神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はヴィヴァルディのピッコロ協奏曲を収録したアルバムをご紹介します。
とはいえ、ヴィヴァルディのピッコロ協奏曲は以前も借りており、馴染み深いものなのですが、このアルバムは、オケではなく、室内楽による演奏だ、という点が特徴なのです。
今どき、録音であればマイクの位置でどうにでもなりますし、そもそも、ヴィヴァルディの時代、今の私たちが想像するオケの人数などいませんし、まだ出現していない楽器もあります。
ですので、オケと言っても室内楽程度だったはずなのですが、このアルバムではその歴史に基づき、モダンながらも室内楽程度の編成にとどめています。弦楽四重奏にコントラバスと通奏低音としてチェンバロが入っただけ、です。それにソリスト。
全員で7名しかいません。おそらくイ・ムジチより小さい編成なのではないでしょうか。そんな編成では貧弱だと思うでしょ?ところがどっこい、むしろクリアで生き生きとしていますし、サウンドもしっかりしています。
ヴィヴァルディは協奏曲を主にアマチュア向けに作曲したというエピソードも伝わっていますが、そのエピソードを裏付けるかのような、見事な演奏です。
録音は今から40年ほど前なのですが、まるでそこにいるかのよう。もちろん、つかっているスピーカーがソニーのSRS-HG10であるということもあるかとは思いますが、本当に臨場感あふれるサウンドが眼前に広がっているのです。
こういう演奏はいいですね~。そして現在の状況でもコンサートが開催可能であることを示しています。喜ばしいことに、5000人以下のホールなら、シャウトしなければコンサートは開催可能となり、基本クラシックのコンサートに入場制限はかからないことになりましたが、もしもの時、こういった室内楽程度の編成なら、十分開催可能であることを、演奏で示しているともいえます。
常々、私はこのブログで「21世紀は、バロックが再来したような時代になる。ソリストが集まり室内オケ程度の団体を作り、後期ロマン派の交響曲などはそういったいくつかの団体が共同して演奏するようになる」と述べてきましたが、その通りの演奏なのです。生命力あふれる演奏ですが、ソリストが集まってアンサンブルしており、しかも違和感なし。これなら、いざソーシャル・ディスタンスを取らねばならなくなっても、十分いいサウンドが実現できるでしょう。
もちろん、この演奏はセッションである、という部分もありますが、そうだとしても、人数が多くいなければ協奏曲は演奏できないということはないんだということを見事に証明して見せた演奏だと思います。こういう演奏に40年ほど前に取り組んでいた海外。翻って、日本はどうだったか・・・・・
いまやっと、少ない人数だと、バロック的にならざるを得ないことを、認識し始めているのではないでしょうか。オケが今後どのような姿になっていくのかは、こういった演奏がどれだけできるかにかかっているのではないかと思っています。
聴いている音源
アントニオ・ヴィヴァルディ作曲
ピッコロ協奏曲ハ長調RV433
ピッコロ協奏曲イ短調RV445
ピッコロ協奏曲ハ短調RV441(原曲:フルート協奏曲)
ピッコロ協奏曲ハ長調RV444
ハンス・ヴォルフガング・デュンシェーデ(ピッコロ)
ヴォルフガング・ギュッター(コントラバス)
元井美幸(ハープシコード)
フィルハーモニア・クァルテット・ベルリン
エドゥアルト・ジェンコフスキー(ヴァイオリン)
ワルター・ショーレフィールド(ヴァイオリン)
土屋邦雄(ヴィオラ)
ヤン・ディーセルホルスト(チェロ)
地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。