かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:メンデルスゾーン 合唱曲集10

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、シリーズでメンデルスゾーンの合唱曲集を取り上げてきましたが、今回はその最後の第10集を取り上げます。

であってもですね、一つ付け加えておきたいのは、メンデルスゾーンの合唱曲は宗教合唱曲であっても、まだまだたくさんあるということなんです。ここまでずいぶんの曲を取り上げていますが、これでもまだ全部ではないんです。

それだけ、メンデルスゾーン交響曲など管弦楽よりもはるかに多くの合唱曲を作曲した人だったのだとといういことを、知っていただけるだけでもありがたいと思います。

さて、この第10集には、多分日本人が教会音楽とってなじみ深い旋律を持つ作品がずらりと並んでいます。つまりそれだけ、時代としては新しい音楽が並んでいることでもあります。

実は、賛美歌などは結構メンデルスゾーンなど、ビッグネームが作曲していること、多いのです。少なくとも、例えばクリスマスキャロルのような旋律が成立するためには、この第10集に収録されているような楽曲が存在しなければ成立しえなかったと言えるわけです。

「3つのモテット」とエリアの合唱部分は、どちらかと言えばプロテスタントの音楽ですが、続く「ベアータとベネディクタ」や「レスポンソリウムと讃歌 作品121」はむしろカトリックの音楽と言ってもいいでしょう。特に作品121はCDDBの結果は実は「ヴェスペルゲザング」となっており、つまりは「ヴェスペレ」であり、モーツァルトに有名な曲があるカトリックの曲そのものです。かといって、形式的には完全なヴェスペレではなく、崩れ気味です。

どちらかと言えば、この第10集に収録されている作品は、そういった宗派を超えたような普遍性を持っていて、「新しい時代」に即した音楽が並んでいます。教会音楽が教会の外へ出て、コンサートホールやあるいは教会であってももっと小さな、村々の教会で演奏されるようなものへと変化し、庶民になじみ深いものへと変化していく、その時代を映した作品ばかりです。アンサンブルを合わすことで比較的簡単に美しいハーモニーが実現できるような、そんな作品ばかりです。

だからこそなんでしょうが、メンデルスゾーンの合唱曲は批判にさらされて続けてきたといえるでしょう。特に、後期ロマン派の重厚な音楽が好まれる我が国では、それはまるで子供の音楽という視点が抜けません。

しかし考えてみれば、例えばブルックナーにしても、こういった合唱曲に触れて大きくなり、重厚な交響曲を書いたのです。未完成に終わった9番、そして番号が付されることなく終わった0番もふくめれば10曲もの交響曲は、メンデルスゾーンが作曲したこの様な合唱曲が存在していなければ、決して成立しえなかったのです。実際、ブルックナーは素晴らしいモテットを多数作曲していることは、以前このブログでもCDをご紹介してエントリで上げております。

マイ・コレクション:ブルックナーのモテット
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1048

ブルックナーカトリックですが、当然メンデルスゾーンが作曲した合唱曲の数々を知らなかったことはずはありません。あきらかに素晴らしいモテットの数々は、音楽史を踏まえたものとなっています。そのきっかけになったのがメンデルスゾーンのこれらの合唱曲だとすれば、その批判は全く的外れであるといえるでしょう。そしてその先に、10もの素晴らしい交響曲が生まれたのだとすれば、ますますです。

合唱曲は、一番簡単にアンサンブルを合わすことのできる芸術です。その簡単さから卑下されることが多いのですが、こういった簡単な芸術を無視して、至高の芸術を理解することはできるのでしょうか。私はその一里塚こそ、こういった合唱曲であると信じて疑いません。

そう、私の中の「信念」です。こう書きますと、「あれ、このコーナーは『想い』でしたでしょうか」と勘違いされるかもしれないので、あまり触れてきませんでしたが、合唱曲を例えばこの県立図書館のコーナーだったり、あるいは「今月のお買いもの」のコーナーだったりで取り上げる時は、まさしく自らの「合唱曲こそ芸術への一里塚である」という信念に基づいています。

この全集の演奏のほとんどを担当してきた、ヨーロッパ室内合唱団は、この第10集でも秀逸なアンサンブルを聴かせてくれます。特にこの第10集は一つをのぞいて、すべてがアカペラです。そこで抜けるような爽快さだったり、明るさだったり、陰陽であったりという表現力の高さは、目を見張るものがあります。淡々とした演奏の中に、きちんと表現力が見受けられるのは高評価です。強弱のつけ方、それを使ってどんな表現をしたいのかなどが明快で、ともすれば単なる説教で終わってしまいそうな曲であっても、ドラマティックですらあります。

それこそ実は、ロマン派が追い求めた表現ですが、そのきっかけはバロックにあった・・・・・それを掘り起こしたのがメンデルスゾーンであり、旋律をさらに洗練させていったのがそれに続く作曲家達であったといえましょう。この演奏ははっきりと、そんなことを思い起こさせてくれます。



聴いている音源
フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ作曲
3つのモテット 作品39
 来てください、主よ(3声の女声合唱とオルガンのための)
 賛美せよ、しもべたちよ(ソリストと3声の女声合唱およびオルガンのための)
 羊飼いはよみがえられた(4声のソリストと女声合唱、オルガンのための)
「エリア」第28曲三重奏(女声合唱版)(3声の女声合唱のための)
ベアータとベネディクタ(3声の女声合唱とオルガンのための)
レスポンソリウムと讃歌 作品121(ソリスト男声合唱、チェロとコントラバスのための)
2つの宗教合唱曲 作品115(4声のための)
葬送歌「彼が漂い沈みいくのを見たか」作品116(4声の混声合唱のための)
詩篇第100番「全地よ、主に向かって喜びの声をあげよ」(8声の混声合唱のための)
詩篇第91番「それ、主汝のためにみ使いたちに命じ」(8声の混声合唱のための)
祝福の夜"Herr, sei gnaedig"(4声の混声合唱のための)
ニコル・マット指揮
ヨーロッパ室内合唱団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。



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