かんちゃん 音楽のある日常

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コンサート雑感:カルペディエム・コレギウム・ムジクム2024を聴いて

コンサート雑感、今回は令和6(2024)年5月18日に聴きに行きました、カルペディエム・コレギウム・ムジクム2024を取り上げます。

カルペディエム・コレギウム・ムジクムは、正式には団体名ではなく、2月に聴きに行った第九を演奏したカルペディエムフィルハーモニーバロック音楽を演奏するときの一形態です。

www.carpediemphilharmony.com

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この団体が、バロック音楽を演奏したらどんなものになるのかが楽しみで、チケットを取りました。場所は、東急田園都市線青葉台駅前の横浜市青葉区民センターフィリアホール。実はここ、私自身も舞台に立った場所です。収容人数は500名ですが、それゆえに室内楽や室内オーケストラの演奏にはぴったりのホールです。山田和樹音楽監督を務める横浜シンフォニエッタもこのフィリアホールを拠点にしている団体です。

私が歌ったのは、モーツァルトの「戴冠ミサ」。しかも、貧乏合唱団だったので室内楽程度よりもさらに小さいアンサンブルででした。ゆえに、小さい編成であればあるほど、このホールは演奏しやすいことを知っています(とはいえ、横浜シンフォニエッタも演奏するホールなので交響曲もしっくりきます。私はPMF合唱団でベートーヴェンの第九を聴いています)。

今回は、バードとバッハ、そしてブクステフーデの作品が5つ演奏されました。

①バード 3声のミサ曲
②バッハ カンタータ第78番「イエスよ、汝わが魂よ」
③バッハ チェンバロ協奏曲第1番
④バッハ ブランデンブルク協奏曲第5番
⑤ブクステフーデ 我らがイエスの御体


え?こんなに演奏したら3時間以上かかるのでは?と思われるかもしれませんが、実はこのコンサートは2時間。実は、このコンサートは後から予定を入れたのですが、2時間だからこそ選択したのです。この後に、他のコンサートがすでに予定されていましたので・・・そっちのほうが先に予定を入れており、最優先にしたかったのもあります。

実は、この5つのうち、全曲演奏されたのはバッハのチェンバロ協奏曲第1番とブランデンブルク協奏曲第5番の二つだけ。あとは抜粋でした。ですので2時間で終わったということになります。結果的には10分オーバーでしたが・・・あとの予定が大変でしたが、まあ、もしかするととは思っていましたので、大丈夫でした。そっちについては、また別のエントリで。

さて、まず第1曲目のバード。3声のミサ曲はほんとうにシンプルな曲です。なのに演奏されたのはキリエとサンクトゥスの2曲。正直言えば、2曲では物足りかなったです。つまりは、それだけ素晴らしい演奏だったということになります。美しく力強く繊細な合唱は、第九を聴いた時にも感動しましたがここでも感動的。特にffとppの時の発声がしっかりしているのが素晴らしい!

次はバッハのカンタータ第78番。ここで管弦楽も入るのですが、気が付くと合唱でも見た顔が・・・なんと!この団体、管弦楽をしている人も歌っているのです!しかも、実はこのコンサート徹頭徹尾指揮者がいません。それでアンサンブルをしてしかもほころびが一切ありません。この第78番は全部で18人での演奏で、通奏低音であるチェンバロに合わす感じで演奏されているのです。まさにバッハの時代とほぼ同じスタイルなのです。これをアマチュアがやるのか!と。おそらくアマチュアと言っても音大生、あるいは音大出身ではないでしょうか。もうこの2曲だけでも鳥肌が立ちます。この2曲目も演奏されたのは第1曲目と第7曲目のコラール。第78番はいわゆる「コラール・カンタータ」なので、その構造を特徴づける2曲が選択されたということになります。

3曲目はバッハのチェンバロ協奏曲第1番ですが、本来ならそのままチェンバロをつかうところ、演奏者が交代して今度はピアノ。つまり、チェンバロ協奏曲ですがクラヴィーア協奏曲として演奏したのです。まだモダン演奏が主だった時代によく選択された編成ですが、それでも指揮者を置かずピアニストがオーケストラに合わす形で進んでいき、アンサンブルにほころびはなく、むしろ生命と魂が宿った生き生きとした演奏だったのも素晴らしい!これも17名での演奏です。

休憩をはさみ、第4曲目がバッハのブランデンブルク協奏曲第5番。古楽ではなくあくまでもモダンなのでピッチは聴きなれたものですが、しかしこれも指揮者無しで今度はチェンバロが入ります。そのうえでヴァイオリンとフルートがソロ。ヴァイオリンはさすがにアマチュアらしいやせた音もありますが、それでも生き生きとして安定したサウンドは、聴いていて魂の愉悦を感じます。本当にレベル高すぎです。面白かったのは、前半はヴァイオリンは対向配置だったのを、後半は近代的な配置に変えた点です。こういう試行錯誤もこの団体の面白いところです。しかしだからと言って前半と後半で差がついたかと言えば全く差はついておらず、いかに周りの音を聴いてアンサンブルしているかを証明してみせました。

そして最後の5曲目、ブクステフーデの「我がイエスの御体」。カンタータというよりはオラトリオと言うほうが正確でしょう。イエスの四肢をそれぞれ取り上げつつ、アリアと合唱、管弦楽で歌いあげる曲です。管弦楽が13名、合唱が18名。そしてソリスト5名の36名の当日最大の編成です。これを見ますと、バロック時代、どんな曲が最も重要視され多くの人数を必要としたかが一目瞭然です。基本的に、20世紀に至るまで、ヨーロッパのクラシック音楽はこの合唱を伴う曲こそ至高であるという路線から外れたことはありません。マーラー交響曲第8番も基本的にこの延長線上にあります。

それでいて、このブクステフーデでも、指揮者無し、チェンバロ通奏低音です。バロックという時代の演奏者たちのレベルの高さがうかがえます。そのうえで歴史の上で指揮者が誕生していることを、クラシックファンでも結構踏まえていない人が見受けられるのは残念に思います。オーケストラの演奏が悪いのはオーケストラがダメなのだ!という意見もかなりありますが、実際には指揮者のほうに問題があることが殆どです。特にプロオケにおいては、オーケストラ側に理由があることはほとんどないと断言しても差し支えないでしょう。アマチュアオーケストでは、当然オーケストラのレベルというものは問題になりますが、一定のレベルに達しているオーケストラの場合、本当にオーケストラ側に責任があるのかは、しっかりと分析せねばならないと私は思います。

ブクステフーデでも、特にffになるところでの魂の入り具合は強烈で、聴き手の私の魂まで揺さぶります。演奏者それぞれが聴きあい、音楽を作り上げているからこその、魂の入りようなのでしょう。このブクステフーデも第1曲、第2曲、第7曲の3つだけでしたが、全曲聴きたいと思わせるものでした。

今回抜粋にされた曲は、是非とも全曲演奏を検討されてもいいのでは?と思います。そのうえで、バロックの作品をじっくりと演奏する機会を、カルペディエム・コレギウム・ムジクムと位置付けるのもいいのではと思います。ますます、この団体は足を運びたくなりました。

 


聴いて来たコンサート
カルペディエム・コレギウム・ムジクム2024
ウィリアム・バード作曲
3声のミサ
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
カンタータ第78番「イエスよ、汝わが魂よ」BWV78
チェンバロ協奏曲第1番BWV1052
ブランデンブルク協奏曲第5番BWV1020
ディートリヒ・ブクステフーデ作曲
我らがイエスの御体BuxWV75
カルペディエム・コレギウム・ムジクム

令和6(2024)年5月18日、神奈川、横浜、青葉、横浜市青葉区民センターフィリアホール

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