かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:中央大学音楽研究会管弦楽団第81回定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和元(2019)年5月24日に聴きに行きました、中央大学管弦楽団の第81回定期演奏会を取り上げます。

学員だからこそ聴きに行く中大オケの定期演奏会。第81回は都心から郊外へ回帰し、オリンパスホール八王子がロケーションでした。まあ、学生オケにとってはとても大きいホールなので、表現するのが大変だろうとは思うんですが、結構このホールだといい演奏をするんで、楽しみではあります。

今回のプログラムは、以下の通りでした。

�@ドビュッシー 小組曲(アンリ・ビュッセル編曲)
�A伊福部昭 交響譚詩
�Bカリンニコフ 交響曲第1番

全体的なアンサンブルを言えば、今回の演奏はかなり高ったといえましょう。本当に心配ないオケへと成長したなって思います。4年でメンバーが変わるのにも関わらず、です。それとも、現メンバーのレヴェルが高いのか・・・・・

トラは、主にクレセント・フィルのメンバーが入っているので、その点も安心できる要因なのだと思います。この「学生がクレセント・フィルでも演奏する」というスタイルはいいと思います。特に中大オケでその効果が高いと思います。そのうち、クレセント・フィルのほうが学生に引っ張られるかも・・・・・

まずはドビュッシー。そもそもはピアノ曲である作品を、アンリ・ビュッセルが管弦楽へと編曲したものですが、ドビュッシーはピアノ作品を書いてもそのあとで管弦楽へと編曲するつもりの時もあるので、ピアニストにとっては結構難しい部類に入るのです。

ドビュッシー :小組曲

Debussy, Claude Achille:Petite suite
https://enc.piano.or.jp/musics/3022

組曲 (ドビュッシー)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E7%B5%84%E6%9B%B2_(%E3%83%89%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%BC)

例えば、私が通っている「クラシック音楽道場」主宰の瀬川玄氏が、どれだけ苦労してドビュッシーを弾いていることか・・・・・けれどもです。中大生はいとも簡単に、ふわっとしたドビュッシーの「象徴主義」を演奏してしまったんですよね。いやあ、びっくりです・・・・・

実は小組曲は、乗った中央線が遅延してしまったため完全に間に合わず、ホワイエでスピーカー越しで聴いていたのですが、オリンパスホール八王子のスピーカーが結構いいものらしく、音がクリアなんです。まるでホールにいるかのよう。ですからほとんどホールで聴いているようなもの。その演奏が本当にふんわりとかつ生命力に富んでいるんですよね〜。確かにドビュッシーの作品としては簡単なほうかもしれませんが、かといってではアマチュアで弾けるのかって話です。それを、同じアマチュアであるはずの中大生が見事に演奏してしまったわけです。

クラシック音楽道場に集いし淑女たちの中には、ピアニストもピアノの先生もいます。そんな人たちが「ドビュッシーは難しい」っていう中で、見事なアンサンブルと生命力と描写、だったんです。いやあ・・・・・正直言って、この演奏はわが誇りです。中央大学を卒業したという・・・・・クラシック音楽道場に集まるその淑女たちの中には音大出身もいるんですよ?そんな人たちを追い越してしまった・・・・・これが誇りでなくて何でしょうか。音楽大学で真に必要な教育とは?というエントリだけで一つ立てられそうな演奏でした。下手すれば以下の洗足音大の演奏に比肩するくらいです。

C.ドビュッシー / 小組曲
https://www.youtube.com/watch?reload=9&v=6G7-Z0tXtSQ

次に、伊福部の「交響譚詩」。ここからはホール内で聴けたわけなのですが、ホールで聴けて本当に良かった演奏でした。オケがノリノリなのがまるわかり!伊福部は最近の学生は好みなんだなって思います。そういう時代になったことは喜ばしいと思います。

で、この「交響譚詩」。伊福部らしい土臭さと繰り返しが生命力の源ですが、その点を存分に表現できていたのが素晴らしかったと思います。ただ、今レファレンスで新交響楽団(これもアマチュアオケですが)の演奏を聴いて振り返ってみますと、新交響楽団のほうが歌っているんですよね。それは若いのにあまり体を動かせていないという、最近の中大オケの問題点が浮かび上がった演奏だったとも思います。

交響譚詩
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E8%AD%9A%E8%A9%A9

元気なのはいいと思います。そこにもう一つ、抒情が加わると最高だって思うんです。人が死ぬって経験がまだ少ないからかなあって思ったりもします。ノリノリの生き生きとした部分は私もノリノリになったので非常に楽しかったのですが、さすがに新交響楽団さんの演奏と比べると、まだ伸びしろありだと思います。

伊福部昭 交響譚詩 第1譚詩
https://www.youtube.com/watch?v=zuBAyfAjZcU

伊福部昭 交響譚詩 第2譚詩
https://www.youtube.com/watch?v=802Q9p6IypM

※私が聴いているのも、神奈川県立図書館で借りてきた同じ音源です。

神奈川県立図書館所蔵CD:伊福部昭卒寿記念シリーズ1
https://yaplog.jp/yk6974/archive/1804

上記エントリで、私は最後こう述べていますが、同じことを今回プログラムの解説者も述べていたのには、まさに共感します。

「伊福部の作品ほど、日本的でかつ世界的にも通用する音楽はないからです。所謂「残響のいいホール」で収録されたこれら3つの作品は、単に躍動することだけが生命力ではなく、そこに魂や精神も宿ることを、アマチュアオケが演奏で証明しているのです。プロオケはいったい何やってんだ!と批判するほうが先なのではないかなあって思います。勿論私は、それほど批判しませんが、もっと日本のプロオケこそ、伊福部の作品を一過性で済ませるのではなく、生誕100年を過ぎた今こそ、普通にコンサートピースに乗せるべき時代が来たと思っています。」

そしてメインが、カリンニコフ。有名な演奏はナクソス盤のクチャル指揮ウクライナ国立響と、シャンドス盤のネーメ・ヤルヴィ指揮ロイヤル・スコティシュ・ナショナル管弦楽団ですが、私はヤルヴィ指揮ロイヤル・スコティシュ・ナショナル管のを持っています。その演奏は透明感を前面に出した演奏なのですが、当夜、この演奏を超えたと私は判断しました。透明感などみじんもない反面、なんと生命力に満ちていることか!

交響曲第1番 (カリンニコフ)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC1%E7%95%AA_(%E3%82%AB%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%95)

若きカリンニコフの情熱と、チャイコフスキーに範をとったような運命主題の繰り返し。まるで伊福部のオスティナートのよう!目くるめく万華鏡は何時しか雄々しい生命力の奔流となりホールを満たしていきます。こんなにもみずみずしく、生き生きとした作品だったのか!と目からうろこです。

アマオケでこんな演奏が聴けるなんて、なんて幸せなんでしょう!指揮者佐藤氏の解釈とタクトは毎度さえているなあって思います。本来佐藤氏ほど歌わせる指揮者はいないと思うんですが、学生がそこについていけてないんですよね。もっと歌おう!そう、第九の歌詞にもあるじゃないですか。「もっと心地よい歌を、共に歌おう!」

O Freunde, nicht diese Töne !
sondern laßt uns angenehmere anstimmen,
und freudenvollere.

おお、友よ! このような調べではない!
そんな調べより、もっと心地よく歌い始めよう、
喜びに満ちて。

(C) 関西シティフィルハーモニー交響楽団
(アマチュアオーケストラ,大阪市
ベートーヴェン 交響曲第9番
− 歌詞の日本語訳 −
http://kcpo.jp/legacy/33rd/B-Sym9/Sym9-trans.html

伊福部も、カリンニコフも、この第九の歌詞と一緒だと思うんです。ヤルヴィとロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管の演奏は素晴らしいものですが、歌いすぎているきらいもあるなあと、今レファレンスで聴いていて思います。その生命力抜群の点では、今回の中大オケのほうが勝っていたと思います。それほど歌いすぎないほうがカリンニコフの作品には生命が宿るんだと、教えてもらったような気がします。となるとむしろ、ナクソス盤も聴いてみたいですし、flacで再版されているN響の演奏も聴いてみたくなります。こういういろんな演奏が聴いてみたい!と思わせる演奏ができることは本当に素晴らしいことだと思いますし、中大オケのレベルの高さを物語るものだと思います。ただ、伊福部で明らかになった問題点を、次の演奏会でどのように解決していくのかも、また楽しみだと思います。

カリンニコフで喜びに満ちた演奏をした、その実力は自信をもっていいと思います。だって、アンコールの「ファランドール」も最高でしたし。もっと体を動かせれば、もっといい演奏ができる力を持っていると信じています。




聴いてきたコンサート
中央大学文化連盟音楽研究会管弦楽部 第81回定期演奏会
クロード・ドビュッシー作曲
組曲(アンリ・ビュッセル編曲)
伊福部昭作曲
交響譚詩
ヴァシリー・カリンニコフ作曲
交響曲第1番ト短調
佐藤寿一指揮
中央大学文化連盟音楽研究会管弦楽団

令和(2019)年5月24日、東京八王子、オリンパスホール八王子(八王子新文化会館)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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