かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ハンガリーのチェロ音楽

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はハンガリーのチェロ音楽を収録したアルバムをご紹介します。

ロケーションがフンガロトンスタジオなので、おそらくこれもフンガロトンだと思います。そういえば、いつしかフンガロトンだけ固め打ちで借りてきたことがあったなあと思い出しました。

さて、ここに収録された作曲家とその作品を眺めてみると、私が知っているのはリゲティとリストだけ。後はだーれもしらない知られちゃいけない~デビルマンはだーれなのかー♪

って感じの作曲家ばかりがずらり。しかし、その作曲家たちを検索してみると、全員が20世紀に活躍した作曲家たち、なのです。20世紀とは言えないのはリスト一人だけ。

ただ、20世紀という戦争の世紀において、ハンガリーでずっと活躍できた作曲家はこの中ではフェレンツ、レオー、そしてアンドラーシュの3人。後の3人は移住もしくは亡命、リストはそもそもハンガリー王国が当時オーストリア帝国の版図(オーストリア・ハンガリー帝国)であったためドイツ人と言ってもいい生活様式でした。

とはいえ、それぞれの音楽はやはりリスト以外はいわゆる20世紀音楽の範疇に収まっています。ただ、よりラディカルな音楽を作曲しているなあと思うのは亡命組かなと思います。しかしだからと言って残留組が全くラディカルな作品を書かなかったと言えばそうでもないということが、ここに収録されている作品でおおよそ俯瞰できます。

第1曲のリゲティ、そして第3曲と第4曲のヴェレシュは本当にザッツ・20世紀音楽。そのうえで洗練されており、才能豊かな作曲家であることがうかがえます。

その意味では、リストだけこのアルバムの中では異彩を放っていると言っていいでしょう。完全な後期ロマン派の作風は、ある意味魂の表現の嵐の中に咲く一凛の花のようにすら感じられます。ただ、これらの作曲家たちが音楽を志すきっかけを作ったのはリストであろうと私は思っています。国民楽派とまでは言えないものの、近代国家における国民国家的な文化思想をもった作曲家のハンガリーにおける最初期の作曲家であることは間違いないと思うからです。

特にリストが作り出した「交響詩」は、その後国民楽派の作曲家たちに受け継がれていくものだったとという史実に基づけば、リストが19世紀末のヨーロッパにおける民族主義運動に大きな影響を与えたことは間違いないからです。これらの作曲家たちも、決して民族的ではないかもしれませんが、ハンガリーで教育を受けハンガリーで表現するということを志していたことを考えますと、十分に影響を受けていたとは言えないでしょうか。

おそらく、フンガロトンのディレクターもそんな意識があってのこの作曲家たちではないのかな?という気がします。録音は1990年代後半。ハンガリーが東側というくくりから解放された時期だと言えますが、東側だったからというよりも、ソ連、あるいはロシアのくびきから解放されたというべきなんだろうと思います。もちろん、スラヴ民族ですから文化的にロシアの影響も受けている部分はあるでしょうが、抑圧はされていないという、精神的には自由な社会が到来したことで、自国の作曲家たちを、亡命あるいは残留どちらも公平に扱うことができるようになったというその喜びが、アルバムの内容からうかがえるのです。

そんなアルバムに意気を感じてなのか、コダーイのチェロ作品全集とおなじチェリスト、ピアニストの二人は、のびのびと自分たちの歌を歌います。例えば、20世紀音楽そのものと言っていいヴェレシュでは、その不協和音の隙間にひっそりと人間の血が通った部分を感じることができ、その和声はなぜそこでつかわれているのかという視点で弾いているように感じられるのです。こういう演奏を聴くのは本当に楽しいですし、また喜びが体の中から湧き上がってきます。作曲家たちへの共感が私の体を貫き、癒されていきます。

決して派手ではないですが、こういう演奏こそ、プロの仕事だと思います。

 


聴いている音源
ジョルジュ・リゲティ作曲
チェロ・ソナタ
フェレンツ・ファルカシュ作曲
バラード
シャーンドル・ヴェレシュ作曲
チェロとピアノのためのソナチネ
無伴奏チェロ・ソナタ
フランツ・リスト
尼僧院の僧坊
エレジー第2番
エルネー・ドホナーニ作曲
ハンガリー牧歌 作品32d
レオ―・ヴァイネル作曲
ロマンス 作品14
アンドラ―シュ・ミハーイ作曲
チェロとピアノのための楽章
ミクロ―シュ・ペレーニ(チェロ)
デーネシュ・ヴァ―リョン(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。