コンサート雑感、今回は令和5(2023)年11月19日に聴きに行きました、府中市民交響楽団第88回定期演奏会のレビューです。
府中市民交響楽団さんの定期演奏会へ足を運ぶのも、随分と久しぶりになってしまいました。幾度か機会はあったのですが、新型コロナウイルス感染拡大と、その後の私の体調の都合上、なかなか都合がつかず、5年も経ってしまいました。
ただ、翌年の府中市民第九は聴きに行っています。
これを機に、府中市民交響楽団さんのコンサートは足しげく通いたいなあと思っていた矢先、社会状況や私自身が難病になり、ようやく今年になって行くことが出来た、というわけになりました。5年前の「我が祖国」の強烈な印象は今でも脳裏に焼き付いています。府中市立図書館にチラシがおいてあり、そこで今回の定期演奏会を知ったのでした。
さて、今回はチャイコフスキーの作品が中心。メインが「マンフレッド交響曲」、1プロが同じチャイコフスキーの「イタリア奇想曲」。そして2プロがグノーの歌劇「ファウスト」からバレエ音楽、でした。
1プロの「イタリア奇想曲」は、多少硬い印象がありました。5年前の「わが祖国」の第1曲「ヴィシェラフト」に比べるとどこか不安定。ホルンなど金管の伸びは素晴らしいのですが、どこか弦がおっかなびっくり。あれ?と思いました。リズムが取れてないなあ、と。しかし段々よくなってきました。リズムが特徴的なので、ちょっと乗り切れなかったのかな?という感じです。
2曲目の「ファウスト」からしり上がりによくなります。ウォーミングアップが済んでいなかったようです・・・まあ、この3年ほど、十分に活動できていなかったはずなので、致し方ない部分もあったのかなと感じましたが、とはいえ、前日のマヨラ・カナームス東京さんは実に素晴らしい演奏を冒頭から繰り広げていたのと比べますと、これがアマチュアだよねという印象もあります。マヨラ・カナームス東京さんがすごすぎるのです。
休憩をはさんで、メインの「マンフレッド交響曲」。チャイコフスキーの交響曲全集などにはなかなか収録されない作品です。交響曲と言ってもどこか交響詩のような印象もある作品ですので、当然とも言えますが、しかし府中市民交響楽団さんはそれを堂々とメインに持ってきました。そのせいなのか、ロケーションの府中の森芸術劇場どりーむホールはほぼ満員。かつて足しげく通っていた宮前フィルハーモニー交響楽団の演奏会を思い出します。伝説の宮前市民館があふれかえったコンサート・・・それをほうふつとさせるのが、府中市民交響楽団さんです。宮前市民館と同じキャパシティなら完全に消防法でアウトです・・・府中の森芸術劇場どりーむホールだからこそ、開催できたコンサートだと思います。行く途中のバス停で同じコンサートへ行くご夫婦と一緒になりました。いやあ、さすがに宮前フィルハーモニー交響楽団ではなかったです。
どの作品でも、そして特に「マンフレッド交響曲」でなんですが、第78回の「わが祖国」同様、自らの「歌」を歌うんです、府中市民交響楽団さんは。市民オケとしてはレベル高いほうです。安心して聴いていられます。ついうっとり、という場面も何度もありました。前日のマヨラ・カナームス東京さんのようにホールを満たす音が広がるわけでないのですが、それはホールの大きさもありますので単純に比較はできません。ですが府中市民交響楽団さんも存分にホールを満たすかのように音を鳴らします。これが最高に気持ちいい!
こういった演奏は最近どのアマチュアオーケストラでも経験できるようになってきましたが、市民オーケストラだとちょっと不満があるケースも散見されることがあります。ですが府中市民交響楽団さんもアマチュアらしいやせた音が合ったりするのに、気持ちよく聴けるんですよね。本当に高いお金出して海外オケとかプロオケとか無理に行く必要ないです。勿論、日本のプロオケの躍進は目覚ましく、素晴らしい演奏会もたくさんありますのでプロオケもぜひとも聴きに行きたいと思いますが、お金がなくてもアマチュアオーケストラで十分クラシック音楽を楽しめる時代がやって来たのだということは、声を大にして言いたいと思います。
その一角に、府中市民交響楽団さんもしっかりと入っていると感じます。何より、「市民にクラシック音楽という芸術を届ける」という強い意志を感じます。次回もぜひとも聴きに行きたいと思っています。
聴いて来たコンサート
府中市民交響楽団第88回定期演奏会(第59回府中市民芸術文化祭参加公演)
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲
イタリア奇想曲
シャルル・フランソワ・グノー作曲
歌劇「ファウスト」よりバレエ音楽
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲
「マンフレッド交響曲」
田部井剛指揮
府中市民交響楽団
令和5(2023)年11月19日、東京、府中、府中の森芸術劇場どりーむホール
地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。