今月のお買いもの、今回もまたグラズノフを取り上げます。ピアノ協奏曲第1番と第2番、そして「ロシアの主題による変奏曲」です。ディスクユニオン新宿クラシック館での購入です。
最近、グラズノフづいています。図書館でも借りてきていますし、こうやってCDも購入しています。何しろ、グラズノフの音楽は、ほっとするのです。
このCDに収められている楽曲もそういった作品ばかりで、ある意味とてつもないドラマを期待するひとには物足りないのかもしれません。耽美派とも言うべきでしょうか。
そもそも、国民楽派というのは後期ロマン派の一派ですから、甘い旋律が支配していてもまったくおかしくはないわけで、グラズノフの音楽もあまり旋律がそこかしこ(いや、全部!)に存在すると言っていいでしょう。
まず、曲順から言えば、「ロシアの旋律による変奏曲」がくるのですが・・・・・この作品、ちょっと曲者なんです。
CDの日本語パッケージには「作品72」とあるのですが、ウィキを参照してみると、それはグラズノフのピアノ曲なんですね。
グラズノフの楽曲一覧
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%BA%E3%83%8E%E3%83%95%E3%81%AE%E6%A5%BD%E6%9B%B2%E4%B8%80%E8%A6%A7
で、英語解説をよく読んでみますと、この作品、幾人かの共作なんですね。勿論、それは日本語パッケージにもあるので、推測は出来るんですけれども、日本語パッケージだけをみると、まるでグラズノフがまとめ上げたかのように誤解するわけです。しかし、実際にはグラズノフよりも後の作曲家の音楽も入っています。
ナクソスの英語解説文を私の拙い英語力で読解してみると、ニコライ・ガルキンの指揮者生活10周年を記念して、1901年にアルツィブシェフ、ヴィートル、リャードフ、リムスキー=コルサコフ、ソコロフ、そしてグラズノフの6人によって共同して作られた作品です。
ネットで検索しますと、これにスクリャービンが入って弦楽四重奏曲で同名の作品も存在します。
http://tower.jp/item/tracks/2747259
所謂「ペリャーエフ・グループ」ですが、こういった人たちが集まって共同作業することがあったということを教えてくれる作品です。不思議なことに、この作品、思わずグラズノフの作品かと見まごうようなクオリティを持っているから不思議です。ただ、前半はちょっとだけやっぱり共作だよねえと思うような、やや連続性に欠ける部分がありますが、後半のリムスキー=コルサコフなどは全く違和感がなく、さすが子弟だなあと思います、
次に、二つのピアノ協奏曲ですが、まず第1番は、1910年から11年にかけて作曲されました。グラズノフ自身はピアニストではないんですが、この作品はピアニストのゴドフスキーに献呈されています。帯には「それだけ自信があった」と書かれていますが、まさしくそう言っても差し支えない、堂々たる音楽が存在します。
ピアノ協奏曲第1番 (グラズノフ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC1%E7%95%AA_(%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%BA%E3%83%8E%E3%83%95)
この第1番は構成に特徴があって、2楽章制であること、そしてその第2楽章が変奏曲となっていることです。ウィキの英語解説を読みますと、この作品はベートーヴェンの第九の影響を受けている作品とのことです。
そういわれてみれば、第九の第4楽章は変奏曲です。それをピアノ協奏曲でやってみたのがこの作品であるといわれれば、納得です。ベートーヴェンの第九はその精神性などから前期ロマン派ともカテゴライズされますが、実は音楽史の伝統である変奏曲を見事に交響曲に取りいれ、なおかつそこに合唱を取りいれた作品であるということは、以前述べたことがあったかと思います。グラズノフもそ伝統に基づき、彼はピアノ協奏曲でやってみたとなれば、この作品は意外と革新性があるとも言えるわけです。
交響曲第4番が3楽章制だったことを考えますと、グラズノフという作曲家は、後期ロマン派の最後の時期において、旋律線がはっきりした音楽でまだまだやれることがある、だからやってみるんだ、という意思を持っていたように思います。
第2番もそんな音楽です。一楽章制というアヴァンギャルドなことをやっていますが、音楽自体はロシア国民楽派の範疇から出ていません(主調が二つあるというけったいなことはやっていますが)。やるだけのことをやってみる・・・・・その結果、第1番にしても第2番にしても、ロマンティックでかつ美しい旋律が支配し、聴き手を耽美的な世界へと導きます。
オケもソリストも、ただ淡々と演奏をしているだけなのに、美しい世界へと私たちを導いていきます。いわば「グラズノフワールド」とも言うべき、耽美的でかつ理性的な世界へと、私達を誘います。
恐らくこのグラズノフの音楽を受けついだといえるのは、しいて言えばラフマニノフなのでしょう。教え子のショスタコーヴィチではないことは確かです。しかし、その教え子の音楽を理解はできなかったのですが、その将来を導いたグラズノフの、人柄が演奏から垣間見えるのは不思議だと思います。それだけの個性を持っていながら、あまりわが国では顧みられることがない一人だといえます。
今後も彼の音楽は追いかけていきたいと思っています。
聴いているCD
アレクサンドル・グラズノフ作曲
ロシアの旋律による変奏曲
ピアノ協奏曲第1番ヘ短調作品92
ピアノ協奏曲第2番ロ長調/ホ長調作品100
オクサナ・ヤブロンスカヤ(ピアノ)
ドミトリ・ヤブロンスキー指揮
モスクワ交響楽団
(Naxos 8.553928)
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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