かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ベートーヴェン チェロソナタ全集2

今回の神奈川県立図書館所蔵CDは、ベートーヴェンチェロソナタ全集の第2集です。第4番と第5番の作品102と、同じ編成の変奏曲が収められています。

第4番と第5番は作品102を構成しておりまして、各々15分前後と短い曲ですが、壮大な音楽が形成されていることはともに同じです。それと、第3番までの長い序奏があって主部があるという構造も全く一緒です。

つまり、「ソナタ」の中でも、ベートーヴェンは特に力を入れたものだったとも言えるかと思います。確かに、数からいえばヴァイオリンソナタの半分しかありません。しかし、その充実度はヴァイオリンソナタよりしっかりしていると言えるかと思います。

こう見てみますと、ヴァイオリンソナタチェロソナタとでは、使用目的がどうも異なったのではないかと私は思います。ヴァイオリンソナタは私的なサロンなどのために、そしてチェロソナタは私的であろうが公的であろうが、演奏会用であったと言えるかと思います。

そもそも、チェロソナタの場合、ベートーヴェンがプロの演奏家と交友があったということが重要なファクターでしょう。だからこそ、演奏会用にふさわしい構造のものがかけましたが、ヴァイオリンはアマチュアであるベートーヴェンのレヴェルでできるだけのことをやった(それでも決してレヴェルは低くありませんが)ものだったのでしょう。

そうでないと、ヴァイオリンもチェロもどちらも専門ではなかったベートーヴェンが、差がつくように作曲したのかが説明つかなくなります。

4番も5番も、チェリストのヨーゼフ・リンケのために書かれたもので、リンケのチェロとマリ・フォン・エルーディ伯爵夫人の演奏するピアノを想定して作られたものですが、初演がどのようであったかはよくわかっていません。二人によってだろうと言われています。

チェロソナタ第4番 (ベートーヴェン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AD%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%82%BF%E7%AC%AC4%E7%95%AA_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)

チェロソナタ第5番 (ベートーヴェン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AD%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%82%BF%E7%AC%AC5%E7%95%AA_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)

作曲されたのが1815年。丁度、交響曲は第8番までを作曲し終え、中期が終わりを告げ、後期の内省的な作品群が生まれてくる時期にさしかかった頃です。後期の作品の特徴として、フーガの採用が挙げられますが、第5番の第3楽章でそれが実現しています。さらに、楽章がつながるということも中期以降、特に室内楽では後期ですが、特徴になりますが、それも第4番で実現しています。

こういった作品の萌芽とも言うべきものが、最後に収録されていまして、それが「同じ編成」、つまり、チェロとピアノのための変奏曲です。まず一つ目がヘンデルの「ユダス・マカベウス」から「勝利の合唱」の主題による12の変奏曲ト長調WoO.45です。この曲の主題は皆様よく御存じの旋律で、たとえば甲子園でのメダル授与などで演奏されるファンファーレがそれです。

ユダス・マカベウス
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%83%80%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%82%AB%E3%83%99%E3%82%A6%E3%82%B9

よろこべやたたえよや
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%88%E3%82%8D%E3%81%93%E3%81%B9%E3%82%84%E3%81%9F%E3%81%9F%E3%81%88%E3%82%88%E3%82%84

これをベートーヴェンが主題に採用しているという点が、とても彼らしいと思います。そして、内容的にはカノンのように受け継がれている変奏が特徴で、まるですでにフーガを志向しているかのようです。それが主題の気高さをさらに増幅しています。

続く二つはモーツァルトの歌劇「魔笛」から主題を取ったもので、まずは「モーツァルトの「魔笛」から「恋を知る殿方には」の主題による7つの変奏曲変ホ長調WoO.46」です。「恋を知る殿方には」はパミーナとパパゲーノのアリアでして、元の歌劇ではパミーナから歌いはじめられますが、この変奏曲ではチェロから旋律が奏でられます。さて、ベートーヴェンはどちらをパミーナでどちらをパパゲーノとしたのか、興味深い点です。使われている音程からしますとピアノがパミーナのような気がするのですが・・・・・

最後のモーツァルトの「魔笛」から「恋人か女房か」の主題による12の変奏曲ヘ長調作品66もおもしろい曲です。主題は同歌劇のパパゲーノのアリアなのですが、すでに主題からして原曲とは若干違います。つまり、いきなり変奏しているといえるのです。その主題を変奏しているのがこの曲です。上記はWoO、そしてこれはOpと違いがありますが、なぜベートーヴェンがその差をつけたのか定かではありませんが、恐らくこの構造の点だろうと私は思います。WoO46は構造的に見れば実に普通の変奏曲です。しかし作品66は、いきなり変奏しているということを、ベートーヴェンは強調したかったのかもしれません。

こういった変奏の妙を楽しむということが、特に古典派あたりの時代は好まれたと考えますと、なぜ第九に変奏曲が採用されたのかも、浮かび上がってくるように思うのです。なぜなら、交響曲ではほかに採用されたのは第3番だったからです・・・・・

だからこそ、私はこの時期、変奏曲や室内楽を借りまくっていたのです。



聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
チェロソナタ第4番ハ長調作品102-1
チェロソナタ第5番ニ長調作品102-2
ヘンデルの「ユダス・マカベウス」から「勝利の合唱」の主題による12の変奏曲ト長調WoO.45
モーツァルトの「魔笛」から「恋を知る殿方には」の主題による7つの変奏曲変ホ長調WoO.46
モーツァルトの「魔笛」から「恋人か女房か」の主題による12の変奏曲ヘ長調作品66
ミッシャ・マイスキー(チェロ)
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)



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