かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:プロコフィエフ ピアノ・ソナタ全集2

東京の図書館から、3回シリーズで取り上げております、府中市立図書館のライブラリである、プロコフィエフのピアノ・ソナタ全集、今回はその第2回目です。第2集を取り上げます。

第2集には、第5番から第7番までが収録されています。この全集は番号順でということになります。

第5番は1923年に作曲された作品で、1952~53年にかけて改訂が行われました。改定前が作品38、改定後が作品135と、作品番号が異なるのが特徴です。

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この全集はニコライ・ペトロフのピアノで、ソ連時代の録音です。レーベルはメロディア。そのロケーション故なのか、実は改訂後の作品135が選択されています。初版の作品38が作曲されたのは1923年。すでにロシア革命後ですが、実は初版の初演は翌年にパリで行われています。1917年のロシア革命後の1918年に、プロコフィエフアメリカへ亡命し、1936年まで続きました。故に、1923年の時点の作品は基本的に避ける、と言ったことになっているのではないか?と思います。改訂時の1952~53年というタイミングは、ちょうどスターリン体制真っ只中です(なお、プロコフィエフスターリンの死の3時間前に死去)。1970年代と言えば、雪解け以降でスターリン体制を批判する時代ですが、大きなフレームワークで言えば、初版の時代はソビエト政権拒否の時代、改訂の時代はソビエト政権容認の時代ですので。メロディアという、ある意味ソビエト政権のプロパガンダを担ったレーベルのスタジオでの録音となれば、仕方のないことでもあるでしょう。その意味では、むしろこの演奏を聴いて初版の演奏が聴きたくなります。

第6番と第7番は、第8番とセットで「戦争ソナタ」と名付けられています。

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第6番は4楽章、第7番は3楽章形式をとっています。第6番には体制批判の部分もあると指摘されていますが、定かなことはわかっていません。その意味では、亡命から帰国を選んだプロコフィエフでしたが、しっくりこない部分もあったように思われます。また、第6番第4楽章にはモールス信号の「V」がモティーフとして使わており、勝利を意味しています。作曲された1939~40年というタイミングだと、むしろソ連軍は敗退を重ねていたため、勝利を願うと言う意味づけだと考えていいでしょう。

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一方の第7番は、作曲が1942年。状況としては、やや好転して来たという状況ですが、レニングラードでは絶望的な状況にあったことが、作品に反映されたのか、3楽章形式をとり、「自由」がキーワードになっているように私には見えます。つまり、レニングラードの解放を願う意味がある、と考えていいのではないでしょうか。

かつ、この3つの作品は、第1集に収録された第4番までとは異なり、より前衛的な和声が採用され、時代を背負っている印象も強いです。そう考えると、プロコフィエフのピアノ・ソナタもまた、時代とプロコフィエフの様式遍歴を表わしているように見えます。全集を手に入れて何が楽しいのだという人もいるのですが、私にとっては、むしろ全体を俯瞰することにより作曲者の魂に迫れるのが全集なのです。今回も、メロディアでの録音とは言っても、プロコフィエフの魂に迫るものになっている印象が強いです。

 


聴いている音源
セルゲイ・プロコフィエフ作曲
ピアノ・ソナタ第5番ハ長調作品135
ピアノ・ソナタ第6番イ長調作品82
ピアノ・ソナタ第7番変ロ長調作品83
ニコライ・ペトロフ(ピアノ)

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