かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:ハイティンクとロンドン・フィルによるリスト交響詩全集4

東京の図書館から、シリーズで取り上げている小金井市立図書館のライブラリである、ハイティンク指揮ロンドン・フィルによるリストの交響詩全集、今回が最終回の第4集です。

フン族の戦い」「理想」「ゆりかごから墓場まで」そして交響詩とは言えませんが、それに近い作品である「メフィストワルツ第1番」が収録されています。特に「ゆりかごから墓場まで」は有名だと思うのですが・・・・・

フン族の戦い」は3つ音源を持っていますが、ナクソスの「バトル・ミュージック」アルバムの演奏に匹敵するかそれ以上に勇壮で素晴らしい演奏がこのハイティンク指揮ロンドン・フィルの演奏だと思います。が、この作品、じつはかなり複雑なリストの立ち位置を、素直に表現したものでもあります。

ja.wikipedia.org

ハンガリー愛国心を持つならば、通常ならフン族のほうに肩入れするはず、なのですが、この作品はむしろコラールが勝利の音楽として使われているのです。ということは、フン族が戦った西ローマ帝国側に立っている、ということになるんですね。けれども、ハンガリーという国名は、「フン族の国」って意味です。これ、かなり意味深な作品です。

ですが、この演奏ではあえて、勇壮な音楽によって西ローマ帝国側に立つ作品を際立たせています。現在のヨーロッパ人にとって、キリスト教がいかに基礎的なものになっているかを、よくうかがわせる作品だと思います。さて、リストにとって、異教徒とはいったい何?それが日本の神道だったとしたら、私たち日本人はこの作品の鑑賞に果たして耐えられるでしょうか?

作曲された1855年~57年という時代、日本は関係ないと思うでしょうが、そんなことはありません。ヨーロッパに大量に浮世絵が流れ込み始めた時代がこの時代です。いや、始まったのではなくすでにスタンダードだったと言っていいでしょう。その動きに、果たして愛国主義的理想を掲げていたリストが、簡単に同調するでしょうか?

国民楽派の音楽が好きな人たちは、愛国主義的思想を持っている人が傾向として多いのですが、しかしこの作品が生み出された背景が、日本などアジアに対する警戒心だっとは言えないでしょうか?そうでなければ、自分はハンガリー人であると思っていたリストが、その国を作った民族を敵視するでしょうか?ウィキにはその説明があえて抜かれているような気がしてなりません。その証拠が、このハイティンクロンドン・フィルの勇壮である意味単純な、感動的な演奏であるとは言えないでしょうか?

確かに、私はこの演奏が大好きですが、一方でアジア蔑視が背景にあるかもと思うと、単純に喜べない自分がいます。

それよりは、ほかの3曲のほうが素直に喜べますし、楽しめます。理想に燃える精神を素直に作品に表現した「理想」、人生を3つに分けて賛美した「ゆりかごから墓場まで」、そしてメフィスト・ワルツ。どれも明快で素晴らしい演奏です。

明快で素晴らしいからこそ、作品の背景を知ってしまうと、ちょっとだけなえてしまうのが「フン族の戦い」です。批判的視点とはどういうものなのかを、この演奏によってハイティンクから突き付けられているような気がしてなりません。あなたはこの曲で酔うことで、何を失うのか?と・・・・・さすが、図書館のライブラリだと思います。

 


聴いている音源
フランツ・リスト作曲
交響詩第11番「フン族の戦い」
交響詩第12番「理想」
交響詩第13番「ゆりかごから墓場まで
メフィスト・ワルツ第1番
ベルナルト・ハイティンク指揮
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

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