かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:リゲティ・プロジェクト

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はリゲティの作品を集めたアルバムをご紹介します。

リゲティという人、名前だけは知っているんだけどという人も多いのではないでしょうか。いえ、恥ずかしいことではありません、借りるまで私もその一人でした。

リゲティというその「音」から、ドイツ人というイメージがあるかもしれませんが、それもそのはず、ハンガリーオーストリア人です。勘違いしても不思議はありません。

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そうはいっても、生まれがルーマニアという、その出自からして複雑な文化を背景としていることは容易に想像できるうえで、ユダヤ人であることで第2次大戦をきっかけにさらに心象風景が複雑化したことも、容易に想像できます。

かといって、その音楽が複雑なのかと言えばそうでもありません。和声はかなり複雑ですが、その複雑さが一つの響きとして生まれるときには、とてもシンプルであることに驚かされます。だからと言ってその響き自体は複雑なので、ひとつのシンプルな響きが複雑な様々なものを意味もしていることが多く、聴いていて飽きません。

その代表的な作品が、第1曲の「メロディ」です。

ameblo.jp

このエントリを読むと、どれだけ壮大な編成なのかって思ってしまいますが、実はこのアルバムではおそらくですが、室内オケ程度の規模なんです。しかし、その壮大さは確かに健在。不思議な作品です。

2曲目が室内協奏曲。不協和音が連続しますけれど、いわゆる合奏協奏曲と言った感じの作品です。4楽章というその数字からしても、バロックを意識している作品だと思います。そもそも、正式には「13人の奏者のための」というのが付くので、明らかにコンチェルト・グロッソを現代音楽として作曲した作品だといえるでしょう。ゆえにこのアルバムでの室内オケだと思われるアンサンブルでの演奏は、ぜい肉がそぎ落とされている感じで、すっきりとしている分、明確なテクスチュアが浮かび上がっています。

3曲目がピアノ協奏曲。室内協奏曲が1960年代の作品であるのに対し、これは1980年代も後半、86~88年にかけて作曲されたもの。おどろおどろしさもある和声ですけれど、室内オケ程度の編成で聴くと、むしろすっきり感があるのは室内協奏曲と変わらず、リゲティが狙ったのは表面的な不思議さではなく、その深遠さであるように感じるのです。

そして、短いながらも面白いのが、最後の「マカブルの秘密の儀式」。そもそもはリゲティ自身のオペラ「ル・グラン・マカーブル」をコンサート用に編曲したものですが、いやあ、面白いのなんのって!ダダイズムの作品と呼ばれますがなるほどと思うんです。これ、ドリフのコントそのもの、ですから。

ザ・ドリフターズが「8時だよ!全員集合」で披露していた数々のコントやコーナーは、まさにダダイズムです。ドタバタコントでとにかくリーダーのいかりや長介扮するリーダー役に抵抗するまさに駄々っ子軍団のほかの4人たち。ハチャメチャですが、そのハチャメチャであることで既存の文化に対する抵抗を示した芸術運動こそ、ダダイズムなのですから。

ja.wikipedia.org

私が参考にしたブログをご紹介します。これを読むと、なーるほど!と納得しました。なぜこの音楽がドリフ並みにハチャメチャなのか。そこには、しっかりとした意味がありました。

dkagera.hateblo.jp

oshiete.goo.ne.jp

ダダイズムは、上記の通り「ハチャメチャであることで既存の文化へ抵抗する芸術運動」です。オペラの筋書きを見れば明らかに官憲への抵抗であるわけで、それは既存のものに対する抵抗です。それを音楽で表すために、あえて言葉ではなく無茶苦茶な音楽で表現したのがこの作品なのです。

全て室内オケというよりはもう室内楽に毛が生えたアンサンブルと言ってもいいくらいの編成が、縦横無尽に表現しているのがこのアルバムの特色です。特に最後の「マカブルの秘密の儀式」はもう面白くって、これだけヘビロテしたい感じです。

20世紀音楽は面白い!と思わせるアルバムだと思います。実はシリーズになっていますが、図書館ではこの一つだけしか借りることができませんでした。機会があればハイレゾで購入できればいいなあと思っていますが、CDの棚にまだ余裕がある方は、ぜひともCDで購入してみてはいかがでしょうか。音質もハイレゾに負けないくらいのクリアなもので、存分に楽しめます。

 


聴いている音源
ジェルジ・リゲティ作曲
メロディー~オーケストラのための(1971)
室内協奏曲~13人の器楽奏者のための
ピアノ協奏曲
マカブルの秘密の儀式(1974~77、1991)~トランペットと室内オーケストラのための(E.ハワース編)(世界初録音)
ピエール=ローラン・エマール(ピアノ、ピアノ協奏曲)
ペーテル・マシェルス(トランペット、「マカブルの秘密の儀式」)
インベルト・デ・レーヴ指揮
シェーンベルク・アンサンブル(「メロディ」「室内協奏曲」)
ASKOアンサンブル(ピアノ協奏曲、「マカブルの秘密の儀式」)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。