今月のお買いもの、平成28年5月に、ディスクユニオン新宿クラシック館にて購入しました、ヴィオッティのヴァイオリン協奏曲全集を取り上げていますが、ようやく最後の第10集へとたどり着きました。
第10集には第29番と第21番が収録されており、20番台ですが対照的な作品が並んでいます。第29番はロマン派的な香りもするのですが、第21番はロココ的でもあります。
ただ、第21番はそれでも革新的な作品です。なぜなら、第3楽章がゆったりとした楽章になっているからです。かといって急楽章ではないのかと言えばそうではなく、アレグレットの指示があります。じつは第29番も第3楽章はアレグレットなのですが、第21番のほうがゆったりと聴こえます。
このあたりは、ヴィルトォーソ、ヴィオッティらしさと言えば端的になりますが、味わい深いところです。楽譜を見てみないと分かりませんが、長音が多いのだと思います。だから、テンポ的は速くても、聴き手には遅く聴こえるのだと思います。
同じ効果があるのが、実は第九の第4楽章、練習番号Mの部分、合唱がトゥッティになるところです。オケは動き回っていますからテンポとしては決して遅くないのですが、合唱部分を聴いているとそれほど速く聴こえないことに気づくのではないでしょうか。
ベートーヴェンがこのような手法をヴィオッティから学んでいたとすれば、第九という作品はやはり、古典派の集大成と言えましょう。その上で、次の時代を拓くものだった・・・・・私はそう考えます。ヴィオッティの作品を聴くという事は、それだけ古典派という時代がどういう時代だったのかを知るために必要なことだと思います。
第29番も第21番もともにヴァイオリンは艶があるものとして書かれています。当然演奏もそのようになるわけですが、この演奏のメッツェーナは実にその点はしっかりと演奏しており、特にヴァイオリンの艶が目立つものとなっています。それは絶品です。
オケはそれまでとは異なり、この第10集だけオーケストラ・ダ・カメラ・ミラノ・クラシカになっています。ただ、名前から判るように、室内オケであることは間違いなく、指揮も独奏のメッツェーナ自身となっています。それでも、アンサンブルは素晴らしく魅力的で、ヴァイオリンの艶がますます引き立つものとなっています。モーツァルトまでの時代にポピュラーだった、協奏曲において指揮者がおらず、独奏者がその役割を果たすという様式による演奏になっていますが、その掛合は本当に素晴らしいものです。
この様式は明らかに室内楽の延長線上であり、古典派の時代のオーケストラが決して大編成ではなかったことの証明なのですが(だから、フォルテピアノの非力な音でも協奏曲として成立するわけで、そのため私はガーディナーを批判の対象に入れているのです)、この演奏はモダンなので、当然作曲当時よりは編成が大きいと思います。そしてそれは私たちの耳としては慣れているので問題ないと言えます。ただ、現代なのでもしかすると思い切ってさらにコンパクトな編成にしてしまっても問題ないかも知れません。後は独奏とのバランス次第です。
ヴィオッティのヴァイオリン協奏曲は全て、ベートーヴェンが交響曲を作曲する前の作品です。その時期の演奏スタイルや、様式を知るには、ヴィオッティは最適の作曲家なのかもしれません。イタリア音楽の伝統を、海外においてつないだ作曲家がいた・・・・・その様式を知ることができただけでも私は幸せですし、メッツェーナとオケに感謝の念でいっぱいです。
聴いているCD
ジョヴァンニ・バッティスタ・ヴィオッティ作曲
ヴァイオリン協奏曲第29番ホ短調W29/G144
ヴァイオリン協奏曲第21番ホ長調W21/G96
フランコ・メッツェーナ(ヴァイオリン、指揮)
オーケストラ・ダ・カメラ・ミラノ・クラシカ
(Dynamic CDS498-10)
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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