神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はフランクのピアノと管弦楽のための作品集をとりあげます。
このブログでも何度か登場しているフランク。フランス後期ロマン派の作曲家ですが、その活動時期から、ドビュッシーとは音楽的に対立しています。
そんなフランクですが、ピアノと管弦楽のための作品をいくつか残しています。このアルバムではその中でも特に有名な3曲に絞って収録されています。
先ずは第1曲目「交響的変奏曲」。実は不思議なことに、「フランク ピアノ協奏曲」と検索すると交響的変奏曲がヒットします。むしろフランクが残した2つのピアノ協奏曲はどこ行った?という感じなのですが、ウィキではひとまとまりで解説されています。そのせいなのだろうと思います。
晩年の作品で、調性感はあるのですが、構成として、途中から始まっているのかな?と思うような開始なのです。この辺り、存分に同時代の新潮流である印象派や象徴主義と言ったものを意識しているようにも思います。
同様の作品が、交響詩ですがピアノ協奏曲的ないわゆる「幻想曲」としても色彩が強い作品の「魔人」。「鬼神」とも表記されるこの作品は交響的変奏曲の前年に書かれた作品で、むしろこの魔人のほうが一層調性感から外れる感覚を持ちます。
一方で、最後に収録されているピアノ協奏曲第2番は、作曲が1835年と、交響的変奏曲の1885年、魔人の1884年に比べれば50年も前の作品。後期というよりはむしろ前期ロマン派と言っていい時代の作品なのです。そのためか古典的な印象すら覚える作品ですが、堂々とした全体像がとても魅力的。一時期はコンクールでの定番曲だったそうな。
実は、フランクはピアノ協奏曲は2つ作曲したのですが、第1番は紛失し、残っているのは第2番だけとなっています。第2番の前年1884年に作曲されているので、おそらく同じように古典的雰囲気をもった作品だったのではないかと想像できますが、実際はどうだったのでしょう?興味は尽きません。
演奏は、ソリスト一人と指揮者はフランス、ソリストもう一人とオケがオランダという組み合わせ。指揮は天才ロベルト・ベンツィですが、私自身は初めてそのタクトから紡ぎだされる音楽を聴きました。デモーニッシュな部分もある作品をそのまま勢いで演奏させている中で、ソリストたちは細かく歌い続けるのが味わい深いというか、聴いているうちに静かに魂が震えてくる、という演奏なのです。
はじめは、特に1曲目と2曲目の構成に面喰ったのですが、聴いているうちに自然な感じになってきて、深いロマンティシズムの中に自分がいます。いやあ、さすが。フランクいいよね!と実はドビュッシー大好きな私も拍手してしまいます(もちろん、ドビュッシー存命だったら破門でしょうけどw)。
特にピアノ協奏曲は絶品!堂々たる所信表明のような感じから引き継がれるロマンティシズム。ドイツに比べて精神性が・・・・・とか言っている人は、とりあえずこのアルバムを聴いてみてはいかがでしょう。自分が正しいと思ってきたものがひっくり返るのに驚くはずですし、そのひっくり返されるのが爽快だと思うのではないでしょうか。
聴いている音源
セザール・フランク作曲
交響的変奏曲
交響詩「魔神」
ピアノ大協奏曲第2番ロ短調作品11
フランソワ=ジョエル・ティオリエ(ピアノ、「交響的変奏曲」「魔人」)
マルティン・ファン・デン・フック(ピアノ、協奏曲)
ロベルト・ベンツィ指揮
アルンヘム・フィルハーモニー管弦楽団
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