久しぶりに、「想い」のコーナーをお届けします。というのも、昨日、チェリストのハインリッヒ・シフの訃報が飛び込んできたからです。
ハインリッヒ・シフに関しては、このブログでも6年前に取り上げています。
今月のお買いもの:ドヴォルザーク・シューマン、チェロ協奏曲
http://yaplog.jp/yk6974/archive/429
その表現力が現出させる豊潤な音色は、まだまだこの人の音源が欲しいと思わせるに十分でしたが、予算の関係でそこまで回らずに今日まで来ました。
すでに著名なチェリストですが、6年前のエントリを再掲します。合掌・・・・・
皆さまに、シフの素晴らしさが伝わりますよう・・・・・
今月のお買いもの、今回は輸入廉価盤のドヴォルザークとシューマンのチェロ協奏曲のものを取り上げます。チェリストはどちらもハインリヒ・シフです。
まず、ドヴォルザークはすでに取り上げていますが、その時はベルリン・フィル。今度は、ウィーン・フィルです。では、音は豊潤なのかといいますと、これが必ずしもそうではありません。聴く限りにおいてはベルリン・フィルとそれほど差はありません。
プレヴィンの早めのテンポは、以前取り上げた時のマゼールのゆったり目と比べても遜色ありません。以前の私ならテンポがはやいのでも違和感を感じたものですが、この演奏はそんなことがありません。それはやはりところどころにどうしても現れるウィーン・フィルらしい弦の音色のせいだと思います。
その音色といえば、なんといいますか、品格があるのです。豊潤でもありますが、それよりも上品という感じです。それでいて、このチェロ協奏曲の哀愁が切々と伝わってくるのです。
これはデッカですが、この演奏、果たして今国内盤であるやなしや。もしあるとすれば、この輸入盤を買うのがお買い得と言っておきましょう。1050円なり。
もしかすると、オケとチェロとのバランスは若干ですがこの演奏のほうがいいかもしれません。ベルリン・フィルはカラヤンの時代、特に力強さが特徴だと私は考えていて、その特徴が特にこのチェロ協奏曲では出ているように思います。一方、このウィーン・フィルは徹底的にアンサンブルを聞かせてくれます。この差を聴けるのは、もしかするととても幸せなことなのではないかと思います。
どちらが優れているか、なんて野暮な話です。どちらも美しく、ゆえに粋です。それをあじわうことこそ、クラシックを聴く醍醐味だと思います。
さて、ドヴォルザークでのシフのチェロはとても豊潤です。それゆえかはわかりませんが、ウィーン・フィルとのアンサンブルも、またカデンツァでも、その豊潤さは格別です。そして、以前ヨーヨー・マは第3楽章でというコメントを私は出したと思いますが、このシフはその部分はしっかりと演奏しています。なんていうことはない部分なんですが、そこをしっかりと聴けたことは、シフの演奏の素晴らしさに触れたとともに、この曲が本来持っている新たな魅力を知った瞬間だと思います。
2曲目のシューマンですが、もちろんこの曲が入っていたからこそ買ったわけです。初めからシューマンの音楽という感じがしますね。特に第1楽章は交響曲第2番そっくりです。しかし、その後転調して明るい曲調となります。そのあたりが交響曲と協奏曲とでは全く雰囲気が違いますね。交響曲のトルソのような雰囲気も好きですが、シューマンのコンチェルトが持つ品の良さを、シフとオケが十分紡ぎだしているように思います。
このシューマンではオケはベルリン・フィルに代わりますが、全然違う特徴を持つオケにこれだけアジャストするシフもすばらしいですね。そんなこと当り前かもしれませんが、どちらも世界のトップオケなのです。それときちんとアンサンブルできるということは素晴らしいです。特に、シフはその豊潤なチェロという姿勢を崩していないのに、きちんとアンサンブルするベルリン・フィルのしなやかさ。これこそ、私たちがオーケストラに求めていることだといえましょう。
それを何の苦労もなしにやってのけることこそ、世界のトップたるゆえんだと思います。
シューマンのチェロ協奏曲は、各楽章がつながっている、事実上の一楽章という、後期ロマン派でやられるような作品になっていますが、その一方できちんとオケと会話をする構造になっていて、古典派のにおいがとてもします。オケとチェロとのバランスがとてもよく、もしかするとシューマンがそれを意識して作曲したのかもと思わせるくらいです。たぶんそうだろうと思いますが、断言することはできません。それはもっと専門家の分析に任すしかないでしょう。
それゆえか、本当に音楽は淡々と流れ、かつ会話をしている。まるで、親しい友人と話をしながら歩いているかのようです。ヴィルトォーソの作品も私は好きですが、モーツァルトやハイドンの作品を聴きますと、こんなシューマンの協奏曲のような作品のほうがどちらかといえば好みです。
このCDによって、私はシューマンのコンチェルトをすべて集めたことになります。ピアノ、ヴァイオリン、そしてチェロ。それと交響曲を聴き比べますと、またいろんな発見がありますが、それはまた交響曲を取り上げたときにでも。
最後はシューマンのアダージョとアレグロ、変ロ長調です。アダージョは静謐で美しく、思わず涙が出てきそうです。淡々と弾くピアノ。そしてそれにまたアンサンブルしつつ歌うチェロ。シフの表現力の幅広さを感じざるを得ません。いったん休止して続くアレグロは今度は二人の楽しい会話が聞こえてきそうです。ピアノもチェロも十分に歌い、会える喜びを表現しているかのようです。もともとはホルンとピアノのための曲だといいますが、私はチェロのほうがいい雰囲気が出ているように思うのですが、いかがでしょう?ホルン版も聴いてみないといけないと思いますが、そもそもこの曲が「ロマンスとアレグロ」という題だったことを考えますとl、私はこのチェロとのほうが合うんじゃないかなあと想像しています。
とにかく、こういう組み合わせも輸入盤ならでは。もう、国内盤は解説がどうしても必要というもの以外、買えそうにありません。
聴いているCD
アントニン・ドヴォルザーク作曲
チェロ協奏曲ト短調作品104
ロベルト・シューマン作曲
チェロ協奏曲イ短調作品129
アダージョとアレグロ 変ロ長調作品70
ハインリヒ・シフ(チェロ)
ゲルハルト・オピッツ(ピアノ)
アンドレ・プレヴィン指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ベルナルト・ハイティンク指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(DECCA 480 1002)
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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