かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:リゲティ ハンブルク協奏曲他

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はリゲティの協奏曲とレクイエムを収録したアルバムをご紹介します。

コダーイなどとおそらく同じ時に借りているかと思いますが、なぜかリゲティサウンドに惹かれて借りたのだと思います。20世紀音楽の中でもとりわけラディカルで、かつどこか神秘的な雰囲気も漂うリゲティの音楽は、どことなく私の琴線に触れたのだと思います。

まあ、リゲティの生涯を考えれば、納得できる部分もありますが・・・・・兄弟と父をそれぞれ別々の収容所で亡くしているというバックグラウンドを持つリゲティ。「絶滅収容所」というのがどれほどのものなのか、どちらかと言えばナチスに加担して加害者としての側面がある日本人としては、理解しがたいものがあるのではないでしょうか(その意味では、もちろん残念で悔しいことなのですが、私たち日本人はソ連強制収容所で亡くなった同胞たちにより、そのすさまじさを知ることとなります)。

ja.wikipedia.org

どうやら、このアルバムはそのリゲティの作品を体系的に扱う「リゲティ・プロジェクト」の第4弾だったらしく、第1弾をご紹介したときに、さらに聴きたいものですと述べているかと思いますが期せずしてそれを実行していた、ということにもなります。残念ながら解説等を残していないので、作品それぞれにどのような背景があるのかまではわかりませんが、1曲目のホルン協奏曲である「ハンブルク協奏曲」は、どちらかと言えば生命を感じる作品です。

さらに、「二重協奏曲」には、どこか潮の満ち引きが見えるというか・・・・・・いや、それってハンブルクのような気もしますが・・・・・しかし、これはちょっと違う背景を持っていそうです。

となると、この作品はバロック音楽も念頭に入れて、リゲティが作曲した可能性も捨てきれないと思いますし、いろんな背景があってこの作品に結実したような感覚があり、不協和音たっぷりですが二つとも結構楽しめる作品です。

一方で、レクイエムは壮絶たる作品。キリエからしてもう叫びですし、そのすさまじさは、従来の作曲家のレクイエムとは一味も二味も異なっています。この作品においては、やはりリゲティの生い立ちというものを想像せざるを得ないような音楽だと思います。そこまで蓋をしていた悲しみ、苦しみと言ったものが全開放されたというか・・・・・

そんな作品達を振るのは、現在は東響の音楽監督でもあるジョナサン・ノットとレーウ。。オケはベルリン・フィルと二つのアンサンブル。特に、本来ベルリン・フィルはどちらかと言えば硬質なサウンドという印象がありますが、このアルバムでは実に人間の魂が宿る響きを構築しているのが魅力的です。むしろ柔らかいというか。いや、柔らかいと断言まではできないんですが、そんな印象を与える柔軟なサウンドになっているのが最大の魅力ではないでしょうか。

ベルリン・フィルと言えば、たとえばフルトヴェングラー、たとえばベーム、たとえばカラヤンと言ったそうそうたる指揮者が音楽監督を務めたオケですが、どちらかと言えばベームが振ったサウンドに近い感じが、ノットのタクトには感じられます。いい意味での批判精神が宿り、世界最初のプロオーケストラであるという誇りを上手に使って、リゲティの音楽が持つ「本質」を余すところなく引き出しているように感じるのはわたしだけなのでしょうか。

特にその傾向が強いのがレクイエムだと言えるでしょう。決して辛さだけの一辺倒ではなく、その辛さの裏にある悲しみや苦しみなども引き出してるその演奏は、まさにノットならではという気がします。

さらに二つのアンサンブルも、決して不協和音をただなぞるのではなく、その和声に隠された「人間性」を引き出している演奏となっているのは、リゲティ生前に監修しているとはいえ、さすがだと思います。

 


聴いている音源
リゲティ・ジェルジュ作曲
ハンブルク協奏曲(ホルン協奏曲)~独奏ホルン、室内オーケストラと4つのナチュラル・ホルンのための~(1998~2002)
二重協奏曲~フルートとオーボエとオーケストラのための~(1972)
ラミフィカシオン~12人の独奏弦楽奏者のための~(1968/69)
レクイエム~ソプラノ、メゾ・ソプラノ、混声合唱とオーケストラのための~(1963/65)
マリー・ルイーズ・ノイネッカー(ホルン)
ジャック・ゾーン(フルート)
ハインツ・ホリガーオーボエ
カロリーネ・シュタイン(ソプラノ)
マルグリート・ファン・レイセン(メゾ・ソプラノ)
ロンドン・ヴォイセズ
インベルト・デ・レーウ指揮
ASKOアンサンブル(ハンブルク協奏曲)
シェーンベルク・アンサンブル(二重協奏曲・ラミフィカシオン)
ジョナサン・ノット指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(レクイエム)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。