今月のお買いものコーナー、平成26年9月に購入したものをご紹介しておりますが、今回はディスクユニオン新宿クラシック館で購入しました、ハイドンのオルガン協奏曲集を取り上げます。
ハイドンは、実は鍵盤楽器の協奏曲はあまり作曲していないのですが、それでも様々な種類を足し上げれば、そこそこの数を作曲しています。その一つが、オルガン協奏曲です。
チェンバロ協奏曲(ピアノ協奏曲)(XVIII)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E4%B8%80%E8%A6%A7#.E3.83.81.E3.82.A7.E3.83.B3.E3.83.90.E3.83.AD.E5.8D.94.E5.A5.8F.E6.9B.B2.EF.BC.88.E3.83.94.E3.82.A2.E3.83.8E.E5.8D.94.E5.A5.8F.E6.9B.B2.EF.BC.89.28XVIII.29
さて、このウィキの一覧表を見て、皆様は何を感じますでしょうか?え、何も感じませんって?まあ、それでも決していいんですが・・・・・
モーツァルトに比べると、少ないなと思いませんか?それでも、ロマン派の作曲家に比べれば、かなりの数を作曲しています。ただ、特徴として、バッハのようにチェンバロが多いのですね。そしてそれが、オルガン協奏曲の特色ともつながるのです。
ハイドンのオルガン協奏曲の特色は、その成立年代が1750年代前後と言う点なのです。それはハイドンの知られた作品たちよりも20年ほど早く、ハイドン若かりし苦労人時代の作品であるという事なのです。
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%84%E3%83%BB%E3%83%A8%E3%83%BC%E3%82%BC%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%B3
ハイドンは、時代的には明らかにモーツァルトよりは前になるかと思いますが、その所謂「前期古典派」あるいは「多感様式」に近い作風を、このアルバムに収録されている作品は持っています。イタリア様式の三楽章制ですが、それをもって古いとは言えないでしょう。それはロマン派でも一緒なのですから。
それよりも、ソナタ形式において、主題展開部で転調しないなどが、これらオルガン協奏曲の様式を考える時にもっとも適切であろうと思います。そして、モーツァルトも若かりし時(というよりも幼少期ですね)、同じような様式の作品を作っていたことを思いだします。
此れから言えることは、ハイドンが活躍した時代というのは、音楽様式の転換点であったということなのです。バロック様式が崩壊し、新しい様式が出てくるとき、大バッハの息子達が登場しました。彼らはあまり名を残せませんでしたが、大バッハの様式を受け継ぎつつ、新しい様式の実験を繰り返していきました。その結果、古典派の時代が訪れました。
そして実は、このCDのブックレットには、その古典様式はウィーンにおいてすでに存在したものであったことに触れています。ハイドンはウィーンに生まれた人です。そして、そのウィーンにおいて新しい様式が勃興しつつある時代に作曲を始めたのです。でも、時代はすぐに変るはずもなく、バロック様式もその残骸が残っていたわけです。それが所謂多感様式や、前古典派と言われるものです。
ハイドンは、そういった時代に作曲を初め、自らも他の作曲家同様、実験を繰り返し、弦楽四重奏曲や交響曲の様式を確立していきます。その萌芽を、このオルガン協奏曲では見ることが出来るのです。
オルガン協奏曲は、ウィキの記述ではチェンバロが基本でオルガンも可となっていますが、それもあながち間違いではありません。�[:11と�[:12は、チェンバロで演奏することも考慮に入っていると言われているからです。しかし、専門家の調べでは、ここに収録されている作品は全て、その音域からオルガンが元であることが判明しています。それでもチェンバロ協奏曲として伝わっているということは、後世チェンバロで殆ど演奏されたことを意味しています。それはバッハがある協奏曲を移調して他の楽器の協奏曲にしたのと同じ考え方です。
オルガンという楽器は、現代の私達日本人は明治の学制によって導入されたリードオルガンを想像しますが、本来は単にオルガンと言った時はパイプオルガンの事を指します。ハイドンが生きた時代はリードオルガンなどなく、まともに演奏するには教会のパイプオルガンしかなかった(ですから、注目してください、調性は全て教会音楽で使われる「聖なる調」ハ長調なのです!)ので、当然簡単にサロンなどで演奏する場合は、チェンバロがその代わりをしたのです。これはバッハもしていることであり、それほど異なことではありません。ですから当然ですが、オルガン協奏曲をチェンバロで演奏し、それゆえにチェンバロ協奏曲として伝わったものがあるのです。
ハイドンのこういった作品は、ハイドンが生きた時代というものを本当に考えさせてくれます。淡々とした演奏は、それゆえに美しく華麗な空間をつむぎだしており、可愛らしくもあります。しかし芸術性はしっかりと存在し、透明感と存在感が抜群です。演奏者達はハンガリー出身ですが、さすがエステルハージ公ゆかりの地だけあって、堂々とした演奏は、私達に様式的には旧くとも、ハイドンが込めた想いを今に伝えているように、私は受け取ることが出来ました。
編成も、弦楽合奏を基本とし、そこに管楽器などのソリストが入り、しかし独奏者はオルガンという、まるでバロックのような編成ですが。全く見劣りしません。それどころか、音楽の存在感はさらに増しています。ハイドンの時代の編成はそんなものでしたでしょうから、当然と言えますが、それ故輝きを増しています。オルガンはキラキラし、まるで宝石のようでもあります。
ハイドンが作曲を始めた時代の息吹を感じさせてくれる名演であり、素晴らしい編集だと思います。
聴いているCD
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン作曲
オルガン協奏曲ハ長調HobX�[:1
オルガン協奏曲ハ長調HobX�[:11
オルガン協奏曲ハ長調HobX�[:12
オルガン協奏曲ハ長調HobX�[:5
オルガン協奏曲ハ長調HobX�[:8
ガーボル・ラホトカ(オルガン)
ブタペスト・ストリングス
フューレップ・ベーニ、ガーボル・サボー(オーボエ)
ラースロー・ペレーダ、フェレンツ・バップ(トランペット)
ラースロー・ジュハーシュ(ティンパニ)
エルジェベート・アーチム(ハープシコード)
(Hungaroton HCD287)
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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