かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:ラモー 「遍歴騎士」組曲

東京の図書館から、今回は府中市立図書館のライブラリである、ラモー作曲「遍歴騎士」の組曲を収録したアルバムをご紹介します。

ラモーはフランスバロック期の作曲家です。このブログでも「優雅なインドの国々」を取り上げたことがあります。そのラモーのオペラ「遍歴騎士」から、管弦楽部分を抜き出したものが今回の組曲です。

つまり、この「組曲」はバロック時代の「組曲」というよりは、近代オペラの「組曲」である、ということです。如何にウィキのページを載せておきましょう。英語版なので適宜和訳ソフトなどを使い翻訳して読んでみてください。私はGoogle chromeなので和訳機能がついており、その翻訳で読みました。

en.wikipedia.org

とりあえず簡単な情報は、昭和音楽大学のページにて載っています。

opera.tosei-showa-music.ac.jp

ラモーの人生の中でも晩年の1760年の作曲です。ストーリーは恋仲が裂けられそうになったけれど、「不思議な魔法で」その危機が回避され、結ばれめでたしめでたし、というものです。ん?どこかで聞いた話ですねえ。関係あるのかはわかりませんが、まるでモーツァルトの「魔笛」そっくりです。

まあ、ヨーロッパの啓蒙思想を深く追求しますと、下手すれば都市伝説まで行きかねませんので詳しく触れませんが、実はヨーロッパにおいては啓蒙思想は広く存在していましたので、ラモーもモーツァルト同様、「あの団体」に入っていた可能性は否定できません。ただ、あくまでもこれは私の個人的推測に過ぎませんのであしからず。史料はありませんので。

全体的には、舞曲がちりばめられているのが特徴です。ジーグやエール、そしてガヴォットにコントルダンスと、実に多彩な舞曲が存在しています。典型的なバロック・オペラだと言えます。バロック・オペラにはバレエなど、舞曲が多彩なのです。とはいえあくまでも「遍歴騎士」はオペラであり、「抒情喜劇」に分類される作品です。

ということは、基本的には宮廷にて演奏された作品であることは間違いありません。そもそもラモーは「フランス王室作曲家」の称号を持っていた作曲家ですし。しかしその宮廷において、啓蒙思想的なオペラを作曲した、ということになります。宮廷が好む舞曲を取り入れて、です。1760年と言えば、その10年後にベートーヴェンが生まれるという、時代的にはバロックから多感様式(前古典派)へ移行する時代です。十分啓蒙思想が広がっていてもおかしくありません。

こういう作品は、かつての私だと「つまらん」と言って避けていたのですが、国史学「学士」である私としては、歴史家の血が騒ぐんですよ。フランス革命の勃発はこの作品が作曲されてから29年後の1789年。時代としては経っていますが、しかし29年です。その萌芽はラモーの時代にすでに蒔かれていた、と考えるのが自然です。音楽は実にバロックですが。

バロックはつまらないという人も多いのですが、聴けば聴くほど、調べれば調べるほど、バロックという時代は面白くかつ現代に直接つながっている時代だと感じます。さらに言えば、バロックという時代は前代のルネサンスを契機に始まっているということも、歴史学的には見逃せません。つい私たちは時代が違うと考えてしまいますが・・・・・・

もちろん、時代は違うんです。ですが、ルネサンスがあって、バロックという時代がやってくるんです。「人間復興」という精神がなければ、バロックという「ゆがんだ真珠」という時代はやってこなかったんです。その過程を経なければ、恐らく市民革命もなく、ベートーヴェンの芸術も誕生しなかったでしょう。その意味でも実はラモーなどの芸術に触れることは有意義なのです。フランス宮廷の音楽だから・・・・・と避けるのは、私は歴史に対して盲目になるだけだと思っています。

同じことを、演奏者たちは考えているのではないでしょうか。指揮はグスタフ・レオンハルト、オーケストラはエイジ・オブ・インライトゥメント管弦楽団。「インライトゥメント」とは「啓発」だとか「啓蒙」という意味です。まさにこの時代を表すにぴったりなオーケストラ名なんですよね。レオンハルトは様々な古楽団体を組織していますが、このエイジ・オブ・インライトゥメント管弦楽団は特徴的で、フランス・バロックを演奏していることが多いように私には見受けられます。その意味ではドイツ・バロックとフランス・バロックを演奏する場合は団体を分けているような気がします。実際、レオンハルトレオンハルト合奏団を組織し、それはバッハのカンタータの演奏を担当していますし(これに関しては、近い将来取り上げます)。

そして啓蒙だからなにか堅苦しいのか?と思いきや、なんとリズミカルな音楽であることか!むしろ生き生きとしており、人間性すら感じられるんです。単に表面的な楽しさではなく、人間の喜びを表現している演奏は実に楽しい!

たしかに、政治史的に見れば、フランス宮廷は市民に対して苛烈な政治を行いましたし、それは史実です。一方で宮廷にいた人たちもまた同じ人間であったということも、ラモーの芸術から明らかになるのです。ラモーは時代の現実を見たうえで、どのようにすれば啓蒙活動ができるのかを真摯に考えていた様子がうかがえます。その歴史から私たちは何を学び、行動していくのか。演奏は私たちに作品をして考えさせているように思います。

 


聴いている音源
ジャン=フィリップ・ラモー作曲
「遍歴騎士」組曲
グスタフ・レオンハルト指揮
エイジ・オブ・インライトゥメント管弦楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。