かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:中央大学管弦楽団第89回定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和5(2023)年5月26日に聴きに行きました、中央大学管弦楽団第89回定期演奏会のレビューです。中大生の皆様、お待たせしました!どうしても事情があり、前後してしまいました。

かなり久しぶりとなりました。ほぼ4年ぶりです。コロナ禍と私自身の病気ということがあり、もう4年もたってしまったのかという感じです。

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ホールは4年前とおなじ、J:COMホール八王子(当時はオリンパスホール八王子。新八王子市民会館)。あの時はカリンニコフがメインでしたが、今回はメジャーなドヴォルザーク交響曲第4番。

①スッペ 喜歌劇「軽騎兵」序曲
ホルスト サマセット狂詩曲
ドヴォルザーク 交響曲第4番

ある意味、アマチュアらしいと思います。ホルストのサマセット狂詩曲を入れるなんて、なかなかプロオケではやらないですから。どうしてもプロオケは収支というものを考えるので、無難なある程度知られている作品を選ぶ傾向になりますから。

そのうえで、まだ日常が戻って来た、とまでは言えないのかな、とも思いました。実際、この3つで公演は2時間どころか1時間半程度で終わってしまっています。休憩含めて、です。プログラムは日常が戻ってきつつありますが、演奏時間を減らし、負担を減らすということで、まだ緊急事態が抜けきってないなあと感じました。

とはいえ、途中(ドヴォ4第2楽章演奏中)に地震発生、しかし涼しい顔して演奏していたのには驚きました。実際、震度は3程度だったようです。ですが私は3階席に座っていましたが、かなり揺れて肝を冷やしました・・・・・

さて、演奏評に参りましょう。スッペの「軽騎兵」序曲はもう有名すぎる曲ですね。オペレッタ自体はあまり日本では演奏されませんが序曲はプロオケでも良く使われるコンサートピースでしょう。指揮者の佐藤先生、タクト速いwしかし、学生はノリノリで演奏していますし、それにより生命力に満ちています!ですがあまり体は使われていません。若さっていいですねえ。これで体を思いっきり使っていたら、さらに熱狂的な演奏になったかもしれません。

続くサマセット狂詩曲。これは解説いれておきましょう。ホルスト1906年に作曲した作品で、19世紀ヨーロッパで流行した民謡採集運動に触発されて作曲されたものです。「サマセット」とはイギリスのサマセット地方のことを指し、そのサマセット地方の民謡をベースに作曲された作品です。

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よく、19世紀イギリスの作品は保守的だと言われますが、まあ、確かに和声としてはそう感じますが、あくまでもそれは19世紀という時代の中で生まれたもの、なんですね。それとこの時代は、イギリスが覇権を握っていたということもあります。覇権の座から転げ落ちた後の時代のブリテンなどは、また違う様相を示しているのは興味深いです。

最後、消えゆくかのように終わる作品なんですが、演奏はとてもしなやかかつ雄弁。いやあ、学生がここまでやるのか!と驚きを隠せません。4年前にもレベルが高いと書きましたが、さらに上がっているように思います。4年前とはメンバーが完全に入れ替わっているにもかかわらず、です。どれだけの努力をしたのだろうと思います。それと、中大オケの実力が広く認知されてきた結果なのかとも思います。

例えば、高校野球で優勝すると実力ある選手たちが入学してきますよね?一緒だと思うんです。中大オケの実力が広く知られるようになり、実力のある学生が勉学しながらも音楽を楽しみたいとなったときに、中央大学を選択するという構図です。この構図が長く続いてほしいと思います。

メインのドヴォルザーク交響曲第4番。あまり知られていない作品だと思います。ドヴォルザーク交響曲は第2番~第6番まではコンクール出品作品だと言っていいのですが、この第4番もその中の一つです。随所に鉄道の音がちりばめられており、「鉄ヲタドヴォルザークらしい作品です。一般的にはワーグナーの影響が強いとは言われてますが・・・・・

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第1楽章と第4楽章は、鉄ヲタが聴けば「いやあ、どう考えても鉄ヲタでしょ!」としか受け取れないフレーズがいくつもあります。ワーグナーの影響はどちらかと言えば和声であり、フレーズはどう聴いても鉄道からのインスピレーションです。その意味では、ドヴォルザーク国民楽派とは言え、19世紀の社会の写し鏡であると言えましょう。ナショナリズムパトリオティズムというよりは、すぐそこにあるような題材を用いて芸術へと昇華させている、というべきではと私は思います。確かに民謡などを題材に使ってはいますが。

そしてそのリズムの良さ!そのリズム感をしっかり感じて、生き生きとした演奏が繰り広げられていたのは圧巻です。ホールいっぱいに響き渡る演奏する喜びと相まって、ドヴォルザーク交響曲第4番という作品もまた、優れた内容を持つことを証明していもいます。学生らしくていいなあと思います。勿論、よーく聴けば痩せたヴァイオリンの音などもありますけれど、本当によーく聴かないとそれは聴きとれません。ホールをうまく楽器に使っているなあと思います。そういえば、近年はパルテノン多摩ではなくJ:COMホール八王子でのコンサートが圧倒的に多いようで、ほぼホームグラウンドのようになってますね。上手に使えるのは当然かもしれません。

そのうえで、プログラムに記載こそないんですが今回もおそらくクレセント・フィルの団員がエキストラに入っているように見えました。このOB・OGの支援体制はいいなあと思います。こうなると久しぶりにクレセント・フィルも聴きに行きたくなりますね。えっと、確か近場なんですよねえ次・・・・・え?稚内より近ければ近場ですって?あのう、私は鉄道系youtuber西園寺さんとは違うので・・・・・

まあ、中大オケのOB・OGたちの団体であるクレセント・フィルが支援体制を敷いているというは、将来の大学オケのあるべき姿を示しているように思います。今後、大学オケは少子化に直面します。その時、大学オーケストラはどのような姿になっているのか。地域とともに歩むのかそれとも学生とOB・OGが一緒になって演奏するのか。中央大学管弦楽団とクレセント・フィルはそのひとつの答えを示しているように思います。いろんな大学オケでもOB・OGが設立したオーケストラがあり(代表的なのがアンサンブル・ジュピター)、中大でもクレセント・フィルがあることは、将来学生オケが存続するために重要な役割を果たすのではないか?と私は思っています。「学員」として、今後も注目していきたいと思います。

 


聴いて来たコンサート
中央大学管弦楽団第89回定期演奏会
フランツ・フォン・スッペ作曲
喜歌劇「軽騎兵」序曲
ギュスターヴ・ホルスト作曲
サマセット狂詩曲作品21-2
アントニン・ドヴォルザーク作曲
交響曲第4番ニ短調作品13
佐藤寿一指揮
中央大学管弦楽団

令和5(2023)年5月26日、東京八王子、J:COMホール八王子(新八王子市民会館)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。