かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:4つのホルンのための協奏曲集

今月のお買いもののコーナー、今回はナクソスから出ている4つのホルンのための協奏曲集です。アメリカン・ホルン・クァルテット、ダリウシュ・ヴィシュニエフスキ指揮シンフォニア・ヴァルソヴィアの演奏です。ディスクユニオン新宿クラシック館での購入です。

まずですね、いきなり突っ込みを入れさせていただきますと、このCD、実は協奏曲集ではないんです。むしろ、協奏曲を含めた管弦楽作品集ととらえるのが適切だと思います。なぜなら、以下の曲目を見れば一目瞭然です。

�@シューマン 4本のホルンと管弦楽のためのコンツェルトシュテュック作品86
�Aヘンデル 協奏曲ヘ長調
�Bテレマン 序曲ヘ長調
�Cハイドン 交響曲第31番ニ長調「ホルン信号」

半分は確かに協奏曲ですが、後の二つは明らかに異なります。ですので、正確にはホルンを使った管弦楽作品集というのが適切だと思います。

さて、まずシューマンですが、コンツェルトシュテュックとは小協奏曲とも訳されます。その名の通りに演奏時間は短いのですが、急〜緩〜急の3楽章形式をきちんと押さえています。

4本のホルンと管弦楽のためのコンツェルトシュテュック
http://ja.wikipedia.org/wiki/4%E6%9C%AC%E3%81%AE%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%B3%E3%81%A8%E7%AE%A1%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%84%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%88%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%86%E3%83%A5%E3%83%83%E3%82%AF

それにしても、ロマン派の時代でホルンを協奏曲で使うというのはとても珍しいと思い、この1曲目を見て購入を決定したのです。HMVのレヴューでは辛口の評論も載っていますが、難曲であるというので納得です。かといって、この演奏自体がそんなに悪いのかと言えば、私はそうは思っていません。多分、残響が多めのせいなのではないかと思っています。

ウィキの記述通り、全楽章アタッカで演奏されるのは特段珍しいことではありませんが、前期ロマン派という時代では珍しいかなと思っています。とても小さな作品でありながら、聴きどころは満載におもいます。少なくとも、演奏機会がそれほど少なくはないといわれるほどは、出ているCDは少ないということは、やはり難曲であるということなのだろうと思います。

そもそも、本当かどうかはわかりませんが、シューマンバロックの作品を研究した結果作曲したのだとすれば、ホルン奏者にとって難しいものになるのは当然でして、そこを理解すると非常に聴いていて楽しいものとなるかと思います。

次に、ヘンデルの協奏曲ヘ長調ですが、1楽章しかないのでおかしいなと思い、英文の解説を読みさらに検索をしてみましたら、実は「王宮の花火の音楽」の異稿なのです。

ヘンデルの楽曲一覧
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%81%AE%E6%A5%BD%E6%9B%B2%E4%B8%80%E8%A6%A7#.E5.8D.94.E5.A5.8F.E6.9B.B2

なるほど、それなら1楽章だけになるはずで、納得なのですが、王宮の花火の音楽のどれなのかまでは言及がありません。こればかりは、原曲を聴いてみる必要がありそうです。

3曲目が、テレマンの序曲ヘ長調。ウィキには、こう記述があるんですが・・・・・

ゲオルク・フィリップ・テレマン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%82%AA%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%BB%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%9E%E3%83%B3#.E5.BA.8F.E6.9B.B2.E3.83.BB.E7.B5.84.E6.9B.B2


「序曲
「フォルカー」 変ロ長調 TWV 55:B5、 「ドン・キホーテのブルレスケ」 TWV 55:G10、 「アルスター」 ヘ長調 TWV 55:F11、 ヘ長調 TWV 55:F15、 ヘ長調 TWV 55:F18、 「昔と今の諸国の人々」 ト長調 TWV 55:G4」

アルスターというところには色が付けられていまして、そこから他に飛んでいけるようになっていますが、これをクリックすると、アイルランドのアルスターへ行ってしまうんですね・・・・・

多分、これは間違いだと思います。なぜなら、ナクソスの英語解説文には、ハンブルクのアルスター湖という記述があるからです。

Moin! Hamburg 〜ハンブルクと北ドイツの街〜
http://moinhamburg.seesaa.net/article/141724245.html

1725年、ブランズウィッグ-リューネブルク侯(イギリス王ジョージ一世)の訪問を記念するために作曲された作品で、野外で演奏されたようです。

ジョージ1世 (イギリス王)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%B81%E4%B8%96_(%E3%82%A4%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B9%E7%8E%8B)

つまり、この序曲は、ウィキにある「アルスター ヘ長調TWV55:F11」のことだと思うのです。なかなか検索してもヒットしないので、ナクソスの英語解説文から類推すれば、そういう結果になったという訳です。

本来なら、作品一覧で確認すべきなのですが、テレマンの作品は1700を超えるので、なかなか掲載は難しいようです。他で検索をしましたら編成はホルンが4本とのことなので、多分間違いないと思います。

ヘンデルだけでなく、テレマンも「水上の音楽」のような作品を書いていた、ということなのですね。

最後はハイドン交響曲第31番。これは以前、このブログでも取り上げています。

神奈川県立図書館所蔵CD:ハイドン交響曲全集8
http://yaplog.jp/yk6974/archive/586

「ホルン信号」とも言われるこの曲は、ホルンが大活躍するわけですが、もっと重要な点は、最後の第4楽章が一番長い、ということです。これは古典派の時代ではとても珍しい形を取っているわけで、人によっては「ハイドンは当時の前衛作曲家だった」とも言われます。この形は、ベートーヴェンの第九によって初めて採用されたとも言うべき形式ですが、実際はハイドンがすでに「ホルン信号」でやっていたとも言えるでしょう。

ベートーヴェンハイドンの作品をよく研究していましたから、第九のルーツが「ホルン信号」にあったとしても決して過言ではないと思います。

さて、ここまで様々見てきましたが、このアルバムの特色が、「ホルン4本」であることは間違いありません。ソリストとしてクァルテットを使うというのも面白い企画だと思います。それがまたオケとぴったりですし、違和感がないのも素晴らしいです。そもそも、アメリカン・ホルン・クァルテットのメンバーが主要なヨーロッパのオケの団員であるわけですから、当然ともいえましょう。

オーケストラも、シンフォニア・ヴァルソヴィアだけあって、アンサンブルに乱れなし。指揮者はポーランドの人ですが、明快な解釈をしているように思います。どの作品も奇をてらわずに、真正面から取り組んだ結果、抜けるような青空が広がるような、明るくて広大な世界がそこにあるかのような演奏になっているのは、何度聴いても飽きない魅力を持っています。

こういう演奏をするためには、本当に様々な研鑽が必要になるわけですが、悪く言うのは簡単なのです。私がほとんど悪口を言わないのは、アマチュアとは言え、元々演奏家だったからで、そのむずかしさを知っているからです。その視点でいえば、この演奏はさすがプロだなあと思います。難曲であるシューマンも、聴き手には明るさと爽快さを与えますし、作品の魅力をよく伝えているように、私には思うのですが・・・・・

皆様は、もしこのアルバムを買われましたら、どんな感想をお持ちになるでしょうか。




聴いているCD
4本のホルンのための協奏曲
ロベルト・シューマン作曲
4本のホルンと管弦楽のためのコンツェルトシュテュック ヘ長調作品86
オルグ・フリードリッヒ・ヘンデル作曲
協奏曲ヘ長調HWV335b
オルグ・フィリップ・テレマン作曲
アルスター序曲ヘ長調TWV55:F11
フランツ・ヨゼフ・ハイドン作曲
交響曲第31番ニ長調 Hob.I-31「ホルン信号」
アメリカン・ホルン・クァルテット
ダリウシュ・ヴィシュニエフスキ指揮
シンフォニア・ヴァルソヴィア
(Naxos 8.557747)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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