かんちゃん 音楽のある日常

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コンサート雑感:中央大学管弦楽団第91回定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和6(2024)年5月18日に聴きに行きました、中央大学管弦楽団第91回定期演奏会のレビューです。

またはしごしたのですかって?はい、先週、カルペディエム・コレギウム・ムジクムを5月18日に聴きに行ったと述べましたが、おっしゃる通りです。カルペディエム・コレギウム・ムジクムの後に、中央大学管弦楽団の第91回定期演奏会を聴きに行っています。そのインターバルは2時間。

場所によっては、2時間だと間に合わないケースもありますが、今回幸運だったのは、東急田園都市線青葉台駅から、JR八王子駅への移動だったことです。関東以外の方だとピンと来ないかもしれませんが、青葉台から八王子なら、どんなにかかっても1時間でつきます。それゆえ、はしごを選択したというわけです。しかも、そもそも予定に入れていたのが、この中央大学管弦楽団の方だったのです・・・昨年12月の第90回を聴きに行った時に、プログラムで記載があったので。

今回の曲目は以下の通りです。

ドビュッシー 小組曲
ドビュッシー 月の光
ドヴォルザーク 交響曲第8番

全部「ド」で始まる作曲家ですね!ってそこですか!でも、まさかそれを狙ったわけではないと思いますが・・・けれども、佐藤寿一氏が選択したとすれば、決して脈絡なく選択したとはいいがたいと思います。でも、学生オケだから全部ドで始まる作曲家で並べた可能性もある?

私自身は、ドビュッシードヴォルザークという作曲家は、同じ毛色の作曲家だと判断しています。え?音楽的には全然違うでしょって?おっしゃる通りです。ただ、実は二人とも、自国の音楽を根底に作曲をした作曲家であるということ、そしてどちらとも象徴主義的音楽である、ということで共通していると私は判断しています。

ドビュッシーは、フランス・バロックに範をとり、新しい和声を完成させて作曲しました。ドヴォルザークボヘミア民謡を使ってボヘミアを表現する作曲をしました。そして、ドビュッシー象徴主義だと自分で言い、ドヴォルザーク交響曲においてはふんだんに鉄道を想起するリズムや音型を散りばめて、まるでSLを象徴するような作品を作りました。その典型例の一つが、交響曲第8番だと言えます。

そのうえで、二人の音楽は全く違うものになっています。ここが、クラシック音楽の魅力の一つだと私は思いますし、その違いを学生もそして聴衆も味わってほしいという目的が指揮者の佐藤寿一氏にあっても、私は不思議ではないと思っています。

まずは、ドビュッシーの小組曲。もともとはピアノ4手連弾のために作られた作品を、後にアンリ・ビュッセルによって管弦楽へと編曲されたものです。

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そのためか、編成も比較的小さく、トロンボーンとチューバはありません。佐藤氏はオケにアンサンブルを合わせることを要求した印象があり、特に美しさに重きが置かれていると感じました。特に打楽器のタンバリンの優しいベルベットのようなサウンドが印象的。ついつい眠気が・・・いやいかん!と自分を起こします。それだけ、気持ちいい演奏でしたので、まさにドビュッシーが作り出す柔らかな世界が実現されたと言っていいでしょう。

2曲目が「月の光」。勿論、ベルガマスク組曲のうちの1曲で、もともとはピアノ独奏のための作品です。以前、所沢市民文化センターで瀬川玄氏のピアノで聴いた曲です。それを、オーケストラで演奏するとどうなるか?というのも注目点ですが、これもまた美しくまるで月の光が差し込むかのような印象です。ピアノ曲オーケストレーションされた点をしっかり踏まえた、これもまた優しく包まれるような演奏が素晴らしい!ちなみに、管弦楽へ編曲したのはドビュッシーの友人であり作曲家のアンドレ・カプレです。

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この編成も、小組曲同様にトロンボーンとチューバは使われていません。その点もまた、ピアノ曲であるということを踏まえられており、その点に重点が置かれた演奏は、まさにドビュッシーという作曲家の魂を掬い取っているように思われます。

そして、最後がドヴォルザーク交響曲第8番。以前から私は、この曲はボヘミアの草原を走る列車を描写したものだと言う解釈をしていますが、まさに佐藤氏もその解釈だったように思われます。ただ、団員は学生であるせいか、ホルンとトランペットが多少不安定。今度は思い切りぶっ放すことも必要なのですが、美しく鳴らそうとして失敗した印象があります。ただ、そのトライ自体は素晴らしいと思います。特にSLの汽笛を表現しているであろうトロンボーンは素晴らしい!弦楽器も思い切りリズムを刻み、まるでそこにSLが走ってきているかのよう!

ホールはJ:COMホール八王子(八王子市民会館)。実は昔はJR東日本東日本旅客鉄道)の敷地であり、私が幼いころにはまだ電気機関車が係留されていたりしましたし、その昔にはSLもいたのです。なぜなら、八王子という場所は中央本線に於いて峠越えの区間が始まることを意味していたので、そこで機関車を増結したりする必要があったからです。その点でも、この選曲はどこか佐藤氏の意向が大きかったのではと思う次第なのです。私は鉄道ファン、つまり「鉄ヲタ」なので、かつて機関車が留置されていた場所にあるホールで聴くドヴォルザーク交響曲第8番は、思わずまだSLが中央本線で全盛だった時代を想起させるものでした。例えば、D51とか・・・

私が八王子駅に着いた時も、貨物列車が時間調整のために停車中でした。けん引の機関車までは時間がなく確認できませんでしたが、コンテナだったのでおそらくEH210であろうと思います。EH210だと所属はJR貨物ですが、もともとは同じ国鉄だったわけで、ドヴォルザークボヘミアの風景の中に走るSLけん引の列車を描写したことが、思わず想起されたのでした。その機関車の生命力が、存分に表現されていたのは、さすが若いっていいなあと思います。そのうえで、第2楽章のホルンが主役の牧歌的な風景もまた、格別でした。もう少し力強さもあれば完璧!

それでも、全体的にはレベルが高い演奏だったと思います。ドヴォルザークが見て感動したであろう風景が表現されていたと思います。できれば、演奏の参考に、近くを走るSL列車を、機関車近くで乗って経験しておくとよかったかなと思います。例えば、秩父鉄道の「パレオエクスプレス」や東武の「SL大樹」、あるいは真岡鉄道など、関東でもSLを観光列車として走らせているケースは結構あります。上越線でも時々走らせていますし、季節が合えばちょっと遠出になりますが、JR東日本磐越西線で「ばんえつ物語号」を走らせています。そういう列車に乗ることで、ドヴォルザークが表現したかった、ボヘミアを走るSLの風景はどんなものだったのだろうか?と思いを馳せることも、演奏に必要かもしれません。それはまた、後輩に受け継がれるといいなあと思います。

そして!次回は同じボヘミアの作曲家である、スメタナの代表作「わが祖国」全曲!今年はスメタナ生誕200年と歿後140年の記念の年になっているせいか、この「わが祖国」が演奏されるケースが多いですが、中央大学管弦楽団が佐藤氏の下どんな演奏を披露してくれるのか、今から楽しみです!特に、第2曲「ヴルタヴァ」をどのように演奏するのか、注目したいと思います!

 


聴いて来たコンサート
中央大学管弦楽団第91回定期演奏会
クロード・ドビュッシー作曲
組曲(アンリ・ビュッセル編曲)
ベルガマスク組曲より第3曲「月の光」(アンドレ・カプレ編曲)
アントニン・ドヴォルザーク作曲
交響曲第8番ト長調作品88
佐藤寿一指揮
中央大学管弦楽団

令和6(2024)年5月18日、東京、八王子、J:COMホール八王子(八王子市民会館)大ホール

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