かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から〜小金井市立図書館〜:グリーグ 「ペール・ギュント」と「十字軍王シーグル」1

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリを御紹介していますが、今回はグリーグの「ペール・ギュント」と「十字軍王シーグル」が収録されたアルバムから、まず「ペール・ギュント」をご紹介します。

このアルバムは2枚組で、ペール・ギュントが2枚にまたがっています。そのため、1枚2枚で御紹介せずに、2曲分けてご紹介することにしました。

と言っても、皆さまはなぜ今更ペール・ギュント?と思う事でしょう。既にCDで持っている組曲の他の演奏なんですかと問う方もいらっしゃることでしょう。

ただ、ペール・ギュント組曲は、組曲なのです。ロマン派の組曲である以上、舞曲要素がなければそれはオペラなどからの抜粋であることを意味します。ということは、当然「ペール・ギュント」にも原曲がある、ということを意味します。

元々、「ペール・ギュント」はイプセンの戯曲です。

ペール・ギュント
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%AE%E3%83%A5%E3%83%B3%E3%83%88

そして、この作品が小説と言う形ではなかったため、補足するものが必要になったのです。そのため作曲されたのが、グリーグの元の作品なのです。

ペール・ギュント (グリーグ)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%AE%E3%83%A5%E3%83%B3%E3%83%88_(%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0)

でもなぜ、私がこのCDを借りてこようと思ったかと言えば、そもそもこの全曲をmixiの同時鑑賞会で取り上げられたことだったのです。その時も抜粋だったと思うんですが、その時以来、全曲が聴いてみたいと切に願ってきたのです。そこで小金市立図書館の棚をふと見てみたら、なんと!その全曲があったんです。

小金井位の小さな市であれば、抜粋で済ますことも予算的には可能であるはずです。それをなんと、神奈川県立図書館であるかのように、全曲のほうを持っているとは!勿論、組曲もあるんですが、いやあ、食指はこっちに動きました。組曲はまた府中市立図書館あたりで借りてこようと思います・・・・・

さらに言えば、このような劇音楽はさかのぼればベートーヴェンへも至りますが、そもそも劇音楽は私好きなんです。私は実は無類のヤマトファンであることは、以前申し上げた通りです。丁度このCDを借りたころ、ヤマトのリメイクが始まりました。それが「宇宙戦艦ヤマト2199」です。

ヤマトとペール・ギュントとで、共通するものがたった一つだけあります。それは主人公が旅をする、と言う事です。その内容と目的は全く違うんですが、ペールが旅をするのはその通りなので、ヤマトと同じように旅をし、そして元のところへ戻るのも、実は一緒なんです。

ですから組曲を聴いた時に、できれば全曲が聴きたいとずっと思って来たんです。CDを買おうともありますが、予算の関係であきらめたのを覚えています。その時はフィリップスだったと思うんですが、確かのこのアルバムは元音源がドイツ・グラモフォンだったと思います。

さて、原曲はと言えば、組曲だと第2組曲で使われるものがいきなり出て来るので、組曲を聴き慣れていると始め面喰うと思いますが、物語を知ってしまうと、なーるほど〜って思います。組曲は物語とは全く関係なく、独立した作品として起承転結を計ったもので、劇音楽は原作の戯曲に基くので、また違った順番になりますし、またこの演奏は合唱や台詞も入っているので、劇音楽としてどのようなものなのかを、詳細に知ることができます。

最後がソルヴェイグの子守歌で終わるのは組曲と同じですが、その音楽も元の劇音楽では多少異なります。ということは、グリーグ組曲にする時に編曲していることを意味します。それはこの「ペール・ギュント」が初演以来改訂されてきたという、ウィキの記述に合致します。

むしろ慣れてしまうと、この元の劇音楽のほうが楽しいです。物語がどのように推移し、最後へと至るのかがとても面白いですし、そもそも寓意や風刺の側面があるイプセンの原作が、とてもユニークであることが手に取るようにわかります。イプセンの近代性に対しグリーグの音楽がロマンティックだという批判もありますが、劇音楽なのでなかなかすべてを音楽でというのは難しいのではないかと思います。役者と音楽が相まって初めて、すべてが表現される部分もあるのではないかと思います。

演奏は先日シベリウスのクレルヴォ交響曲でも取り上げた、父ヤルヴィの指揮、イェーテボリ管弦楽団の演奏。合唱団はプロの素晴らしい団体が演奏し、ソリストも実力十分!ペール・ギュントを存分に「演じて」います。だからこそ、本来のペール・ギュントは実はとても寓意的で、人々に考えさせる作品なのだと気づくことができます。組曲だけだと単なるドラマとしか取れないのが、生き生きとした人間模様による、寓意溢れる作品であることが理解できます。

劇音楽と言っても、とてもドラマティック!グリーグはしっかりと仕事をしていることが、奇をてらわない演奏から滲み出ます。多少変わっていると言えば、例えばアニトラの踊りではppで演奏されており、組曲のpとは多少異なります。アニトラの踊りが如何におどろおどろしい場面で使われているのかが分かるんです。やっぱり「亀さん、乗ってみよう」(by 十津川警部)です。百聞は一見にしかず。原曲を聴けば、組曲で使われている音楽の「本当の姿」と「目的」が見えてきます。

この元音楽を聴いてから、さらに「ペール・ギュント」が好きになりましたし、その寓意的内容がわたし自身にも突き刺さります。だからこそ私も考えますし、イプセンという作家が書いた作品をしっかりと彩ることに、グリーグは成功していると思います。そして多分、父ヤルヴィも、この作品はとても素晴らしいものなんだと聴衆に考えてほしいと思っているのではないでしょうか。




聴いている音源
エドゥアルド・グリーグ作曲

劇音楽「ペール・ギュント」作品23
ソールヴェイ:バーバラ・ボニー(ソプラノ)
ペール・ギュント:ウルバン・マルムベルイ(バリトン
アニトラ:マリアンヌ・エクレーヴ(メゾ・ソプラノ)
泥棒:ウルバン・マルムベイ(バリトン
盗品買い:カール・グスタヴ・ホルムグレン(バリトン
山羊追いの女達:マリア・アンデルッソン、モニカ・エイナルソン、シャルロッテ・フォーシュベルイ(ソプラノ)
語り手:ヴェンケ・フォッス(オーセ/アニトラ)
    トーラルゲ・マウルスター(ペール・ギュント
    トール・ストッケ(ドヴレ山の魔王/ベイグ/ボタン作り師)
クヌート・ブーエン(ハルディングフェーレ、第2曲、第3曲)
パウル・コルテーセ(ヴィオラソロ、第1曲)
エスタ・ヴォーカル・アンサンブル
プロ・ムジカ室内合唱団(合唱指揮:エスタ・オーリン)
ネーメ・ヤルヴィ指揮
イェーテボリ交響楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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