かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:バッハ 複数台のピアノのための協奏曲2

神奈川県立図書館所蔵CD、バッハの複数台のピアノのための協奏曲集を取り上げていますが、今回はその第2回目。第2集に取り上げられました、ピアノも含む複数の楽器による協奏曲をご紹介します。

まあ、こういった作品はすでに、「今月のお買いもの」コーナーでさんざん取り上げているわけなんですが、様々なヴァージョンを聴くということこそ、バロックの作品の楽しみ方だと私は思っていますので^^;

まず第1曲目は、フルート、ヴァイオリンとピアノのための協奏曲イ短調BWV1044です。成立は1727年以降と、教会カンタータで忙しい時期ですが、だからこそ実はこの時期に新たに作曲されたのではなく、第1楽章と第3楽章は1714年に成立したクラヴィーア(バッハ生存東寺ではチェンバロ)のための「プレリュードとフーガ」イ短調BWV894から、そして第2楽章はオルガン・トリオ・ソナタBWV527からの編曲です。

BWV527は最終的な形になったのが1730年とされていて、そのことからBWV1044が現在の形で成立し、演奏されたのは1730年頃ではないかとされ、その目的は器楽作品演奏会のためのコレギウム・ムジクムの活動のためのだとされています。

フルート、ヴァイオリンとチェンバロのための三重協奏曲 (バッハ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%88%E3%80%81%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%81%A8%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%90%E3%83%AD%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E4%B8%89%E9%87%8D%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2_(%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F)

一応、ウィキで足らない部分を私が「バッハ事典」(東京書籍)から補ってみましたが、元々チェンバロとオルガンのための作品を、みごとにチェンバロ以外の作品を入れた三重協奏曲にして見せたのはさすがです。第1楽章と第3楽章は原曲と同じ調性、そして第2楽章はニ長調からハ長調へと移調されています(しかも、第2楽章と第3楽章はほとんどアタッカです!)。このあたりにバッハの編曲の巧みさが現れています。

フルートはフラウト・トラヴェルソなのか、それともリコーダーなのかはわかっていません。この音源はモダンなので、フルートが使用されていますが、もし楽譜でも単にフルートとあるのであれば、この演奏がピリオドであれば、リコーダーであるという事を示しています。この作品はこのモダンで初めて聴きましたので、ピリオドの演奏も聴いてみたいなと思います。

次の作品が、3台のピアノのための協奏曲第1番ニ短調BWV1063です。これはモダンなのでピアノ3台ですが、元々はチェンバロ3台のための協奏曲です。

第1番 ニ短調 BWV1063
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%90%E3%83%AD%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2_(%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F)#.E7.AC.AC1.E7.95.AA_.E3.83.8B.E7.9F.AD.E8.AA.BF_BWV1063

ウィキでは端折られてしまっていますが、さらに原曲は旋律楽器(つまり、通奏低音になるオルガンやチェンバロ以外ということ)のための協奏曲であろうと、「バッハ事典」では言及されています(P.421)。私はあまり不自然を感じませんが、様々な統一感の様相から、専門家は大バッハの息子達が編曲に関わっている可能性があると指摘しています。

確かに、全体としても小ぶりで、簡素である気はします。それでも、転調などは自然で、特に第2楽章から第3楽章へのつながりは素晴らしいです。おそらく元々は一つの作品であったものを、息子達何人かで編曲するうちに幾つか齟齬が出てきたのであろうと私は想像しています。まあ、それだけ大バッハは偉大であるってことなんですねえ。はあ、偉大な父を持つと、息子はつらいですねえ・・・・・お察し申し上げます(って、誰に?ええ、大バッハの息子達にです!)。

最後の作品が、3台のピアノのための協奏曲第2番ハ長調BWV1064です。実はこの作品は以前このブログで取り上げています。

今月のお買いもの:バッハ・コンチェルト・リコンストラクション
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1059

実は、上記エントリのそのCDこそ、この音源を借りるきっかけになった一つの音源なんですが、この時はチェンバロオーボエバスーンの3つための協奏曲としてでしたが、それはそのCDの団体における復元であり、通常はこの音源のようにピリオドであればチェンバロ、モダンであればピアノ3台による演奏が主流です。

第2番 ハ長調 BWV1064
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%90%E3%83%AD%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2_(%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F)#.E7.AC.AC2.E7.95.AA_.E3.83.8F.E9.95.B7.E8.AA.BF_BWV1064

成立時期は事典とウィキはほぼ同一の見解を示していますが、ウィキではバッハの作かどうかは疑問とされていますが、事典では現在では原曲のヴァイオリン3台もバッハの作とする専門家が多いという記述があり、そのため私はバッハの作という説を採りたいと思います。明るくも伸びやかなフーガは、成熟した比較的規模の大きいものとなっているためです。

さて、演奏は名人シフを中心に、素晴らしいアンサンブルです。指揮はシフとなっていますが、まさしくバロック期らしいやり方で、通奏低音がリードしながら、全体がまとまっていくさまが楽しめます。テンポもそれほどゆったりではなく、テンポ感がしっかりとあり、ピリオド演奏を意識しつつも、モダン楽器の良さを十二分に発揮した演奏となっています。特に、1曲目の第1楽章主題において、ちょっとだけ音が長くなるフレーズがありますが、それをさりげなく、しかししっかりと演奏するのはモダンならではの魅力であり、バッハの音楽をよく知り尽くした演奏であるなあと思います。

器楽曲に精神性がそれほど求められる時期ではないはずなのに、リヒターほど重々しくないにも関わらず、それぞれの作品にまるで精神が宿るかのような、生命力を感じるのです。特にBWV1044はベートーヴェンの「運命」にも似たデモーニッシュさを感じ、どこかしらバッハの人生すら滲み出てくるような気さえしてしまいます。

こういったモダンの演奏を聴くのもいいものです。現代では指揮者がいることが当たり前になっていますが、かつては通奏低音部の奏者が全体を統括し、コントロールして行ったのだということを知ることは、翻って、古典派以降の作品に耳を傾ける時、非常に役に立つ「耳」を育ててくれます。低音部と旋律部とのバランスはどうなっているんだろうか、そしてそれは私達に何を物語っているんだろうか、と。

それが作曲者や、演奏者との対話、分かち合いに、とても役に立つことをお伝えして、バッハのこのシリーズは終了したいと思います。次回はいよいよ、「ブランデンブルク」の登場です!




聴いている音源
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
フルート、ヴァイオリンとピアノのための協奏曲イ短調BWV1044
3台のピアノのための協奏曲第1番ニ短調BWV1063
3台のピアノのための協奏曲第2番ハ長調BWV1064
アンドラ―シュ・シフ(指揮、第1ピアノ)
ピーター・ゼルキン(第2ピアノ)
ブルーノ・カニーノ(第3ピアノ)
オーレル・ニコレ(フルート)
塩川悠子(ヴァイオリン)
カメラータ・ベルン(コンサートマスター:トーマス・ヒューリ)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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