かんちゃん 音楽のある日常

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神奈川県立図書館所蔵CD補遺:ヒンデミット ヴァイオリン作品集

前回と次回の3回シリーズで取り上げている神奈川県立図書館所蔵CD補遺、今回はヒンデミットのヴァイオリン作品を収録したアルバムをご紹介します。

ヒンデミットと言えば、この人も20世紀を代表する作曲家だと言ってもいい人ですが、題名的に個性的なものをつける人としても有名です。しかしそこに込めた想いというのは複雑で、思わずうなってしまうような作品が多いことで、私は近年好きになっている作曲家の一人です。

まずはヴァイオリン協奏曲。協奏曲にも標題として意外なものをつけたりするのがヒンデミットですが、このヴァイオリン協奏曲に関してはそんなことはなく、音楽で聴かせる作品となっています。和声としては20世紀のものですが、構成は古典的な3楽章制。急~緩~急という内容になっているのに、古典的な雰囲気はみじんも感じさせません。強烈な20世紀和声が、本来形式的には古典的なものをもっている作品を20世紀的な作品として表現しているのが魅力です。

つづくヴァイオリン・ソナタ4曲も個性的。無伴奏ヴァイオリン・ソナタは「外はとても良い天気だ」という標題がついている割には、20世紀音楽の和声が強烈な作品。「外はとても良い天気だ」という言葉をそのまま受け取らないほうがいいでしょう。その言葉にどれだけの「意味」があるのか・・・・・聴衆に考えさせる作品です。

他の3曲は普通のヴァイオリン・ソナタですが、ヒンデミットなので和声は20世紀音楽のもの。強烈であり、また個性的。2楽章あるいは3楽章と、これは様式的にも古典的ではないものばかりですが、ヒンデミットという作曲家の一筋縄ではいかない点を味わうことができる点で、これもまた魅力的。

演奏者も、ヴァイオリンはツィンマーマンで艶があるのが、ヒンデミットという作曲家の言外の言葉を表現しようとしているかのようですし、オケもhr響と実力派。日本ではまだこの名称はメジャーではないようですが、いわゆるフランクフルト放送響のことです。20世紀音楽の和声がしっかり表現されると、とても魅力的なんだということを教えてくれます。NHKのFMでも結構20世紀音楽はとり上げられていますが、意外とそれを評価する向きはクラシック・ファンには少ないように思えます。その点ではクラシック・ファンは左翼だとかいう向きが日本ではありますがむしろバリバリの保守であろうとしか私には言いようがありません。19世紀の国民国家を賛美する、むしろ国家主義につながるような作品のほうが好まれる傾向がある我が国のクラシック音楽シーンにおいて、特に極左が隆盛である点を見出すことは困難です。ヒンデミットの音楽がそれほど我が国で好まれていないという点ひとつを見ても、それは明らかだと思います。

こういう点にも、我が国のネトウヨあるいは極右がいかにいい加減なことを言っているか、ヒンデミットの音楽一つとっても明らかなわけなのです。むしろ我が国でヒンデミットがあまり聴かれていないことをいいことに、言いたい放題を言っている国賊だと言って差し支えないと思います。真に愛国心を持つひとは、ぜひともヒンデミットを聴いてほしいと思います。

 


聴いている音源
パウルヒンデミット作曲

ヴァイオリン協奏曲(1969)
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 作品32-2「外はとても良い天気だ」(1924)
ヴァイオリン・ソナタ変ホ長調作品11-1(1918)
ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ホ調(1935)
ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ハ調(1939)
フランク・ペーター・ツィンマーマン(ヴァイオリン)
エンリコ・パーチェ(ピアノ)
パーヴォ・ヤルヴィ指揮
hr交響楽団(ヴァイオリン協奏曲)

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