、そのヒントを与え続けた一人は明らかにヴィオッティです。ここにヴィオッティを聴く意義がもう一つあるのです。それは、モーツァルトは初期の作品から晩年の作品までの差が激しい作曲家です。それだけ、時代が変化し、モーツァルトはそれに対応し、常に新しい音楽を創造しつづけた、という事です。これはよく見落とされます。なぜなら、新しい創造はベートーヴェンがやっているのであって、モーツァルトではないと思い違いが多いからです。
しかし、このヴィオッティを聴きますとそんなことはなく、モーツァルトもかなり新しいことをしており、だからこそ生前はピアニストとしては人気でしたが、評価は低かったわけなのです。当然ですが、ヴィオッティのように保守的な音楽が一番守られた時代ですから。しかしそのヴィオッティも新しいことをやっている事実をこうやって聴くことで突きつけられますと、「新しいものの創造」の先達が居て初めて、ベートーヴェンが登場するのだということに気が付かざるを得ません。
メッツェーナもオケも、声高に主張はしませんが、お互いが会話し、演奏を成立させることによって、作品の真の姿を浮かび上がらせようとしています。端正さの中に情熱が潜んでおり、それは特に第17番で顕著です。まるで歌うようなその旋律も古風ながらもすでに前期ロマン派を想わせる点があります。時代に翻弄されながらも、自分の音楽を書きつづけ、その上で新しさも取り入れていったヴィオッティの、ハイドンに比肩する能力の高さを、みごとに演奏でもって示したと言えるでしょう。
聴いているCD
ジョヴァンニ・バッティスタ・ヴィオッティ作曲
ヴァイオリン協奏曲第17番ニ短調W17/G86
ヴァイオリン協奏曲第15番変ロ長調W15/G84
ヴァイオリン協奏曲第9番イ長調W9/G51
フランコ・メッツェーナ(ヴァイオリン、指揮)
シンフォニア・ペルシナ
(Dynamic CDS498/7)
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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