かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:クープラン クラヴサン作品全集7

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、クープランクラヴサン作品全集を取り上げていますが、今回はその第7集を取り上げます。

第7集では、クラヴサン曲集の他に、「王宮のコンセール」が間に挟まれているのが特徴です。以前「王宮のコンセール」は取り上げていますが、その時は管弦楽作品だったのを覚えておいででしょうか。

神奈川県立図書館所蔵CD:クープラン 王宮のコンセール1
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1557

で、なぜこの全集に入っているかと言えば、以前取り上げた通り、2台のチェンバロ用に編曲されたものがあるってわけなんです。それが間に挟まれています。というより、この第7集では導入として使われています。

全体的には「王宮のコンセール」が違和感がなく、むしろアクセントとなって、「クラヴサン曲集」のほうを引き立てています。

その引き立てられているクラヴサン曲集では、最も様式的に優れていて面白いのは、第3巻第13組曲です。組曲の中に変奏曲が挿入されており、むしろ変奏曲に導入がついたような形になっています。

変奏曲にも標題が付いており、この全集では「フランスのフォリア 別名ドミノ」とされていますが、「フランス人気質」と訳されることもあるようです、以下のブログのハイドシェックのピアノ演奏の解説では、そのようになっています。

just beside you
フランソワ・クープラン/「フランス人気質またはドミノ」
http://ramscript.exblog.jp/7881216/

でも、私はこの訳よりも、全集の「フランスのフォリア」という、外来語のままのほうを採用します。なぜなら、上記ブログで実は宇野(恐らく功芳)氏が重要な指摘をしているからです。

『宇野氏のブックレットによると、「ドミノとは舞踏会で付ける仮面のこと」』

これが実際にブックレットに載っていたと仮定すれば、ではフォリアとはどういう意味でしょう?実は、元々はスペインの舞曲を指すのです。

フォリア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AA%E3%82%A2

つまり、スペインの舞曲を使って、変奏曲にしており、その変奏一つ一つに標題が付いている。その標題がすべて舞踏会でつける仮面の様子となっていると言う事なんです。

実際、音楽はかなり騒がしいものになっており、当時の舞踏会の様子を比喩したものと解釈できます。となれば、単に「気質」というような感じではなく、舞踏会で多少騒がしい様子が想像できるように作曲されたものだとは、最低限言えるわけです。

当時の作品は、サロンで演奏されることが多かったことはすでに何度も述べていますが、それが舞踏会ということもあるわけです。この第13組曲が舞踏会用の組曲だったとしても、何ら不思議はありません。ですから単に「気質」という絵画的な表現では、表現が狭まれる可能性がある訳なので、私は採用しないのです。

バロックの時代は、今からは想像もできないくらい、音楽と舞踊が密接な時代です。確かに、バロック時代の音楽の「消費者」は王侯貴族です。でも彼等も一人の人間です。踊りもするわけです。そのために音楽も必要だったわけです。もともと、組曲は幾つかの舞曲を集めたもので、後世何を何曲目に使うかが定まりました。ですから、組曲そのものが舞踏会で使われたとしても、さほど不思議なことではありません。

バロック・ダンスというものが実は存在し、研究している人も、オーソリティも我が国にいるくらいなのです。それを知っているのと知らないのとでは、この第13組曲へのアプローチは全く違ってくると言っていいでしょう。その点では、私はこのブーレイの演奏だけではなく、ハイドシェックの演奏も聴きたくなったくらいです。果たして、ハイドシェックはこの第13組曲を舞曲として弾いているのか、それとも違うのか。興味は尽きません。

少なくとも、ブーレイは舞曲として弾いています。その上で、かなり激しい部分もしっかり弾いていて、まさに「フォリア」なのだということをしっかりと認識している演奏だと思います。でも聴けば余計な贅肉はそぎ落とされ、すっきりとしており、その上でどこか踊り出しそうになります。

他の組曲にしてもそうですし、「王宮のコンセール」は共演のランジュレとともに、気品ある演奏をしていますが、これもどこか舞曲風。もともと王宮のコンセールがどのような目的で作曲されたかも、浮かび上がる感じです。でも頭でっかちではなく、体で感じられるようになっている。優れた演奏だと思います。




聴いている音源
フランシス・クープラン・ル・グランド作曲
王宮のコンセール第4番
クラヴサン曲集第3巻第13組曲
クラヴサン曲集第3巻第19組曲
クラヴサン曲集第3巻第14組曲
ローランス・ブーレイ(クラヴサン
フランソワーズ・ランジュレクラヴサン、王宮のコンセール)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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