かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:ヴィオッティ ヴァイオリン協奏曲全集4

今月のお買いもの、平成28年5月に購入したものをご紹介しています。今回はディスクユニオン新宿クラシック館にて購入しました、ヴィオッティのヴァイオリン協奏曲全集の第4集を取り上げます。

収録は第18番と第14番、そして第3番の3曲ですが、かろうじてCDに収まっているという状態(77分)という状態を勘案しますと、様式的には、古典派最後のものと、前半のものが混在していると言えます。

第18番と第14番は古典派時代後半の作品と言えるでしょう。全体的に長い演奏時間は、それだけ作品が比較的長大であることを意味します。まあ、それでも30分行くか行かないかですが。

でも、モーツァルトが作曲した協奏曲も、晩年になればなるほど演奏時間が長いものが多いのです。それだけ長大になっていると言えます。それはロマン派の「ヴィルトォーソ」の時代を先取りしたものだと言えます。

様式的にはそれほどヴィルトォーソ的ではないですが、それだけ長いという事は、独奏者の技量を見せる時間を取っているからであり、ヴァイオリンの名手ヴィオッティらしいと思います。まるでモーツァルトがピアノ協奏曲をだんだん長くしていったように。

ヴィオッティは時代的にはベートーヴェンのほうが近く、ほぼ同時代だと言えますが、音楽的にはモーツァルトの時代だと言っていいでしょう。こういった作品が次々と発表されていた時代に、ベートーヴェンは古典派の範疇であってもより先進的な音楽を書いていたことをはっきりと認識出来る点で、まさにこの全集は金字塔だと言えますし、その代表がこの第4集だと言ってもいいでしょう。

特に、第18番の第1楽章は短調の主題が実に明暗の美しいコントラストを作っており、実に素晴らしい作品です。このヴィオッティも素晴らしいのに、ベートーヴェンはそれ以上の作品を書いたのです・・・・・その才能には、脱帽するしかないですし、単に努力の人というくくりだけでは、理解できない作曲家であるという事を、ヴィオッティが明確に教えてくれるのです。

ヴィオッティの作品、あな悪いものであらんや。それを凌駕したベートーヴェン。でも、ベートーヴェンヴィオッティを尊敬していた・・・・・当時の音楽先進国イタリアの底力を見ることができます。ヴィオッティまではイタリアこそ音楽先進国でした。ドイツは後進国。それを先進国に押し上げたのは間違いなくベートーヴェンです。そのベートーヴェンが尊敬してたヴィオッティの、これらヴァイオリン協奏曲は、どれをとっても美しいものばかりです。

演奏は第3集と同じく、メッツェーナのヴァイオリンと指揮、シンフォニア・ペルシナのオケという組み合わせです。それで何ら遜色がないことからもヴィオッティの作品の保守性が見えるわけですが、もしかするとモーツァルトの各協奏曲もそうやって演奏されたと考えるのが普通なのではないかという気がしてきます。初演時の編成はと考えたら事典をひいてみる・・・・・・その必要はありそうです。

この演奏を聴きますと、楽器はやはり人間の「声」を目指して発達してきたのだなあと感じます。それが明確にうかがえるのが、実はテンポなのです。

この3つとも、第1楽章冒頭部は、オケが先に第1主題を演奏して、その後独奏ヴァイオリンが入るという、実に協奏曲らしい様式を持っていますが、それは言い換えれば、オケが前奏としてテンポを決めているとも言えるのです。それは合唱において前奏がテンポを決めているのと一緒です。

古典派において、独奏者とオケは対等ですが、かといってヴィルトーソのように渡り合うと言うものではありません。まずオケが伴奏としてテンポを決め、その後第3楽章に置いては逆に独奏ヴァイオリンがテンポを決め、オケが追随するという様式になっており、それはほとんどの協奏曲でも同じですが、古典派の、ヴィオッティが作曲した時代は、ベートーヴェンによって破壊と創造がなされていた時代です。例えば、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」がその典型ですが、この3つの作品は愚直に第1楽章はオケが先導し、第3楽章は独奏楽器が先導するという様式を採っています。

それを、この演奏は愚直に守っているのです。だからこそ、指揮者が居なくても、アンサンブルがあっています。だからこそ私たちは普通に耳をかたむけることができます。むしろこの演奏はその「時代らしさ」を楽器ではなく、演奏様式で明確に示していると言えましょう。だからこそ聴きやすい・・・・・そこにフォーカスしてみても面白いでしょう。

協奏曲の歴史を、演奏によって明確に示す・・・・・・いいスタンスだと思います。




聴いているCD
ジョバンニ・バッティスタ・ヴィオッティ作曲
ヴァイオリン協奏曲第18番ホ短調W18/G90
ヴァイオリン協奏曲第14番イ短調W14/G66
ヴァイオリン協奏曲第3番イ長調W3/G25
フランコ・メッツェーナ(ヴァイオリン、指揮)
シンフォニア・ペルシナ
(Dynamic CDS498/4)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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