かんちゃん 音楽のある日常

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コンサート雑感:中央大学管弦楽団第92回定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和6(2024)年12月12日に聴きに行きました、中央大学管弦楽団第92回定期演奏会のレビューです。

中央大学管弦楽団は、私が卒業した大学でもあることで、近年毎年足を運んでいるオーケストラです。

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前回第91回のエントリはこちら。

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このエントリの中でも触れていますように、今回の第92回の演奏曲は、チェコの作曲家スメタナが作曲した連作交響詩「わが祖国」全曲です。今年は、スメタナ生誕200年と歿後140年という記念の年です。そのため、同じく初演200年の記念年であることで演奏されることが多くなっているベートーヴェン交響曲第9番と同じく、いろんなアマチュア・オーケストラが演奏をしている曲でもあります。私自身、今年3つすでに足を運んでいます。

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中央大学管弦楽団は、この「スメタナ・イヤー」を締めくくる団体となりました。今年は合わせて4つとなりました。

さて、ナズドラヴィ・フィルさんの時のエントリでも触れましたが、「わが祖国」はトロンボーンを慣習で倍に増やして6つにすることが多いわけなのですが、今回の中央大学管弦楽団は指示通りの3つで演奏していました。これはナズドラヴィさんといっしょということになります。しかも、ナズドラヴィさん同様、響きのいい大きなホールを選択しました。ホールは横浜みなとみらいホール大ホール。これが吉と出るか凶と出るか・・・

指揮はいつもの佐藤寿一氏。1曲目の「ヴィシェフラド」はゆったり目で入りますが、主題が提示されるとヒートアップ。佐藤氏らしい解釈だと思います。ここまではいいのです、問題は次の「ヴルタヴァ」ですが・・・

感動しました!入りのテンポはあまり私が好きではない、ゆったり目で川の流れをただ表現したものだったのですが、だんだんヒートアップしてきます。この辺りは、正直ビェロフラーヴェク指揮チェコ・フィルよりもいい演奏だと思います。私のお気に入りはヴァ―ツラフ・スメターチェク指揮チェコ・フィルですが、今回の中央大学管弦楽団の演奏は、その私が好きな演奏と同じくらい感動する演奏だったのです。今年聴いた中で言えば、秋山和慶指揮かわさき市民オーケストラ2024とほぼ同レベル・・・

テンポ的には私の美意識と異なるのに、説得力があり、感動させるとは・・・いつもながら、佐藤氏の譜読みの深さを感じます。そしてしっかり表現する学生たち。それは、もしかすると初演を再現しようとしたのかもしれません。「わが祖国」は1875~1880年にかけて初演され、通しで初めて演奏されたのは1882年。その時は1曲終わるごとに拍手が起きました。じつは今回も、同じように1曲終わるごとに拍手が起きました。

ja.wikipedia.org

「連作交響詩」なので、1曲だけ演奏するのも一応アリ、です(そのため、アマチュア・オーケストラの演奏会では「ヴルタヴァ」だけというケースもままあります)。その熱狂が、演奏する学生にも影響したのかもしれません。演奏も本当にあまりひっくり返る音もなく弦のやせた音も聴こえてきません。まるで横浜みなとみらいホールプラハの「芸術家の家」であるかのようにすら感じられます。

「シャールカ」の激しさは佐藤氏ならでは!強いアインザッツが怒りを表現しているかの様。後半の「ボヘミアの森と草原より」ものどかなだけでなくそこに生きる生命の輝きすら見えるようです。

そして、最後の2曲、「ターボル」と「ブラニーク」。いずれもチェコという国の混迷と未来を表わすかのよう・・・特にブラニークでは、「ヴルタヴァ」以来の感動で、涙腺崩壊寸前・・・今回、「ヴルタヴァ」と「ブラニーク」では涙腺が崩壊しかけました。それほど感動していました。美しく力強い「歌」がありました。コンサートマスターを始め、学生たちが演奏中体を思いっきり揺らしているんですよね。どこか作品に共感しているかのような・・・

とくに、最後の2曲は、耳が聞こえなくなっていたスメタナが同じく耳が聞こえにくかったベートーヴェンがテーマとした「苦悩を突き抜けた歓喜」を想起しているかのような構成になっていることもあり、感情移入をしたのかもしれません。美しさと力強さが同居した、素晴らしい演奏でした。次回第93回は再び多摩に戻り、J:COMホール八王子で、メインがベートーヴェンの「田園」。どんな讃歌を聴かせてくれるのか、楽しみです。

 


聴いて来たコンサート
中央大学管弦楽団第92回定期演奏会
ベドルジハ・スメタナ作曲
連作交響詩「わが祖国」全曲
佐藤寿一指揮
中央大学管弦楽団

令和6(2024)年12月12日、神奈川、横浜、横浜みなとみらいホール大ホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。