かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:中央大学音楽研究会管弦楽部第79回定期演奏会を聴いて

久しぶりのコンサート雑感、今回は平成30年5月27日に聴きに行きました、中央大学音楽研究会管弦楽部の第79回定期演奏会を取り上げます。

所謂中央大学管弦楽団(中大オケ)は、私の母校でもある関係上、このブログでも頻繁に取り上げていますが、前回は1年前の定期演奏会でした。

コンサート雑感:中央大学音楽研究会管弦楽部 第77回定期演奏会を聴いて
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1585

会場はこの時と同じ、オリンパスホール八王子(八王子市文化会館)。昨年とどうしても比べてしまう部分はありますが・・・・・

曲目は、以下の通りです。

�@ウェーバー 歌劇「魔弾の射手」序曲
�A山田耕作 交響曲「かちどきと平和」
�Bブラームス 交響曲第2番

ウェーバーは、諸藩の事情で間に合うことができませんでしたが、最後のちょっとだけはスピーカーから漏れ聞く音がきけたのがよかったです。何時もの通り、素晴らしいアンサンブル!

それはそうなのですが、ホールに入ることができた2曲目の山田耕作交響曲以降、ちょっと気になる点がありました・・・・・

それを述べる前に、山田耕作交響曲作曲していたんですかという声が上がりそうです。「赤とんぼ」でも有名な人なので、日本ではむしろ唱歌の作曲者として知られていると思いますが、日本のオーケストラの歴史を語る上では欠かせない指揮者であり、クラシック音楽の作曲家だったのです。

山田耕筰
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E7%94%B0%E8%80%95%E7%AD%B0

録音としてはナクソスのものが有名で、それで山田がクラシック音楽を作曲していたことを知っている人も多いかと思いますが、昔から学校の副読本などには、山田耕作の作品として様々な管弦楽作品などが挙げられていたんです。ただ、山田耕作は軍歌や当時の政府・NHKなど戦争を推し進める勢力の要請にこたえる作品を数多くのこしてもいるせいで、戦後は作品のほとんどは顧みられない状況にありましたし、わたし自身も高校時代は日本の作曲家の作品を、仮にその作曲家が戦争に加担していなくても聴きたいなど思ったことがありませんでした。

ですが今では、日本人作曲家への興味もたくさんあるので、今回この作品を中大オケが演奏してくれたのはとてもよかったと思います。というのは、この「かちどきと平和」は、まさにナクソスのCDをディスクユニオンで泣く泣くあきらめたものだったからです。

そもそも、「かちどき(正確には漢字で「勝鬨」。感のいいかたは、勝鬨橋と同じ字だと気付いた方も多いのでは)と平和」は、山田がドイツ留学時、音楽学校の卒業作品として作曲したものなのです。

勝鬨と平和
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8B%9D%E9%AC%A8%E3%81%A8%E5%B9%B3%E5%92%8C

解説を読んで、日本的な「赤とんぼ」のイメージとは遠いなと思った方も多いのではないかって思います。それは卒業作品ゆえに、クラシックの音楽史を踏まえたものだからです。ですので日本語の題名になっており、途中日本的な旋律もありつつも、基本ドイツ後期ロマン派の影響を強く受けている物になっていると言うわけです。

それを踏まえているのかなあって思ったのが、アンサンブルは素晴らしいんですが、ノリノリではないんですよ、オケが。指揮者の佐藤先生はノリノリなのに、学生の「体の」反応がいまいち、なんですよねえ。

いや、いい演奏だし、佐藤先生のタクトには音楽としてはしっかり反応しているんです。ただ、そこでいっぱいいっぱいなのが分かるんです。学生オケだから仕方ない部分はあるかと思いますけれども、ただ・・・・・

メインのブラ2では、打って変わって、体をゆすりながら演奏しているじゃありませんか!ですから、「かちどきと平和」の違和感は抜けないんです。

ですが、ブラ2でも、それほど体をゆすっているわけじゃありません。指揮者に対応して体をゆすってまで音楽を表現する喜びを表していたのはコンサートマスターとトラで入っている幾人かだけだったのが、とても残念だったのです。アンコールのブラームスハンガリー舞曲第1番はもっと多くの団員が体をゆすっていたのですから。

ですから、これはこう推測できるでしょう。演奏するのにアップアップだった・・・・・

この春先の演奏会ですから、新入生が結構いたのでしょう。それゆえに、それほど体が揺れるまでは至らなかった、と。でもです、フルートはずいぶんどの作品の演奏でも揺れているんです。あー、楽しんでるな〜と判るんですよね。となると、新入生が多くて演奏をするのがやっとという人が多かったという分析にしかならないんです。これが残念でもあり、次への期待でもあります。「かちどきと平和」では伸びのある金管が聴けましたし、ブラ2では第1楽章冒頭はppからffまでがしっかりと演奏し別けられており、それが繊細な表現へとつながっていたからです。

この曲目になったのはどういういきさつかはわからないんですが、ブラームスの第2番、と言うよりはブラームスの1番以外の交響曲3曲は、精神性というよりは、ブラームスの、ベートーヴェンという重荷を下すことができた喜びに満ちているんです。特にブラ2は私などは「ブラームスの田園交響曲」と呼んでおり、魂からのよろこびが表現されている作品だと認識しています。となると、もっと体をゆする必要があるんです。まさに、「舞踏性とカンタービレ」が特色である作品だと言えるのですから。

交響曲第2番 (ブラームス)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC2%E7%95%AA_(%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%B9)

学生にメッセージしておきたいのですが、ブラームス交響曲を、所謂「精神性」というどこか神聖で重厚なものと考えるのは、第1番だけにしておいた方がいいと思います。むしろ、第2番以降は、ベートーヴェンと同じように交響曲を作曲してシンフォニストとして認められるんだと言う、ブラームスの「強迫的承認欲求」がなく、素のブラームスの、魂からの喜びが表現されていると考えてください。それなら、ベートーヴェンのような障害者と異なり、ブラームスは健常者ですから、共感できる部分が沢山あると思うんです。スコアリーディングをしながら、ブラームスさん、楽譜を見て私はこう思うんですが、あなたはどうだったのですか?と対話してみてください。そうすれば、共感で自然と体が動くはずです。

自分たちは、演奏によって、ブラームスと「ハグ」している・・・・・そんな感性を持ってほしいんです。だって、アンコールの「ハンガリー舞曲」は出来ているんですから。それができれば、中大オケはさらに一段上のオケになれると思います。そしてこのアプローチは、後輩へと簡単に手渡すことができます。ですから、中大オケの表現力の向上・維持に役立つのです。是非実践してみてください。

それだけで、次の演奏会ではガラっと変るはずです。その第80回記念演奏会は仕事のシフトの都合上、いけない可能性が大きいです。もし来年の春が土曜日なら、多分今の情況では大丈夫だと思いますから、是非とも聴きに行きたいと思います。どれほど音楽を魂で感じ体で表現しようとし、音楽となってホールを包み込んでいるか、楽しみです!




聴いて来たコンサート
中央大学音楽研究会管弦楽部第79回定期演奏会
カール・マリア・フォン・ウェーバー作曲
歌曲「魔弾の射手」序曲
山田耕筰作曲
交響曲ヘ長調「かちどきと平和」
ヨハネス・ブラームス作曲
交響曲第2番ニ長調作品73
佐藤寿一指揮
中央大学音楽研究会管弦楽

平成30年5月26日、東京八王子、オリンパスホール八王子

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




このブログは「にほんブログ村」に参加しています。

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ 合唱・コーラスへ
にほんブログ村