かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:オーケストラ・チェルカトーリ第5回演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和7(2025)年7月12日に聴きに行きました、オーケストラ・チェルカトーリの第5回演奏会のレビューです。

オーケストラ・チェルカトーリは東京のアマチュアオーケストラです。「探求者たちのオーケストラ」という意味で、意欲的なプログラムが魅力です。

cercatoreorchestra.wixsite.com

前回は1年ほど前の第3回を聴きに行っています。第4回は実はチケットが取れずあきらめています。

ykanchan.hatenablog.com

なかなかチェルカトーリさんは人気のようで、実は今回も1ヶ月ほど前にteketで購入しようとしましたら何と売り切れ・・・ゆえに今回は実はあきらめていたのですが、なんと直前にteketからメールが来て、残席ありとあるではありませんか!確かに確認したところ残席があったため、かなり日程的に厳しかったのですがチケットを確保しました(というのは、ちょうどその夜に関西万博へ出発する予定だったため。ちなみに翌日も京都のアマチュアオーケストラに足を運んでいます。それはまた別途)。

さて、今回のプログラムは以下の通り。

①デュカス 舞踏詩「ラ・ぺり」よりファンファーレ
オッフェンバック バレエ音楽パリの喜び」(M.ロザンタール版)
ベルリオーズ 幻想交響曲

ちなみに、デュカスはプレ・コンサートの演目で、私は当日府中市立図書館さらに関西万博へ出発する準備等で大忙しだったため、聴けずじまいです。ゆえに②のオッフェンバックから聴きました。

オッフェンバック バレエ音楽パリの喜び」(M.ロザンタール版)
オッフェンバックの「パリの喜び」、実はそのようなタイトルの作品をオッフェンバックは作曲していません。実はこの曲、オッフェンバックの数々の作品をバレエにするためにマニュエル・ロザンタールがまとめた作品です。しかも、実はロザンタール本人が作曲した曲も含まれています。

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ですがそれが違和感なくパリの喧騒を描くことに成功している作品です。その意味では、ロザンタールは素晴らしい仕事をしたと言えるでしょう。ただ、当初はロザンタールは乗り気ではなく幾度の説得の後着手したと言われています。確かに、この仕事をすれば基本的にはオッフェンバックの名前を高めるだけですから。ですが実際聴いて感じたのは、全く違う作品が含まれているにも関わらずそれぞれが有機的に連結し、全体を彩っているということなのです。これは作曲家であるロザンタールの才能を認めないわけにはいかないだろうと思います。

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今回この曲を持ってきたのは、一つにはオッフェンバックの作品が意外とメジャーではないこと、そしてさらにロザンタールという作曲家もまた正直我が国でそれほどメジャーではないこともあるでしょう。しかも、ロザンタールはユダヤ系。1936年という編曲のタイミングを考えると、オッフェンバックだけに注目したプログラムだとは個人的には考えられませんし、実際当日のパンフレットにもそれらしい言及がなされています。

オッフェンバックの生涯とロザンタールの生涯は私から見ると意外と似ています。本人はどんな気持ちだったかはわかりかねますが、最終的にはどこかロザンタールがオッフェンバックに共感しているような印象も受けました。

物語としては恋物語でベタですが、ゆえに感情移入がしやすいとも言えます。今回指揮者は中央大学管弦楽団音楽監督でもある佐藤寿一さんでしたが、彼そして団員たちもどこか共感して楽しそうに演奏しているのが見て取れました。特に女性団員の方は物凄く楽しそう!自分が恋をしたときのワクワク感が髣髴とされるのかもしれません。やせた音もほとんど聴こえてきませんし演奏レベルも高く、最後まで私も一緒に楽しみました。特に生き生きとした演奏だったのはやはり「天国と地獄」が使われている後半の4曲でした。

ベルリオーズ 幻想交響曲
ベルリオーズ幻想交響曲は私も何度か取り上げている作品ですが、これもまた恋物語が下敷きとなっています。実際には主人公が見た夢ですが、それは恋をする夢。その結果最後は気がくるってしまうというものです。恋は人を盲目にさせますね・・・

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つまり今回、フランス物かつ恋物語という二つのテーマが仕込まれていたということになります。いやあ、ニクいテーマですねえ。これがアマチュアイズムですしまた平均年齢が若い若者中心のオーケストラならではだと思います。個人的には佐藤氏の指揮する幻想交響曲は板橋で一度経験しています(中央大学管弦楽団)。それもあって今回とても楽しみにしていたプログラムでもありました。

アプローチとしては極めてオーソドックスなのですが、その中にしっかりと生命が宿っていたのが本当に素晴らしい!これも全体的に生き生きとしているのがいいです。特に団員の皆さんは体をゆすって演奏している人も多いのです。ゆえにどこか魂がのっかっている印象を受けます。

第1楽章のティンパニはあまり硬くなかったのですが、徐々にヒートアップ。これはおそらく指揮者の指示だと思います。これもまた夢の解釈としては興味深いところです。段々見る夢がはっきりしてくるという・・・夢を見ている時って意外とそういうことってありますが、その印象で演奏していても何ら違和感なくさすがです。

第3楽章では通常は舞台裏にオーボエが控えますが、今回は会場の杉並公会堂の舞台後ろの客席の隅に陣取りました。しかもお客様もいらっしゃいます。これもまた興味深いスタイル。前日も客席だったのですがこの客席という形もいいですね。

控えると言えば、第5楽章の鐘も普通は舞台裏に陣取りますが今回は舞台上に登場!遠くで鳴っているのではなくすぐ近くで鳴っているように演奏したのです。これもまた興味深いやり方です。狂気の中にいるとはこのことのように聴こえるのが素晴らしい!明かにこの作品において恋は「狂気」ですから、それに準じた舞台にしていたのは唸りました。いやあ、アマチュアオーケストラの演奏会でそんな経験ができるとは!オーケストラ・ラム・スールさんとはまた違った感動がありました。勿論、最も有名な「断頭台への行進」も鬼気迫るもの!豊潤かつ力強い演奏でした。

アンコールはベルリオーズの「ロミオとジュリエット」から「キャピュレット家の饗宴」。これまた生き生きとした若々しい演奏!どこまでも楽しませていただきました。次は12月にスーザの「星条旗」。初めて聞く作品だと思いますがスーザを普通に取り上げるというのは私が記憶している限りmixiの「同時鑑賞会」だけだと思います(確か歌音さん主宰)。次回も期待が膨らみます!

 


聴いて来たコンサート
オーケストラ・チェルカトーリ第5回演奏会
ポール・デュカス作曲
舞踏詩「ラ・ぺり」よりファンファーレ
ジャック・オッフェンバック作曲
バレエ音楽パリの喜び」(マニュエル・ロザンタール編曲)
エクトル・ベルリオーズ作曲
幻想交響曲作品14
劇的交響詩ロミオとジュリエット」より「キャピュレット家の饗宴」
佐藤寿一指揮
オーケストラ・チェルカトーリ

令和7(2025)年7月12日、東京、杉並、杉並公会堂大ホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。