かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:バレンボイムとデュ・プレによるベートーヴェンのチェロ・ソナタ全集2

東京の図書館から、2回シリーズで取り上げております、小金井市立図書館のライブラリである、ダニエル・バレンボイムジャクリーヌ・デュ・プレによるベートーヴェンのチェロ・ソナタ全集、今回は後半の第2集を取り上げます。

収録されているのは、第4番と第5番、そして3つの変奏曲です。3つ変奏曲を入れたというのが、このアルバムの特徴の一つとも言えるのではないでしょうか。

まずは、第4番と第5番。この二つは1815年に作曲され、しかもほぼ1週間程度の差しか完成の時期が変わらないと言われている作品です。そのため、第1番と第2番と同じく、作品番号が同じになっています。

ja.wikipedia.org

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初演はヨーゼフ・リンケのチェロ、マリ・フォン・エルーディ伯爵夫人のピアノと言われていますが、史料は残っていません。第4番は多少簡単なピアノになっていますが、第5番はかなり深い内容になっており、伯爵夫人を想定したとは思えないほどです。よほど伯爵夫人が実力があった人であろうと考えられます。ちなみに、献呈はマリ・フォン・エルーディ伯爵夫人になっています。

第4番は2楽章制、第5番は3楽章制になっており、この差をなぜ付けたのかは聴いていてもよくわかりません。第4番はエルーディ伯爵夫人向けの作品だと思いますが、第5番は明らかにチェロの名手であったリンケ向けの作品。二人の独奏者がそれぞれ満足できる作品をということだったのかもしれません。

続く3つの作品が、何とピアノとチェロによる変奏曲。ベートーヴェンの変奏曲と言えば、ピアノ独奏曲というイメージがありますが、実は室内楽でも存在しています。しかも、そのうち一つは作品番号がついているもの。バッハ以来のクラヴィーアによる変奏曲を、他の楽器にも応用するという、考えてみればベートーヴェンらしい作品と言えましょう。例えば、交響曲第3番第4楽章が変奏曲ですし、この後の作品でも、いわゆる「第九」第4楽章も変奏曲だと言えます。ここでは合唱すら入っています。いや、ほんとに二重フーガとか、マヂで変奏曲ですから・・・

www.beethoven-mo-de.com

enc.piano.or.jp

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3つとも、ヘンデルモーツァルトから主題を取った変奏曲。特に、ヘンデルベートーヴェンが尊敬していた作曲家です。一方、モーツァルトは「軽薄」という評価をベートーヴェンはしているのですが、それでも魔笛から二つも主題を取って変奏曲にするというのは、ベートーヴェンの意外な一面だと思います。少なくとも、ベートーヴェンモーツァルトに対し「坊主憎ければ袈裟までも」ではなかった証拠です。

WoO45は、有名な「ユダス・マカベウス」の主題からの変奏曲。高校野球でも、優勝チームにメダルがかけられる場面で吹奏楽で演奏される主題ですが、それを二つの楽器が絡み合うようにするとは!モーツァルトの主題でも、WoO46はパパゲーノのアリアを使ったもので、二つの楽器用が会話するかのような構造になっているのも魅力的。そして作品66はそもそも二重唱。素材をうまく使っています。アリアからの変奏曲がWoOであって、二重唱からの変奏曲が作品番号がついていることからしますと、ベートーヴェン自身はアリアから二つの楽器にするのは失敗したと考えたように思いますが、私自身はそれほど感じないんです。まあ、WoO46は私は合唱曲として歌ったものであるのが原因かもしれませんが・・・

しかし、バレンボイムとデュ・プレの二人は、いや、すべて本当に素晴らしい芸術だ!というメッセージにあふれた演奏をしています。WoOになっているものもなーんでだろー、いいのにねーって感じです。はい、私も二人に同感です。モーツァルトに対しては境界線が引けているベートーヴェンですが、やはり完璧主義が出ているかなあ、とか・・・あ、臨床心理学的になってしまいました。

まあ、ベートーヴェンも人間ですからね。人間は完ぺきではない、だから完璧を目指すんだという点では、ベートーヴェンらしさが前面に出ているのが、二つのWoOの作品なのかもしれません。それへの共感が、二人には満ちているような気がします。

 


聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
チェロ・ソナタ第4番ハ長調作品102-1
チェロ・ソナタ第5番ニ長調作品102-2
ヘンデルの「マカベウスのユダ」の主題による12の変奏曲ト長調WoO45
モーツァルトの「魔笛」の「愛を感じる男たちには」の主題による7つの変奏曲変ホ長調WoO46
モーツァルトの「魔笛」の「恋人か女房か」の主題による12の変奏曲ヘ長調作品66
ジャクリーヌ・デュ・プレ(チェロ)
ダニエル・バレンボイム(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。