かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:中央大学管弦楽団第90回記念定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和5(2023)年12月19日に聴きに行きました、中央大学管弦楽団の第90回記念定期演奏会のレビューです。

私自身の卒業大学であるがゆえに、聴き続けている中央大学管弦楽団定期演奏会ですが、この12月で第90回の節目を迎えるということで、ぜひともと足を運んだ次第ですが、うれしいことに、ご招待をいただきました!と言っても私が特別ではなく、申し込めばしていただけるのですが、年末を迎え、私自身も様々な出費が予定されていたことから、お言葉に甘えさせていただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

さて、毎年12月の定期演奏会は、都心のホールで行うことがいわば恒例となっています。今回は池袋の東京芸術劇場。私自身もベートーヴェンの第九を歌ったこともあるホールです(その時は、世界の少数民族テノールが足りないということで、ほぼぶっつけ本番でした)。とても響きのいいホール。自分の声が聞こえないこともあるので、それを前提に周りと合わせないといけません。いいホールというものは時として、演奏者には厳しいこともあります。

そんなホールで、中大オケ(以下このように略します)は、素晴らしい演奏を披露してくれました。まるでおいしいディナーを味わったような。え?その日はじゃあ夕食抜いたんですかって?いえいえ、ホール至近のサイゼリヤでしっかりいただきましたよ!中性脂肪が増えてきたのでデザートは無しですが。

プログラムは、以下の通りです。

チャイコフスキー 「眠りの森の美女」よりワルツ
ブラームス 交響曲第1番
チャイコフスキー 交響曲第5番

なんとてんこ盛りな・・・ブラームス交響曲第1番だけでもおなか一杯ですが、そのうえでチャイコフスキー交響曲第5番という、ド級のディナーが待っているという・・・若いっていいですね。普通だったら、ブラームス交響曲第1番ではなくて他の管弦楽曲を入れるところです。しかし、頑張ったみたいです、学生。

そういえば、プログラムをふと見てみれば、最近は中大生だけでなく、近隣の大学からも参加しているようです。確認できたのは、東京女子医大帝京大、明星大(中大のすぐお隣)、日本女子大実践女子大、法政大です。さらにOB・OG(おそらくクレセント・フィル団員)、さらに今回は賛助、つまりエキストラも入っています。いよいよ少子化が進んでおり、中大オケも存在の在り方を考え始めたように思います。いい傾向だと思います。できれば、学生のアマチュアオケに発展するといいかもと思います。さらに言えば、中央大学だけではなく、域内の大学が協力して援助する体制があればいいと思います。今回交響曲が2つ入ったのも、今や中大生だけではないという側面を反映したものだったのかもしれません。ブラ1も、チャイ5も、有名な曲ゆえに、その大学にオーケストラがなければ一度は弾いてみたい曲ですしね。その中心として、中央大学が役割を果たしているのであれば、文化の発展に寄与することなので、それもまた素晴らしいこと。卒業生として誇りに思います。

まずは、チャイコフスキーの「眠りの森の美女」より、ワルツ。ディズニーでも使われた音楽なのでなじみ深い曲ですね。その音楽が、素晴らしい響きとアインザッツで始まるを聴いて、思わず身震いしました。いやあ、本当にうまくなりました・・・これもまた、中大生だけではないことも理由なのかもしれません。中大生だけで結成できないことを嘆く人もいるかもしれませんが、確かに私も卒業生として寂しいところはありますが、しかし外の血が入ったことでさらによくなることもあります。少なくとも、今回の演奏会ははっきりといい方向へ向かっていたと思います。

2曲目のブラームス交響曲第1番。テンポ的には保守的なゆったりとしたテンポですが、所々で熱が入っていく様子も見えます。重厚な和声を存分に鳴らし、歌う演奏はまさにブラームスの芸術の内面へと至るような演奏に聴こえました。弦のやせた音も聴こえてこないですし、管楽器のアインザッツも安定しています。ベートーヴェンの「亡霊」と闘いながら、自らのアイデンティティを突き詰めてブラームスが書きあげた第1番。その精神性に寄り添うような、感動的な演奏でした。滔々たる演奏に酔い知れました。

でも、まだ前半が終っただけ、なんですよね、これで。

ふと見てみれば、18世紀型の対向配置を取りつつも、低弦楽器が左、つまり第1ヴァイオリンのほうに配置されています。普通は第2ヴァイオリンのほうに(つまり右に)配置しますが、これは指揮者の佐藤氏の意向だったのでしょうか。そのあたりは取材できればしたかったと思います。少なくともプログラムには記載がありませんでした。おそらく、直前になって決めた配置かなとおもいます。こういう試行錯誤が、ライブを聴きに行く醍醐味でもあります。私は3階席のやや左側、つまり第1ヴァイオリンのほうに座りましたが、低弦楽器がビンビン響いてくるのは素晴らしかったです。正面だとなお、左から混然一体となって響いてくる低弦楽器が聞こえ、感動的だったのではと思います。

その効果は、後半のチャイコフスキー交響曲第5番でもいかんなく発揮されます。チャイコフスキーの精神状態が必ずしも安定しているとは言えない状況で作曲された交響曲第5番に共感するかの如く、気合の入り方がブラームス以上。相当気持ちが入っていました。特に全体的に、ppからffへとクレッシェンドしていくさまが、まるで人が気持ちを吐露しているかのよう。チャイコフスキーの第5番では、私は第4楽章で泣いてしまいました。人の魂を震わせる演奏は、そもそもが学生自身が、曲に対して魂レベルで共感しているが故ではないかと思います。

チャイコフスキー交響曲第5番と言えば、私が中央大学に入学してすぐに開催された中大オケの定期演奏会でメインで演奏されたものです。指揮者は先代の小松一彦氏。その30数年前に比べれば、目の前の学生たちは本当に素晴らしい演奏をしています。ホールも当時は調布グリーンホールでしたし。当時、大学に入学して、様々な思いを持っていた私の心に、つたない演奏も響いたものですが、今回の演奏はその演奏をはるかに超えていました。さすがに疲れてきたのか、弦にやせた音も散見し始めたのですが、それでも気持ちが入っている演奏が、私の魂を震わせたのでした。

学生オケは、毎年4年生は卒業して、団員が入れ替わります。そのハンデを背負っても、一定のレベルをたたき出すオーケストラに成長したことは本当に誇らしく思います。次の定期演奏会もぜひとも足を運びたいと思います。さて、来年の5月の第91回では、どんな演奏を聴かせてくれるのか。今から楽しみです。

 


聴いて来たコンサート
中央大学管弦楽団第90回記念定期演奏会
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲
バレエ「眠りの森の美女」よりワルツ
ヨハネス・ブラームス作曲
交響曲第1番ハ短調作品68
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲
交響曲第5番ホ短調作品64
佐藤寿一指揮
中央大学管弦楽団

令和5(2023)年12月19日、東京豊島、東京芸術劇場コンサートホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。