かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:リスト ピアノ作品全集14

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、リストのピアノ作品全集をとりあげていますが、今回は第14集を取り上げます。

元音源はナクソスのこのシリーズ、実に興味深い点ばかりで素晴らしいのですが、この第14集ではふたたび他者の作品の編曲を取り上げています。それは、フェルディナント・ダーヴィッドの「ブンテ・ライエ」Op.30。

ダーヴィッドはあまり知られていない作曲家なので、いきなり出てきますとなんでそんな作曲家の作品をリストは編曲したのかと訝しがられるところでしょうが、当時はメンデルスゾーンがヴァイオリン協奏曲を柵渠いくするときに助言を与えるなど、優れた作曲家だったのです。

フェルディナンド・ダヴィッド
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%80%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%89

そんなダーヴィッドが作曲した「ブンテ・ライエ」はもともとヴァイオリンとピアノのための作品で、「全ての調によるヴァイオリンとピアノのための24の性格的小品集」という副題がついています。それはつまり、バッハの平均律クラヴィーアなどを念頭に置いた作品とも言える作品です。

それをリストは、まさしくピアノだけに編曲したのでした。カテゴライズとしてはトランスクリプションになっていますが、さて、信用できるかどうか。このサイトでは忠実に編曲という記述があります。

フランツ・リストに花束を
レスリー・ハワード: リスト ピアノ作品全集 Disc.56
http://franzliszt.blog.jp/tag/%E3%83%96%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%A8

ウィキの「色とりどりの音たち」という和訳は正しいと言えるでしょう。そもそも、ダーヴィッドは全ての調を使ってということは、様々な音(ここでは音色ととらえるべきでしょう)になるからで、それを意図したと言えるからです。

それはまさしく、バッハやショパンがやってきたことと一緒であるわけです。不思議なことに、リストにはそういった作品がないのです。その代りにリストは、こういった作品の編曲を手がけたのではないかと私は推測しています。

時代的に前期ロマン派であるゆえか、まるでリストが作曲したのかと見まごう部分もありますが、これは他者の作品を編曲したもの。それはもしかすると、リストのリスペクトが込められているのかもしれません。

演奏するはヴァレリー・トリオン。作品が持つ様々な顔が万華鏡のようにキラキラと輝いているように演奏しているのは気持ちがいいものです。それでいて知的な姿勢。情熱がありつつ冷静さを決して忘れない、「情熱と冷静の間」が見事です。はっちゃけているようでしかし一定のコントロールもきいています。

それは実に難しい作業のはずですが、これまた涼しい感じで弾いているのですね。いやあ、もうお見事としか言いようがありません。勿論それはプロとしては必要なことではありますが、譜読みをしたうえで淡々とだけではなく情熱的な部分もあるのが素晴らしいです。まさしくその二つが「色とりどりの音」となり混然一体と化しているさまは、音楽を聴いていて幸せと感じる瞬間です。




聴いている音源
フランツ・リスト作曲
フェルディナント・ダーヴィッドの「ブンテ・ライエ」Op.30の編曲(S484/R149)
(全ての調によるヴァイオリンとピアノのための24の性格的小品集)
1.スケルツォ ハ長調
2.思い出 ハ短調
3.マズルカ 変ニ長調
4.舞曲 嬰ハ短調
5.子供の歌 ニ長調
6.カプリッチョ ニ短調
7.ボレロ 変ホ長調
8.悲歌 変ホ短調
9.行進曲 ホ長調
10.トッカータ ホ短調
11.ゴンドラの歌 ヘ長調
12.嵐 ヘ短調
13.ロマンス 嬰ヘ長調
14.アレグロ・アジタート 嬰ヘ短調
15.メヌエット ト長調
16.練習曲 ト短調
17.間奏曲 変イ長調
18.セレナーデ 嬰ト短調
19.ハンガリー風に イ長調
20.ハンガリー風に(第2ヴァージョン)
21.タランテラ イ短調
22.即興曲 変ロ長調
23.ロシア風メロディー 変ロ短調
24.リート ロ長調
25.カプリッチョ ロ短調
ヴァレリー・トリオン(ピアノ)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。