かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:ウェーバー クラリネット作品集

今月のお買いもの、平成29年9月に購入したものをご紹介しています。今回はディスクユニオン吉祥寺クラシック館にて購入しました、ウェーバークラリネット作品集をご紹介します。

レーベルはナクソスのこのCDは、一つの編集方針が「協奏的」というのでまとめられているものなのですが、実際にはジャンルとしては異なる二つの作品が収められており、作品名に「協奏的」とはついていないほうがより協奏曲に近いものとなっているのが特徴です。

まず第1曲目が、クラリネット五重奏曲。これが「協奏的」な作品で、実際に書法としては協奏曲として書かれています。録音としては協奏曲として弦楽四重奏ではなくオケで録音されたものもあるようです。

クラリネット五重奏曲 (ウェーバー)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E4%BA%94%E9%87%8D%E5%A5%8F%E6%9B%B2_(%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC)

ということは、この作品は私が推測するに、ウェーバークラリネット協奏曲として書いた可能性が高いだろうと推測します。なぜならこの書法は、モーツァルトが自作のピアノ協奏曲第14番などを編曲した方法と一緒だからです。

ウェーバーが生きた時代は、今ほどオーケストラが身近なものではなく、むしろ室内楽こそポピュラーだったのです。だからこそ、オケの代わりに弦楽四重奏曲はたくさん書かれましたし、協奏曲の亜種として、ピアノ五重奏曲も書かれた時代でした。

その割には、楽章数は4つと、クラリネット五重奏曲の様式を守っているものでもあり、単純に協奏曲として書いたものとは言えない側面もありますが、私は当時の編成などから推測するに、室内楽としてもあるいはオケ作品としても演奏できるようにと書かれた可能性を指摘しておきたいと思います。

2曲目が、偽作の疑いが高い「クラリネット弦楽四重奏のための序奏と主題と変奏」です。ナクソスの説明文では遺作となっていますが、偽作説もあるともあります。いずれにしても、クラリネット弦楽四重奏であれば、協奏曲の亜種として作曲された可能性は高く、それがウェーバーであろうが無かろうが、ロマン派初期であればこの編成は納得のものです。

3曲目がクラリネットとピアノのための大協奏的二重奏曲です。協奏的とありますが、要するにこれはソナタなんです。

協奏的大二重奏曲 (ウェーバー)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%94%E5%A5%8F%E7%9A%84%E5%A4%A7%E4%BA%8C%E9%87%8D%E5%A5%8F%E6%9B%B2_(%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC)

ではなんでこんな題名になったのか。それは当時のソナタというものをふりかえってみる必要があるでしょう。当時ソナタとは、ピアノを「伴奏」として下位に置く、独奏楽器との二重奏の作品を意味したからです。それをベートーヴェンから変え始め、対等に持ってきたわけです。その「対等」という部分を強調するための、このような題名になった、と言うわけです。

協奏曲はその成立の時から、オケを下位に置かず対等に会話するというものでした。それをソナタでやろう、ということなのですが、すでにそれはベートーヴェンがやっていることは当時の作曲家達であれば知っているわけです。それを私達は継承し、当たり前のことにしていく・・・・・その決意表明のための題名だと言っていいでしょう。だからこんな大層な題名になったわけですが、要するにソナタ、なんです。

今でこそ、ソナタと言えば独奏楽器或は二重奏でピアノを伴い、かつそれぞれが対等である作品を言いますが、当時はピアノは通奏低音を担当するもので、もう一方の独奏楽器がメインだったのです。それをベートーヴェン以来の運動に基いて変えよう、というのがこの作品の特徴なのです。とはいえ、とても美しく落ち着いた作品です。ですがその内容は二つの楽器が対等なので、当時の人たちはなんじゃこりゃと見た人も少なくなかったわけです。それだけこの作品は当時はアナーキーな作品だったのです。

最後に収録されたのが「シルヴァナの主題による7つの変奏曲」です。ウェーバーもご多分にもれず変奏曲を作曲しているわけですね。落ち着いた変化が魅力で、むしろベートーヴェンのピアノによる変奏曲に対するオマージュとも言えるかもしれません。主題は別の作曲家ですけれどね。

演奏は、独奏楽器は実に生命力あふれる演奏で、テンポとしてはそれほど速いわけではないんですが、でも躍動感が見られるものです。特に1曲目のクラリネット五重奏では、クラリネットのベルケシュとアウアー・クァルテットが第1楽章で思わずテンポが走りそうになるくらい情熱的。ヤンドーのピアノもベルケシュと楽しそうですし、全体的に人間味あふれるものとなっているのが素晴らしい!残響もいいですしその上でダイナミックさもしっかりと持っているのですが、実はナクソス初期のものなんです。そんな時期にこれだけ立体的な録音があったのかと思いますと、その時期のナクソスはレコーディングエンジニアによって出来不出来があってばらつきがあったんだなと思います。演奏はどれも遜色ないんですけどね。

できればこういった演奏はもう一度市場に出してもいいものだと思いますけど、なかなか難しいのでしょうね。再び出す時にはハイレゾでというのも、検討していい演奏だと思います。




聴いているCD
カール・マリア・フォン・ウェーバー作曲
クラリネット五重奏曲変ロ長調作品34(J.182)
クラリネット弦楽四重奏のための序奏と主題と変奏
クラリネットとピアノのための大協奏的二重奏曲変ホ長調作品48(J.204)
シルヴァナの主題による7つの変奏曲変ロ長調作品33(J.128)
カールマン・ベルケシュ(クラリネット
イェネ・ヤンドー(ピアノ)
アウアー・クァルテット
Naxos 8.553122)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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