かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:キャドマン 室内楽曲集

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はアメリカの作曲家キャドマンの室内楽作品集を取り上げます。もともとはナクソスだったと思います。

多分、ナクソスの「アメリカ作曲家撰集」の中の一つだと思います。意外とクラシック音楽の中で取り上げられることが少ないアメリカの作曲家たち。もちろん0ではなく、ガーシュインやバーバーなど幾人かはいますが、それでも少数です。

そんな中で、このアルバムで取り上げているのは、キャドマン。原語のスペルからカドマンとも言われます。インディアンの旋律を収集して作品を紡いだことで本国では有名になりましたが、どうもそれは単にヨーロッパの流行を聴衆が追いかけていただけで、音楽界が真にアメリカの民俗音楽に興味と共感を示したものではなかったようで、そのために一度忘れ去られた作曲家です。

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ある意味、多民族国家「ユナイテッド・ステイツ」アメリカを象徴しているなあと思います。ではアメリカの民俗音楽とは何でしょう?あるいはそれを「民族」と置き換えたら?となると、アメリカという国は玉虫色になってしまうんですよねえ。そもそも、「ユナイテッド・ステイツ」としては、民族という意識はないはずですから。ただ、白人、特にアングロサクソンが多数を占めるというだけです。むしろ、その「多数民族」にとっては、アングロサクソンの音楽こそ民俗音楽です。

ところが、キャドマンは同じ民族音楽でも、インディアンに興味を持ったのです、白人でありながら。おそらくその点が、忘れられる結果につながってしまったのでしょう。しかし、作品を聴いてみると、親しみやすく、そして深いものも多いことに驚きます。

「峡谷の伝説」や「水青き国より」はもとより、第1曲のピアノ三重奏曲から第3曲のピアノと弦楽のための五重奏まで、どれをとっても甘く美しく、時には切ない旋律が流れます。そしてそこにはどことなくヨーロッパとは違う雰囲気を持つ旋律が存在します。いうなれば、特段「これにインディアン音楽がつかわれている」のではなく、インディアン音楽がそこには元素材として存在する、ということなのですね。それゆえなのか、少なくとも日本人である私には、違和感なく感じられます。

そのギャップがまたアメリカ人としては面白かったのでしょうが、おそらくキャドマンとしてはまじめに取り組んだものだったのではないでしょうか。特に、アメリカのクラシック音楽ドヴォルザークから始まると言っても過言ではなく、その交響曲第9番新世界より」や弦楽四重奏曲アメリカ」でインディアンの旋律や和声がつかわたことは、アメリカの若き作曲家たちに非常なる刺激を与えたわけです。キャドマンもその延長線上にいる、ということになります。

つまり、単に面白いからではなく、アメリカの民俗音楽である、という意識の下取り組んでいたと考えられます。1920年代と言えば、ヨーロッパにおける民謡採集運動の影響が世界的に広がっていた時代の、ほぼ最後期に当たります。キャドマンもその影響を強く受け、さらに聴衆もその流行に乗っていたという時代を考えれば、当然であったように思いますが、聴衆側はおそらくキャドマンの「本気度」をあまり理解していなかったように想像します。それがキャドマンの悲劇だともいえるかもしれません。

しかし、演奏するソリストたちは、キャドマンのこれら作品を愛情と親しみを込めて演奏している様子が伝わってきます。特にピアノとヴァイオリンは自分の歌を歌っており、その結果グッと魂に語り掛けてきます。私たちアメリカの音楽じゃないか!という共感とリスペクトにあふれているがためなのであろうと思います。決して私としてはアメリカ人ではないですしまたインディアンとも若干異なりますが(日本人ですから)、しかしどこか彼らの「我らの音楽」という高らかなる宣言に感動してしまいます。

この演奏こそ、真なる「グレート・アメリカ」ではないでしょうか。その意味では、日米両国とも、保守勢力は保守として真に自国の文化に誇りを持っているんだろうかと、考えさせる演奏でもあるのです。

 


聴いている音源
チャールズ・ウェイクフィールド・キャドマン作曲
ピアノ三重奏曲ニ長調作品56(1914)
ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ト調(1930)
ピアノと弦楽のための五重奏曲ト短調(1937)
峡谷の伝説 作品68(1920)
アメリカ・インディアンの4つの歌 作品45より 第1番 水青き国より(1909~1913)(編曲:ガイヤルド・ヨスト)
ポール・ポズナック(ピアノ)
ペーター・ザゾフスキー(ヴァイオリン)
ロス・ハルボー(チェロ)
ベルゴンツィ弦楽四重奏団

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