かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:ヴィオッティ ヴァイオリン協奏曲全集8

今月のお買いもの、平成28年5月にディスクユニオン新宿クラシック館にて購入しました、ヴィオッティのヴァイオリン協奏曲全集をシリーズで取り上げています。今回はその第8集を取り上げます。

収録されているのは第25番、第26番、そして第10番で、比較的後半生の作風が反映されている作品が多く、特に第25番はとても興味深い作品です。というのは、第3楽章がトルコ風だからです。

ヴァイオリン協奏曲でトルコ風と言えば、モーツァルトの第5番が有名ですが、実は主調が全く一緒なのです。

ヴァイオリン協奏曲第5番 (モーツァルト)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC5%E7%95%AA_(%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%84%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%88)

トルコ趣味だけを見れば、ああ、モーツァルトと一緒で当時の流行に乗ったんだね、だけですが、主調まで一緒となると、これはモーツァルトを多分に意識しているとみるほうがいいでしょう。そしてこの作品は当時、いかにモーツァルトの作品が盛んに演奏されていたかを証明する作品だと言えるでしょう。実際、第3楽章ではトライアングルも使われており、これもモーツァルトと一緒です。

何故なら、この第25番は作曲年はわからないにせよ、ヴィオッティが1781年から1808年の間にヴァイオリン協奏曲を作曲しているという事実からすれば、当然モーツァルトの第5番よりも後である訳です。ヴィオッティにモーツァルトのような作品をという要請が来た、と考えるのが自然でしょう。それにヴィオッティは見事に応えています。

では、あなたはモーツァルトヴィオッティとではどちらが好きですか?と聞かれればモーツァルトです。ヴィオッティがいやだと言うのではなく、モーツァルトのほうが優れているのです。つまり、モーツァルト中欧はイタリアを抜いたとも言えるのですね。その自信が明確にあったのでしょう、だからモーツァルトは「魔笛」を書いた、と言えるでしょう。歌詞がそれまでのイタリア語ではなく、民族の言葉であるドイツ語を採用したのですから。

それをモーツァルト愛国心の現われとまで言えるかはわかりませんが、ドイツ民族という意識が芽生えていた一つの証拠ではあります。その後ベートーヴェンの時代になってはっきりとそれは愛国心へと変わっていきますが、モーツァルトは多分にコスモポリタンの部分があるので、そこまで言えるかは微妙です。

ヴィオッティのヴァイオリン協奏曲を聴くという事は、当時の作曲家たちのレヴェルを推し量る一つの物差しになります。では、ヴィオッティはモーツァルトよりも下だから聴かなくてもいい、という意見には私は同意しかねます。なぜなら、ヴィオッティがいたからこそ、それはパガニーニに繋がっていくからで、それは19世紀のヴィルトォーソを輩出するために、重要な位置を占めるからです。ヴィオッティが弟子を教えて居なかったら、イタリア音楽の19世紀はなかったと言えるでしょうし、となれば例えば、オペラの巨匠、ヴェルディも出ているかわからないからです。それだけの重要性がある訳です。

第26番もコンパクトながら流麗な作品ですし、第10番はさすがに古くささがありますがこれまた美しい作品です。どれも古典的な様式を持ち、あまり冒険をしているとは言えませんが、美しさは絶品です。

あまり冒険していないのは、例えばフランス王宮に仕えていたなどの理由でしょう。ヴィオッティが能力がなかったわけではないと思います。そうでなければベートーヴェンが評価するということはあり得ません。

それを踏まえてなのか、メッツェーナは端正で流麗な演奏です。歌うヴァイオリンに、室内オケのしっかりとしつつ軽い演奏は、誠にバランスがよく、聴いていて心地いいです。まさしく古典派の作品を聴いているという快感が、全身を貫いていきます。

オケもシンフォニア・ペルシナと、第3集からのお馴染みのオケですが、指揮もメッツェーナと、これも同じスタイルです。であれば、なるほど、古くさいのは当たり前だとも言えるわけで、それが演奏のメッセージともなっていると言えましょう。コンパクトであるからこそ、そんな古風な編成でありながらも、活き活きとして溌剌としたものが発せられており、飽きが来ません。特に第25番はヴィルトォーソ的な部分も時代ゆえか入っているのが、実際に演奏を聴けば違和感がないというのが明白なのが素晴らしい!それはメッツェーナの実力でしょうが、ヴィオッティが生きた時代は演奏家とはそういうものだったのだという事を、はっきりと教えてくれます。




聴いているCD
ジョヴァンニ・バッティスタ・ヴィオッティ作曲
ヴァイオリン協奏曲第25番イ長調W25/G124
ヴァイオリン協奏曲第26番変ホ長調W26/G121
ヴァイオリン協奏曲第10番W10/G56
フランコ・メッツェーナ(ヴァイオリン、指揮)
シンフォニア・ペルシナ
(Dynamic CDS498-8)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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