かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:アラウが弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集10

東京の図書館から、府中市立図書館のライブラリをご紹介しています。11回シリーズで取り上げています、アラウが弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集、第10集を取り上げます。

ようやく第10集まで来ましたが、この第10集もここまで聴いてくればもう聴く前からワクワクすると言っていいでしょう。当然ですが、残りは第30番~第32番。その3曲が第10集に収録されています。特にジャズの先駆ともいわれる第32番第2楽章を、どのように演奏するのか。もうワクワクしかありません。

第30番の演奏が始まったとたん、そのロマンティシズムと古典的美との融合に酔いしれます。うわお!さすがアラウだ~

そして、第32番。第1楽章は短調ながらも長調への転調部分は本当に美しいのですが、そこを強調するかのような演奏。そして第2楽章では、思い切りジャズらしいリズムを刻みながらも、歌いまくるその演奏を聴きますとむしろやはりここはジャズではないと気付かせてもくれます。これぞプロ!

瀬川玄氏や、そのサロンに集うピアニストの方たちのおかげでピアノ曲の魅力に開眼した私ですが、ベートーヴェンのピアノ・ソナタの録音で、ようやく本当に美しく素晴らしい、喜びに満ちた演奏に出会えたような気がします。聴いていて、私自身に喜びが満ちてくるのがわかるんです。ベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴いていてうれしい私がいるんです。幸せに満ち、このままでいたいとすら思うような・・・・・

しかし、過度に酔わせないのも、アラウの魅力だと思っています。この演奏でもアコーギクを存分に使いながらも、古典的美とのバランスが絶妙なのがそれです。特に第30番と第31番ではそれが顕著で、ベートーヴェンの「いい枯れ具合」を絶妙に表現しているのが本当に素晴らしい!

私自身、年齢的にはベートーヴェンがこれらの作品を書いた年齢に差し掛かっています。そんな私自身の内面と、シンクロニシティするのかもしれませんし、あるいはフラッシュバックがあるのかもしれませんが、聴いていて共感で満たされているのに気付くんです。録音時代からして電気的な再生は否めませんが、そんなハンディを跳ね飛ばす、深いスコアリーディングによる、名演だと断言していいでしょう。

今年はベートーヴェン生誕250周年。ファジル・サイによるハイレゾ全集が結構安値で出ているのですが、果たして、アラウとどのように違い、どのように似ていて、どのように喜ばせてくれるのか、じつは悩み中です。予算的にそれほどかけられない状況で、さて、どのように優先順位付けをしていくか・・・・・このアラウの演奏を聴いてしまうと、マヂで悩んでいます。

 


聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
ピアノ・ソナタ第30番ホ長調作品109
ピアノ・ソナタ第31番変イ長調作品110
ピアノ・ソナタ第32番ハ短調作品111
クラウディオ・アラウ(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。