かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:カラー・フィルハーモニック・オーケストラ第25回演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和6(2024)年11月17日に聴きに行きました、カラー・フィルハーモニック・オーケストラの第25回演奏会のレビューです。

カラー・フィルハーモニック・オーケストラさんは東京のアマチュアオーケストラです。このブログでも最近何度か取り上げている団体です。

colorphil.jimdofree.com

ブルックナーを演奏することが多いオーケストラで、今回もブルックナー交響曲第3番がメインとなりました。カラー・フィルハーモニック・オーケストラさんは後期ロマン派の作品を得意とする印象があります。ブルックナーは勿論ですが、リヒャルト・シュトラウスなどを演奏しても素晴らしいと思います。実際前回はリヒャルト・シュトラウスアルプス交響曲でした。

ykanchan.hatenablog.com

このアルプス交響曲の時と違い、今回はホールは杉並公会堂。どちらも音響のいいホールですが、杉並公会堂のほうが小さくコンパクトという印象があります。中央線沿線の杉並や三鷹、小金井といった街は比較的小さめのホールがあるのが特徴です。小さいホールは収容人数は少なめですが(とはいっても1000人程度は入りますが)、その杉並公会堂で演奏する曲としてブルックナーを選択するのは意外と通だなあと思います。ブルックナーと言えば大編成なのでより大きなホールで演奏したがるものですが、なぜかカラー・フィルハーモニック・オーケストラさんは杉並公会堂の時にブルックナーを持ってくる傾向があるのが特徴です。私自身としては、杉並公会堂のような少し小ぶりのホールで演奏するほうが、アマチュアにとってはよりブルックナーが目指した芸術に近づくのではないかと思っています。そもそも、ブルックナーは教会オルガニストで、交響曲にもどこか教会音楽らしさが見えるんです。その一つがブルックナー終止だと個人的には思います。だからこそ、むしろ杉並公会堂のほうがアマチュアにとってはブルックナーが目指した「音響」を最大限表現できるのではと思います。

今回は、そのブルックナー交響曲第3番の他に、シューマンの「序曲、スケルツォと終曲」という作品が1プロに選択されました。1841年に作曲されましたがその後1845年に改訂され、現在の形になりました。

ja.wikipedia.org

文字通り、序曲とスケルツォ、そして終曲の3つからなる作品です。シューマン管弦楽作品はシューマンがピアニストだったこともアリ多少個性的な作品が多いです。この曲においても、スケルツォはあまりスケルツォらしく聴こえなくてメヌエットスケルツォの中間のような感じです。カラー・フィルハーモニック・オーケストラさんは朗々と歌いつつも、生命力のある演奏をしていました。特にスケルツォはそのリズムを楽しんでいる感じがしました。

そして、後半のブルックナー。この曲には3つの稿が存在し、当日はどの稿で演奏するのかと思っていましたが、恐らく第3稿だと思います。何も記載がないのでそういう時はノヴァーク版が選択されることが多いので、ノヴァーク版の第3稿が選択されたと思います。演奏時間もほぼ1時間程度。ウィキペディアでは第2稿が約60分とありますが、第4楽章においてとくに「この曲第1楽章で聴いたな」というフレーズが出てこなかったので、恐らく第3稿が選択されたと思います。

ja.wikipedia.org

いずれにしても、雄大ブルックナーが演奏されたと思います。ブルックナー終止もかなりしっかりと余韻を味わう感じです。大きな音というよりは、音場を作るという感じの演奏。それでいて生命力があり推進力を感じます。若きブルックナーの血潮がたぎるような演奏ですが、テンポはそれほど速くは感じません。この辺りは指揮者金山さんのタクトマジックかなあという気がします。ブルックナーは演奏によっては冗長に感じるものもありますが、カラー・フィルハーモニック・オーケストラさんの演奏はいつもブルックナーでも時間があっという間に過ぎていきます。おそらくですが、この第3番という曲は第1楽章の演奏時間が最も長く、その点で言えば古典的な作品だとも言えるかと思います。ワーグナーという愛称もつけられており確かにワーグナーとのエピソードも残っていますが、それよりはむしろ第1楽章に重点を持ってくるということで古典派の交響曲のような構造を持っているという点にフォーカスしたようにも思います。

こういうところは、アマチュアオーケストラのいい点だと思います。これがプロオーケストラの演奏であれば、異論が吹き出ているかもという気がします。ですが確かに長いのは第1楽章だけなんです。これはロマン派の交響曲としては多少珍しい構成になっているわけで、その点をフォーカスする解釈も十分あり得ると思います。故にカラー・フィルハーモニック・オーケストラさんの演奏はブルックナーを聴いても飽きませんし、むしろブルックナーの芸術はゆったり目だけではないよと教えられるのが常です。実は生命力がしっかり宿っていることを、毎度カラー・フィルハーモニック・オーケストラさんの演奏では気づかされるのですが、今回も同様でした。しかも、しっかりブルックナー終止で止めても、演奏に生命力と推進力さえあれば何の問題もないことをも証明してみせたのです。それを、アマチュアオーケストラの演奏で経験できるなんて、本当に幸せです。

次回は再び横浜みなとみらいホールでの開催で、メインが「春の祭典」。どんな「ハルサイ」になるのか、今から楽しみです。

 


聴いて来たコンサート
カラー・フィルハーモニック・オーケストラ第25回演奏会
ロベルト・シューマン作曲
序曲、スケルツォと終曲
アントン・ブルックナー作曲
交響曲第3番
金山隆夫指揮
カラー・フィルハーモニック・オーケストラ

令和6(2024)年11月17日、東京、杉並、杉並公会堂大ホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。