かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:モーツァルト ピアノ小品全集1

神奈川県立図書館所蔵CD、今回からはピアノ作品ですがソナタ以外を取り上げます。これも「モーツァルト全集」からのものです。

全集と言っても抜けているものもわずかではありますがあるのがこの全集なのですが、これはほとんど収録されているのではないでしょうか。

さて、ピアノソナタよりは圧倒的にそれ以外のジャンルをモーツァルトは作曲している、ことになっていますが・・・・・

まず、今回取り上げる作品たちは、基本的にクラヴィーアというよりは、まずチェンバロを念頭に置いている作品たちです。

それぞれの題名がながーいので、ケッヘル番号だけで失礼しますが、K.24、K.25、K.179(189a)、K.180(173c)、そしてK.264(315d)という、この4曲が今回の音源に収録された作品たちなのですが、1760年代後半から1770年代前半にかけて作曲されたもので、フォルテピアノよりはむしろ、チェンバロが時期的にはぴったりくるのです。

特に、K.180(173c)は、初版に「クラヴサンフォルテピアノのための」という言葉が見られますし、また、K.24は学者の見解では楽譜を見てもチェンバロ奏法を意識することを念頭に置くようにという意見も付されています。

モーツァルトがもともとチェンバロ奏者であったことはピアノ・ソナタの時に触れましたが、そもそもこれら4つの作品を作曲するころまでは、チェンバロはまだまだ普通に使われていた楽器でした。そもそも、ピアノはチェンバロをその祖として、弦をはじくのではなく叩くという、新しい発想によって生み出された楽器です。

ともに鍵盤楽器であるということから、どちらでも演奏できるようにと言う作品が出てきてもおかしくないわけで、これらの作品はそういう歴史的背景を持っていることだけは、知っておいて損はないでしょう。

モーツァルト自身、ピアノ協奏曲を作曲する際、チェンバロ協奏曲を研究しており、モーツァルトのピアノ作品では「叩く」音型が多いことも、チェンバロも想定して作曲している証左だと私は思っています。これがベートーヴェンになると、必ずしもそうではなくなってくるのは、基本的にチェンバロではなく、すでにフォルテピアノのみが前提になっている時代であることを意味するからです。

その上で、これら4つの作品は全て変奏曲です。モーツァルトは即興で演奏することが多かった作曲家ですが、即興で演奏する場合、一番自分の才能を示すことができたのが、変奏曲でした。それはバロック以来、演奏者の視点では変わることがありません。

ある主題が与えられて、それをどのように展開するか・・・・・・つまり、その場で如何に作曲するか、その手腕が問われたのが変奏曲であるといっても言い過ぎではないでしょう。旋律線がはっきりしているのに、どうなるかわからないスリリングさ。それが、変奏曲なのです。

むしろ、近代管弦楽は、変奏曲を一つの目標にして発展した、とも言えなくないでしょう。少なくとも、新垣さんのコメントを読む限り・・・・

こういったモーツァルトの変奏曲を聴くたびに、私はそれはそれで素晴らしい発展なのだけれど、「手あかがついた」作品たちがそんなにつまらないかなあ、と思うのです。作曲家として、様々な作品を知っているからのことなのか、それともこういった小品ではあるが、きらりとした名曲を忘れてしまっているだけなのか・・・・・

変奏曲だけを抜き出すというこの編集は素晴らしいと思います。今更ながら、モーツァルトという作曲家がいかに音楽史を踏まえた上で、自作をその中で発展につなげていったのかを、教えてもらるように思います。

演奏は、それを全く邪魔させません。端正で、かつ優美。できれば、最期をリットさせなくてもよかったかなあ、と思うんですが、近代美意識の下では、それは難しいのかもしれません。ただ、それでもこの演奏は、できれば4つの作品をチェンバロで弾いたらどうなるんだろうという、また一つのスリリングさを私に提供してくれるものでもあります。

ああ、また変態演奏好きの血が騒ぎます・・・・・




聴いている音源
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
グラーフのオランダ民謡による8つの変奏曲ト長調K.24
「ヴィレム・ファン・ナッサウ」による7つの変奏曲ニ長調K.25
フィッシャーのメヌエットによる12の変奏曲ハ長調K.179(189a)
サリエーリの「ヴェネツィア市」第2幕フィナーレの主題による6つの変奏曲ト長調K.180(173c)
ドゼードの「リゾンは森で眠ってた」の主題による9つの変奏曲ハ長調K.264(315d)
イングリット・ヘブラー(ピアノ)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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