かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:太陽王ルイ14世時代のクラヴサン音楽

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回は太陽王ルイ14世の時代のクラヴサン、つまりはチェンバロの作品を集めたアルバムをご紹介します。

太陽王とは、ルイ14世が太陽の仮面をつけてメヌエットを踊ったことから由来すると言われますが・・・・・まあ、この人いろいろ業績もありつつやらかしている側面もある人です。

ja.wikipedia.org

歴史学的に俯瞰すれば、この国王からフランス革命は始まっていると言ってもいいかと思います。国債というものが今ほど整備されておらず税収だけで国家運営をしていれば、戦争ばかりやっていれば戦費で破綻するのは目に見えているわけですが、税金で暮らすという立場だと陥りやすい結果だと思います。せっかく精力的に働く国王であるだけに、人間としては残念な人だと思います。

しかし、すべてがダメなわけでもなく、そもそもメヌエットを導入し踊ったということからも、文化に理解を示した国王だったことは確かです。上記ウィキではリュリが触れられていますが、なぜかこのアルバムには出てこずに、その代わりに世襲の宮廷音楽家だったダングルベールと、クープラン一族の中でも大クープランとならぶルイ・クープランの作品が収録されています。

ja.wikipedia.org

ja.wikipedia.org

しかも、どちらも組曲。確かに、当時としてはリュリは大家ですし、宮廷楽長の座にありましたし、寵臣でもありました。しかしこのアルバムでは、単なる宮廷音楽家であるダングルベールと僅か10年しか活動が残されていないクープランにフォーカスされています。特に組曲を集録しているという点で、演奏する中野振一郎の視点を楽しむことができます。

音楽史上、クープランのほうがリュリよりは進んでいると解釈されます。ダングルベールとルイ・クープランが活動した時代は徐々に戦費により芸術支援は予算が縮小されていく時代ですが、新しいものが好きな国王により、おそらく新しいものが取捨選択されていった時代だと考えてもいいでしょう。少なくともバロック音楽演奏の大家でもある中野振一郎の視点からは、そう見えるからこその選曲だと言えるでしょう。

組曲とは、何度も触れていますが舞曲集を指します。当時は組曲を演奏するということは、現代的に言えばライヴハウスで演奏に合わせて踊ることを意味します。あるいはデッキなどで音楽をかけてダンス。その舞台が宮廷だった、というだけなのです。だからこそ選曲して組曲が収録されているのは当然だともいえます。ですが、演奏としては決してリズミカルとまでは言えません。しかし当時はそれで踊ったのです!

バロックダンスは、現代のダンスと一緒の部分とちょっと違うところとがあり、踊ったり見たりしないとわかりにくい部分がありますが、いずれにしても音楽に合わせて踊るということは共通です。ですからその音楽が決してリズミカルではないということは、リズミカルに踊るものとは限らない、ということを意味します。その意味では、バロック・ダンスはむしろ日本人だと盆踊りと一緒だというほうが理解しやすいかもしれません。あの程度のリズムなのです。けれどもそれが宮廷では新しかった・・・・・そういう時代です。

その点を踏まえた、自在な演奏は、初めはおお!荘厳で軽やかな音楽!と受け入れる人も多いかと思いますが、それ、ダンス音楽なんですけどというと「この左翼が!」とか言われるのが常なのですが、いえいえ、ルイ14世はそういう「ダンスミュージック」を廷臣たちに「強要した」「絶対王政の王」だった、ということを理解していません。そのダンスを踊り楽しむことこそ、王に対する忠誠を表す一つの方法であった・・・・・それ以前はもっと整然としたものだったことを知らないと、作品の本質にはたどり着かず、一人よがりな解釈でしかなくなる気がします。

その意味では、中野氏の解釈は実に歴史学的にも正しいアプローチをしていると思いますし、当時の精神を存分に表しているものです。そんな作品を共和主義的なイデオロギー批判のように非難するのは、むしろ保守なのでしょうかとしか私には見えません。

 


聴いている音源
ジャン・アンリ・ダングルベール作曲
組曲ト調
①プレリュード
アルマンド
クーラント
サラバンド
⑤ガイヤルド
ジー
ルイ・クープラン作曲
組曲ト調
⑦プレリュード
アルマンド
クーラント
サラバンド
⑪パッサカーユ
ジャン・アンリ・ダングルベール作曲
⑫アティスの心地よい夢
ルイ・クープラン作曲
組曲イ調
⑬フローベルガ―氏に倣ったプレリュード
⑭愛らしき人のアルマンド
⑮ミニョンヌと呼ばれるクーラント
サラバンド
ピエモンテ―ズ

パヴァーヌ 嬰ヘ短調
中野振一郎(チェンバロ

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。