神奈川県立図書館所蔵CD補遺、3回シリーズの最後は、フランクの交響曲を収録したアルバムです。カップリングには交響的変奏曲という、ピアノを伴う作品も収録されています。
その意味では、フランクの管弦楽作品集と言ってもいいかもしれませんが、いずれにしても主役は交響曲となっています。ただ、カップリングの交響的変奏曲もその存在感がある作品です。
フランクが残した交響曲は一応この1曲だけとされています。その交響曲は古典的かもしれませんが、フランスらしい作品にもなっており、その分ドビュッシーも評価する作品になっていると言えるでしょう。なぜなら、フランクの交響曲は3楽章制だからです。それは前古典派~古典派において、フランス風の様式と言われています。ドビュッシーはフランス・バロックに範をとった人だったからこそ、弟子たちは攻撃したフランクに対し、比較的寛容な目を持っていたように思われます。
この「フランスバロックに範をとった」という点を、ドビュッシーの弟子たちはどこまで理解していたんだろうと思います。フランクは結構自由な様式の作品を残しており、その典型の一つは交響曲であり、一つは交響的変奏曲だと言えるでしょう。当時ドイツ風の4楽章形式がフランスの作曲家でも作られており、その代表がサン=サーンスです。しかしフランクはサン=サーンスとは異なり、「フランスらしさ」を交響曲でも追及したと言えるでしょう。だからこそ、ドビュッシーは評価をしたわけです。確かに調性音楽ですから、ドビュッシーの弟子たちからすれば敵視する点もあったとは思いますが、しかし師匠は決してけなしていなかったわけです。弟子たちと師匠は同人格ではありませんが、とはいえ師匠が目指したものとは異なり、様式原理主義に陥ってしまった点は否めないのではないかという気がします。その時弟子たちは師匠とは異なり、保守的な姿勢に逃げてしまったともいえるのだろうと思います。
カップリングの交響的変奏曲は幻想曲と言っていい様式をもっていますが、その中で変奏させてしまうという柔軟さを持つ作品です。幻想曲的な部分を持ちつつも、変奏曲という古典的な部分が混在し、そしてその融合が見事な幻想を持つ作品になっており、とても魅力的な作品です。
それにしても、この二つをカップリングさせるのは、編集者にやられたなと思います。演奏するのはリッカルド・シャイ―指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管弦楽団。交響的変奏曲ではピアノがホルヘ・ボレット。どちらかというと、ドイツ音楽を得意とするオケですが、シャイーというラテンが入ることでとても豊潤なサウンドがそこに存在します。それはオランダのオケという多少特異な立ち位置というものもあるのでしょうが、このまさにフランス風を追求した二つの作品の意義というものが自然と浮かび上がるのは本当に素晴らしい!こういう演奏はまさにプロらしさだと思います。
フランクというと我が国ではあまりプロオケでも演奏されない作曲家の一人ですが、こう欧州のプロオケの演奏で聴きますと、まさにプロオケだからこそ聴きたい作曲家の一人だと思います。勿論アマチュアオケのチャレンジも素晴らしいですしプロオケで演奏例がドイツものに比べれば少ない現状では素晴らしい演奏もたくさんありますが、やはりプロオケで聴きたい作曲家であり、アマオケだけで演奏されるのは誠に残念だと思います。東京とは異なる文化を持つ大阪のオケにそれを求めることは酷でしょうか?本来はそういう文化活動を支援するために、大阪府や大阪市は在阪オケに補助金を出し続けてきたのです。それが橋下氏がわからなかったのは、日本文化にとって最大のマイナスであると断言します。この録音は私たち日本人にその現実を突きつける刃だと思っています。
聴いている音源
ゼザール・フランク作曲
交響曲ニ短調
交響的変奏曲
ホルヘ・ボレット(ピアノ、交響的変奏曲)
リッカルド・シャイ―指揮
アムステルダム・コンセルトへボウ管弦楽団
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