かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:クープラン クラヴサン作品全集8

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、クープランクラヴサン作品全集を取り上げていますが、今回はその第8集を取り上げます。

第8集はクラヴサン曲集も第4集に入るのですが、同時に「王宮のコンセール」の2台クラヴサン用も収録されています。この対比がじつはとても面白いのです。

クレジットを見ると面白いことが分かるのです。王宮のコンセール、つまり本来管弦楽組曲であるほうは組曲そのもので、クラヴサン曲集である、収録されている第3巻第14組曲と第4巻第27組曲は見た目では組曲だと分かりません。ロマン派的な標題音楽かと見まごうばかりです。

でも実は、どちらも組曲なんですね。で、バッハがクラヴサン、或はオルガンで実現した組曲こそ、クープランでは管弦楽のほうだった、ということが浮かび上がります。これは何を意味するのでしょう?

これは一つの推測ですが、バッハが触れたクープランの作品には、王宮のコンセールの2台クラヴサン用も含まれていたのではないか、というものです。東京書籍「バッハ事典」にはありがたいことに、バッハが持っていた楽譜の一覧というものがあるんです。索引で「クープラン、フランソワ」で引きますと。ばっちり出てきます。そこに記載されているのは、第2巻第6組曲「牧歌」が確実なものとして、そして不確実なものとして第9組曲アルマンド」トリオの合奏によるソナードと組曲「諸国の人々」から「神聖ローマ帝国人」の3点です。

此れだけでは、なかなかクラヴサン、つまりチェンバロあるいはオルガンで例えば「イギリス組曲」などを作曲するのはちょっと飛躍しているような気もします。勿論、バッハがこの3点から思い切ってチェンバロでやってみようとなった可能性もありますが、当時はイタリアが音楽先進地域であったことを踏まえますと、むしろ散逸して全く確認できないけれども、王宮のコンセールの2台クラヴサン用の楽譜を持っていたと考えるほうが自然です。

しかも、クープランが生きた時代は、実はバッハと重なっており、どこかでクープランの作品を聴いたと言う可能性もある訳なんです。勿論、クープランのほうが年上ですが。

フランソワ・クープラン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%AF%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%B3

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A8%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%BC%E3%83%90%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F

私達はつい、クープランとは生まれた年代も国も違うのだから接点がないと考えがちです。でも、活躍した時期は重なっていることが、ウィキで検索しても判るわけです。ここは重要だと思います。つまり、クープランとバッハは、ハイドンモーツァルトベートーヴェンの関係に似ていると言う訳なんです。

そうなると、なぜ本来バロック音楽の集大成の作曲家であるはずのバッハが、クラヴサン曲集のような作品を書かなかったのかということは、不思議に思ってしかるべきなんです。バッハはバロック音楽を、ドイツにおいては一部しか手渡していないってことなんです。それを補ったのが、国外旅行に出ることができた、ハイドンモーツァルトだったとすれば、なぜ前期ロマン派の作曲家たちがベートーヴェン楽聖と神のように崇め奉りながらも、じっさいにはモーツァルトに範をとったのかが、良く分かるのではないかと思います。その時ようやく、音楽の中心はイタリアからドイツと言うか、ハプスブルク家に移ったと言えるわけなのです。

この第8集に収録されている、クラヴサン曲集第3巻第14組曲の続きと、第4巻第27組曲組曲でありながらもしっかりと標題音楽になっていますし、王宮のコンセールは明るく伸び伸びしています。そのコントラストが至って自然なのも不思議なくらい素晴らしいです。この才能を前期ロマン派の作曲家たちが、自分たちの時代の音楽で実現したいと思うのは、私は自然だと思います。それだけ、クープランのこの音楽は先進性を持っています。ピアニストがピアノで表現したいと思うのもよく分かります。

ブーレイはアコーギクもしっかり使って、のびのびと演奏しています。そのつけ方も強迫的ではなく至って自然。息遣いが聞こえて来るかのようです。特に「王宮のコンセール」でもアコーギクを使って、実は普通の組曲であるはずの作品も、クラヴサンでアコーギクをつけても、また管弦楽で付けずに演奏しても、どちらも魅力的に聴こえるだけの才能をクープランが持っていると言うことを、はっきりと示していますし、それはブーレイの作曲者への賛辞なのかもしれません。王宮のコンセールで共演しているランジュレもアンサンブルを合わせ、単に楽しいだけではない、クープランの奥深い世界を現出させています。

喜びをもって演奏しているのが、聴いていて判るだけに、つい体を動かしてしまいます。でもそれが音楽と言うものですし、クラシックが単なる「精神性」という気高い内面性だけはなく、もっと身近なものも芸術へと昇華しているジャンルであると言うことを、この演奏は教えてくれます。




聴いている音源
フランシス・クープラン・ル・グランド作曲
クラヴサン曲集第3巻第14組曲(続き)
王宮のコンセール第3番
王宮のコンセール第1番
クラヴサン曲集第4巻第27組曲
ローランス・ブーレイ(クラヴサン
フランソワーズ・ランジュレクラヴサン、王宮のコンセール)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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