かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:デュティユー 管弦楽作品集3

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、デュティユーの管弦楽作品集の3枚組アルバムをシリーズで取り上げている、今回は第3回目。最後の第3集をとりあげます。

第3集には、これまでのデュティユーとは一味違った、不思議系の作品が多く収録されています。1曲目のヴァイオリン協奏曲は、激しさもある作品で、7つの部分に分かれていますが、楽章の間に序奏があるという形になっていますので、事実上4楽章だと考えてもいいでしょう。

古典的な3楽章にしていない点からも、芸術に対する批判的な目が見えてくる作品で、意外と聴いているといろんな「声」が聴こえてくるんです。もちろん、本当に人の声が聞こえてくるわけではありません。それ聴こえてくるんだと、ちょっと私も病院とか考えないといけなくなります・・・・・

そうではなくて、つまりはメッセージが、ということです。ただ、そのメッセージはいくつもあり、一言で言い表せない、複雑なものが、音として紡ぎだされている・・・・・そんな作品です。デュティユーにしてはちょっと深刻な作品だといえるでしょう。

2曲目が歌曲「檻」。まるで檻につながれている人間を描いているかのような作品。

3曲目が詩人ジャン・カスーの詩による2つのソネット。これも歌曲だけあって、不協和音の中に感情豊かに歌い上げられている作品です。

最後の4曲目が「瞬間の神秘」。ツィンバロンや24の弦楽器など、派手な作品ですがこれも不思議系な作品。むしろ黛さんの「曼荼羅交響曲」に近い感じがします。

これだけ不思議系が並んでいるのに、聴いていて苦痛ではなくむしろ面白いのが最大の特徴かもしれません。やはりこういった作品でもデュティユーのほかの20世紀音楽とは一線を画す作品は健在。

演奏は第1集と第2集と指揮者とオケが同じですが、そこにヴァイオリニストとバスが入るという編成。特に二人のソリストは、これだけの不思議系の作品であっても楽譜から感情を掬い取るのが見事です。むせび泣くヴァイオリンとバス・・・・・つい20世紀音楽というと感情はどこかに行ってしまっている作品も多い中で、デュティユーの作品が持つ独創性を受け、歌い上げる演奏は、2世紀音楽がまさに「人間の内面を表現するためにあらゆることを始めた」という特徴そのものなのかもしれません。

確実に、この3枚組は、20世紀音楽というものの評価を変えるものではないかと思います。

 


聴いている音源
アンリ・デュティユー作曲
夢の樹~ヴァイオリンとオーケストラのための協奏曲(1983/85)
檻(1944、世界初録音)
ジャン・カスーの2つのソネット(1954)
瞬間の神秘~24の弦楽器、ツィンバロン、パーカッション―大編成版(1954)
オリヴィエ・シャルリエ(ヴァイオリン)
フランソワ・ル・ルーバリトン
ハンス・グラーフ指揮
フランス国立ボルドーアキテーヌ管弦楽団

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