かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:リスト ピアノ作品全集12

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、リストのピアノ作品全集をシリーズでお届けしていますが、今回は第12集を取り上げます。

この第12集では、いよいよ有名作品が登場します。「ハンガリー狂詩曲」です。19曲あるこの作品は、演奏時間も長いため、この全集(ナクソス)では二つに分かれて収録されています。第12集では第1曲から第9曲までが取り上げられます。

リスト : ハンガリー狂詩曲
Liszt, Franz : Ungarische Rhapsodie S.244
http://www.piano.or.jp/enc/pieces/2208/

ハンガリー狂詩曲
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%AA%E3%83%BC%E7%8B%82%E8%A9%A9%E6%9B%B2

第9曲までということは、リストの全盛期に書かれた作品です。しかし、ナクソスが二つに分けたとはいえ、残りは第13集に収められているのですが、そのように連番にしたのにはわけがあります。それは第13集で詳しく述べますが、私はこの二つの解説を踏まえたうえで、違った視点を持っています。それは、ハンガリー狂詩曲とは、リストがハンガリーへの愛国心を持っているがゆえに、全盛期から晩年までの作風の変化がダイレクトに反映されている、まさしくリストを代表する作品であるという事です。

リストはこの作品には連続性を持たせています。この第12集の最終曲である、第9曲には第15曲の「ラコッツィ行進曲」に似た旋律もあります。リストが印象に残った旋律をかなり使いまわしてもいるという事は、その旋律を気に入っていたという事でもあります。

そして、作風の変化は、リストが自分自身の愛国心を隠すことなく表現しているという事でもあります。それは自然と、リストの作風の変化を表すと言う点で、誠にリストらしい作品になっており、リストが自身の作品を如何俯瞰していたのかを、明確に示す点であると思います。

さて、リストがハンガリー民謡だと思っていた旋律は実はロマ(ジプシー)のものだと言われ、半ばネガティヴに捉えられる傾向にありますが、実際には現代ハンガリーに置いては、そのロマの旋律は祖国の旋律の内の一つと位置づけられており、ジプシー楽団も活躍しています。ロマは決してハンガリー民族ではないのですが、ハンガリーという地域の音楽を代表する一つでもあるため、特に戦後は再評価が進んでいるのです。その切っ掛けを作ったのは明らかにリストだと言えるでしょう。リストの愛国心が、民族的にはハンガリー人とは言えないロマの人たちの音楽を、ハンガリーの音楽として人々に気づかせる役割は果たしたのです。

実際、それに影響されてブラームスも作曲しているくらい、ヨーロッパにおいてロマの音楽を広めたリストの功績は誠に大きいと言えます。確かにリストは勘違いをしていましたが、それは学術的な点です。広くハンガリーの音楽としてとらえれば、確かにロマの旋律は魅力的です。

むしろ、私はリストは敢えてロマの旋律に眼をつけたのではないかという考えを持っています。なぜなら、リストは何回もペスト(ブダペストは二つの町が一つになってできた地名で、元々はブダとペストという二つの町でした。第9曲の「ペストの謝肉祭」のペストとは、ブダペストのペストです)を訪れており、ジプシー以外の音楽を聴いていないはずはないのです。なのにジプシーを取り上げたのは、その音楽が印象的であったことと同時に、迫害されていることを知ったからではないかと推測するのです。

リスト自身は11歳でハンガリーを離れ、言葉もしゃべれない立場でした。それでもハンガリー人として愛国心を持っていたわけで、それはジプシーの立場と重なるわけです。もしかすると、リストはわかったうえで、古いハンガリーの民謡と言った可能性もあります。それは嘘である訳ですが、あえてそう言うことで世間の注目を集めたかったのかもしれません。ハンガリー人として同じハンガリーに住むロマ達を、黙って見ていることができなかったのかもしれない・・・・・

それは、この第12集ではすべての作品が作曲された時期にふさわしく、指が動き回る超絶技巧がはっきり判る音型が多いことから見えてきます。これこれ、聴いたことある!これがリストだよね〜と誰もが分かる音楽ばかりです。それはリストがロマの旋律に全身全霊を傾けていた証左です。

演奏するイェネ・ヤンドーの態度は、この私の推測と同じなのではないかと思います。一音一音が大切にされているうえで、ダイナミックなスタイル。そこにリストがいるかのようです。誠に素晴らしい!リストの想いというものがヤンドーに乗り移ったかのようです。いや、それだけヤンドーがリストをリスペクトし、理解しようとしている証左だと思いますし、私は理解しているように思います。

リストという人の愛国心と、優しさ。その眼差し・・・・・それらへの共感が、演奏にたくさん詰まっています。情熱と冷静の間が今にも崩れそうで崩れない、心情のこもった素晴らしい演奏です。




聴いている音源
フランツ・リスト作曲
ハンガリー狂詩曲Vol.1
�@第1番嬰ハ短調(ただし、元CDではホ長調
�A第2番嬰ハ短調
�B第3番変ロ長調
�C第4番変ホ長調
�D第5番ホ短調「悲劇的な英雄の詩」
�E第6番変ニ長調
�F第7番ニ短調
�G第8番嬰ヘ短調
�H第9番変ホ長調「ペストの謝肉祭」
イェネ・ヤンドー(ピアノ)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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