かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:伊福部昭卒寿記念シリーズ1

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、伊福部昭を特集していますが、今回から2回に渡りまして、伊福部昭の卒寿記念のコンサートを取り上げます。

勿論、伊福部はもうなくなっていますが、これはまだ生前に収録されたアルバムでして、2枚組です。しかも、実はオケはアマチュア・オケなんです。

収録されているのはもうすでに御紹介した作品がほとんどで、このブログで初めてになるのは交響譚詩だけです。

交響譚詩
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E8%AD%9A%E8%A9%A9

兄を偲んで作曲されたと言いますが、伊福部の作品が持つ野性的な表情とは一線を画し、むしろ音画と言ってもいいような作品です。

実は、このアルバムのこの第1集は、指揮者が3曲それぞれで異なります。「オーケストラとマリンバのための《ラウダ・コンチェルタータ》」は前回ヤマカズさんの演奏を取り上げていますが、ここでは作曲家の石井眞木。ヤマカズさんが生命力に焦点を当てたかと思えば、石井氏はむしろ、和声を存分に聴かせ、日本的な部分を前面に押し出しつつ、端正な解釈からリズム感を見事に押し出しています。

そして、この演奏は実は、ロケーションがベルリン・フィルハーモニー。ドイツ音楽本流の地で、とても日本的な作品が、伊福部とはまた異なる作品としては西洋と東洋が融合したような作品を書く石井氏のタクトによって表現される・・・・・まさに、アウフヘーベンしていると言えるでしょう。伊福部の野性的な部分が、実は日本的新古典主義でもあるといういことを私たちに教えてくれますし、また当地の聴衆もそのエスニックな部分にオケと共に熱を帯び、割れんばかりの拍手につながっています。

演奏する新交響楽団は最初のアインザッツが合わなかっただけで、後はこればアマオケなのか?と思わせる素晴らしい演奏に徹しています。残り二つは東京芸術劇場での演奏で、日本狂詩曲の指揮が小泉和裕、交響譚詩が原田幸一郎と、指揮者専業の人と演奏家兼指揮者による演奏となっています。特にさすがは専業の小泉氏。オケはアマチュアなのに、伊福部の作品が持つ野性的生命力を存分に鳴らさせていますし、一方原田氏は、作品の背景を考慮してまるで絵画のような解釈。

それは実は、伊福部の作品がじつは多様性に満ちていることを教えてくれる結果になっています。勿論、一貫した制作姿勢は様式に表れているものの、伊福部と言えば日本組曲ゴジラにおけるテーマなどで躍動感あふれる音楽を私たちは創造してしまいますが、伊福部の作品は実に多彩なのです。日本的であるためにあえてソナタ形式からそむけた伊福部ですが、それによって自然と20世紀音楽の影響を受け、その影響がいい方向で現出されているんです。その側面をズバリ取り上げたのがこのアルバムの特徴だと言えます。

その意味で、1曲目の「オーケストラとマリンバのための《ラウダ・コンチェルタータ》」は特に重要な演奏だと言えるでしょう。そんな機会を、アマオケがやってしまう・・・・・これが真の日本の底力だと私は思っています。例えば、東響なら、ミューザでどんな響きを出すでしょう?けれども、取り上げられることは稀です。それはそれで別に悪いことではありませんが、東響を持ち上げて他のオケを蔑むのであれば、この日本的でかつ世界的にも素晴らしい作品たちを、新響さん以上に素晴らしい演奏をする必要があるのではないかなあって思います。

なぜなら、伊福部の作品ほど、日本的でかつ世界的にも通用する音楽はないからです。所謂「残響のいいホール」で収録されたこれら3つの作品は、単に躍動することだけが生命力ではなく、そこに魂や精神も宿ることを、アマチュアオケが演奏で証明しているのです。プロオケはいったい何やってんだ!と批判するほうが先なのではないかなあって思います。勿論私は、それほど批判しませんが、もっと日本のプロオケこそ、伊福部の作品を一過性で済ませるのではなく、生誕100年を過ぎた今こそ、普通にコンサートピースに乗せるべき時代が来たと思っています。




聴いている音源
伊福部昭作曲
オーケストラとマリンバのための《ラウダ・コンチェルタータ》
日本狂詩曲
交響譚詩
安倍圭子(マリンバ
石井眞木、小泉和裕原田幸一郎指揮
交響楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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